23 / 231
宮垣という名の街【開始〜午後1時】
19
しおりを挟む
「――【トラッペ君】は言わば罠の象徴。だから【トラッペ君】が設置されているのに罠が仕掛けられていないというのはおかしいし、逆に【トラッペ君】が設置されていないのに、罠が仕掛けられているというのもおかしいということか」
春日の言葉に、へたり込んだまま「あぁ、そんなところだ」と返してくる水落。学生という部類において、そこまで優秀そうには見えないが、しかしそれなりに頭は回るらしい。金髪はどうしても馬鹿っぽく見えるから、やめたほうがいいと忠告してやりたい。
「実は俺、もう他の罠にも引っかかっててさ――。まぁ、完全に不可抗力なんだけど、スタートした地点に罠が仕掛けられてて、壁と壁に挟まれそうになったんだよ。結果、俺はギリギリで脱出したんだけど、スタート地点となった部屋に置いてあった【トラッペ君】は壁に挟まれて部屋に飲み込まれてしまった。そして、一度作動してしまった壁が元に戻ることもなかったんだ。だから、思ったんだよ。罠と【トラッペン君】はセットでなければ矛盾が生じる――ってね。むしろ、一度しか作動しない罠に関しては、作動した罠が【トラッペ君】を巻き込んで、その存在をなかったことにする仕様になっている可能性が高いかもね」
春日は水落のことを少し見くびっていたが、それは間違いだった。つまり水落は【トラッペ君】と罠は必ずイコールでなければならないと考えた。そして、春日の目の前で作動した罠は、作動と同時に【トラッペ君】まで一緒に燃やしてしまった。これにより【トラッペ君】と罠がセットではなくなった。罠が仕掛けられているのに【トラッペ君】が設置されていないということは、事情を把握している春日達だからこそ知っていることであり、他の参加者からすれば話が違う――ルールと違うということになってしまうだろう。
単純に【トラッペ君】があるところには罠が仕掛けられていなければならないし、逆に【トラッペ君】がないところに罠が仕掛けられていることがあってはならない。そう考えると、公民館の罠がもう一度作動していいわけがない。象徴である【トラッペ君】が設置されていないのに、罠だけ作動するのはルール違反だからだ。
このゲームを仕掛けたのが何者なのかは分からない。けれども、ゲームである以上、ルールに反するものは排除されて然るべき。ゲームはルールの上に成り立つものなのだから当然だ。そして、そのルール通りにゲームが進行されるのであれば、すでに【トラッペ君】が燃えてしまった公民館前の罠は、もう一度作動するべきではない。作動してはならない。水落はそう考えたのであろう。
春日の言葉に、へたり込んだまま「あぁ、そんなところだ」と返してくる水落。学生という部類において、そこまで優秀そうには見えないが、しかしそれなりに頭は回るらしい。金髪はどうしても馬鹿っぽく見えるから、やめたほうがいいと忠告してやりたい。
「実は俺、もう他の罠にも引っかかっててさ――。まぁ、完全に不可抗力なんだけど、スタートした地点に罠が仕掛けられてて、壁と壁に挟まれそうになったんだよ。結果、俺はギリギリで脱出したんだけど、スタート地点となった部屋に置いてあった【トラッペ君】は壁に挟まれて部屋に飲み込まれてしまった。そして、一度作動してしまった壁が元に戻ることもなかったんだ。だから、思ったんだよ。罠と【トラッペン君】はセットでなければ矛盾が生じる――ってね。むしろ、一度しか作動しない罠に関しては、作動した罠が【トラッペ君】を巻き込んで、その存在をなかったことにする仕様になっている可能性が高いかもね」
春日は水落のことを少し見くびっていたが、それは間違いだった。つまり水落は【トラッペ君】と罠は必ずイコールでなければならないと考えた。そして、春日の目の前で作動した罠は、作動と同時に【トラッペ君】まで一緒に燃やしてしまった。これにより【トラッペ君】と罠がセットではなくなった。罠が仕掛けられているのに【トラッペ君】が設置されていないということは、事情を把握している春日達だからこそ知っていることであり、他の参加者からすれば話が違う――ルールと違うということになってしまうだろう。
単純に【トラッペ君】があるところには罠が仕掛けられていなければならないし、逆に【トラッペ君】がないところに罠が仕掛けられていることがあってはならない。そう考えると、公民館の罠がもう一度作動していいわけがない。象徴である【トラッペ君】が設置されていないのに、罠だけ作動するのはルール違反だからだ。
このゲームを仕掛けたのが何者なのかは分からない。けれども、ゲームである以上、ルールに反するものは排除されて然るべき。ゲームはルールの上に成り立つものなのだから当然だ。そして、そのルール通りにゲームが進行されるのであれば、すでに【トラッペ君】が燃えてしまった公民館前の罠は、もう一度作動するべきではない。作動してはならない。水落はそう考えたのであろう。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
クイズ 誰がやったのでSHOW
鬼霧宗作
ミステリー
IT企業の経営者である司馬龍平は、見知らぬ部屋で目を覚ました。メイクをするための大きな鏡。ガラステーブルの上に置かれた差し入れらしきおにぎり。そして、番組名らしきものが書かれた台本。そこは楽屋のようだった。
司馬と同じように、それぞれの楽屋で目を覚ました8人の男女。廊下の先に見える【スタジオ】との不気味な文字列に、やはり台本のタイトルが頭をよぎる。
――クイズ 誰がやったのでSHOW。
出題される問題は、全て現実に起こった事件で、しかもその犯人は……集められた8人の中にいる。
ぶっ飛んだテンションで司会進行をする司会者と、現実離れしたルールで進行されるクイズ番組。
果たして降板と卒業の違いとは。誰が何のためにこんなことを企てたのか。そして、8人の中に人殺しがどれだけ紛れ込んでいるのか。徐々に疑心暗鬼に陥っていく出演者達。
一方、同じように部屋に監禁された刑事コンビ2人は、わけも分からないままにクイズ番組【誰がやったのでSHOW】を視聴させれることになるのだが――。
様々な思惑が飛び交うクローズドサークル&ゼロサムゲーム。
次第に明らかになっていく謎と、見えてくるミッシングリンク。
さぁ、張り切って参りましょう。第1問!
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる