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わがまま姫とそれが不愉快な仲間達【午後1時〜午後2時】

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 西宮の【固有ヒント】は答えが二種類しかない。すなわちブービートラップの【固有ヒント】が本物という答えと、ブービートラップの【固有ヒント】が偽物という答え。着地点がふたつしかないのだから、どちらかが必ず本物で、どちらかが必ず偽物になる。ゆえに、一方が本物であれば、もう一方は偽物であるという方程式が成り立つ。

 晴美の【固有ヒント】は答えが何種類も存在するのだ。彼女の【固有ヒント】は、本物だと考えると矛盾が生じてしまうため、必然的に偽物となる。そして、彼女の【固有ヒント】を偽物だと定義しても、それに矛盾しない着地点はいくらでもある。実際にどんな比率で本物と偽物の【固有ヒント】が与えられているのかは分からないが、その比率のパターンの数だけ答えがある。ゆえに、一方が本物であれば、もう一方は偽物であるという方程式が成り立たないのだ。

「まぁ、なんとなくだけど分かったような気はする。現状で分かってることは、嬢ちゃんの【固有ヒント】は偽物だってことと、プレイヤーに与えられた【固有ヒント】が全部本物ということもなければ、全部偽物ということもないということだけか。やっぱり、他のプレイヤーとやらと合流しねぇことには、話にならねぇってことだな」

 まだ講釈を垂れるつもりでいたであろう晴美を牽制の意味も込めて呟くと、西宮は改めて真っ暗な地下道を照らす。

「本当にその頭で理解できたのかしらね?」

 正直、完全には理解できておらず、晴美の言葉は図星だった。西宮は人を見下したような言葉に「あぁ、もう完全にな」と負け惜しみを言うことしかできなかった。親の顔を見てみたいものだ。

「それに、この地下道はどこまで続くの? 本当にこっちで合ってるんでしょうね?」

 負け惜しみでも言い返されたことが面白くなかったのか。八つ当たりをするかのごとく口調をキツくして問うてくる晴美。

「そいつは俺が聞きてぇよ――。あ、休みたければ休んでいいぞ。置いて行くから」

 西宮からすれば、ちょっとした仕返しのつもりだったのだが、それが晴美の神経を逆なでたらしい。ヒステリックに声を荒げる。

「はぁ? あんた、こんな可憐かれんな女子を、この暗闇の中に置き去りにするつもりなの?」

「本当に可憐なお嬢さんは、自分のことを可憐だなんて言わないし、いい歳して女子とも言わない。ほら、さっさと歩け。本当に置いて行くぞ」

 突然放り込まれた理不尽なゲームと、出口の見えない地下道。加えて高飛車で口の悪い、自称可憐なお嬢さん付きだ。再び歩き出した西宮が漏らした溜め息は、ただただ下水道の奥に吸い込まれて消えたのであった。
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