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第六章 アリアドネの嘘【現在 七色七奈】
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そんな、どこか冷めた性格がゆえに、もしかすると敵を作ってしまっていたのかもしれない。今になって、ふとそんなことを考えてしまう。
「残念ながら、私は昔から可愛くない性格だったんですよ。記念写真とか、そういうのも、あまり得意ではありませんでした」
私がそう答えると、大和田はやや苦笑いのようなものを浮かべて「そうか――」とだけ呟いた。
「あ、これは丸山夏帆ですね」
写真の中の登場人物探しは続いた。湯川智昭に続いて丸山夏帆も発見する。今度は大和田が写真に指をさした。
「これは――谷惇と宝田羽衣か」
ビデオテープの最初のほうに登場したものの、いまだに安否が不明な両名は、ちょうど男女の境目となる列で隣り合って写っていた。
これで登場人物は大体半分くらい。しかしながら、大和田と一緒にどれだけ探しても、それ以外の面子を見つけることはできなかった。
「おかしいな。全員が同じ写真に写ってるわけじゃないのか。そもそもクラスが違う――とか?」
大和田の言葉に、私は首を大きく傾げた。確かに、この写真には全員が写っているわけではなさそうだ。それこそ、高田富臣、依田由美香、鏑木孝之、細川茜の4人が写っていない。
「クラスが違うというか――もしかすると」
その写真を見つめているうちに、私の中ではある可能性が浮かび上がっていた。もしかすると、私は――いいや、私達はとんでもない勘違いをしていたのかもしれない。もし、私の推測が正しいのであれば、ある意味でそれは不意打ちのようなもので、実に気味の悪いものではあるが。
けれども、もしそうであれば――ミノタウロスはあの人物ということになるのではないだろうか。いいや、どう考えても間違いない。あの人物こそがミノタウロスだったのだ。
「大和田さん、支度ができたらミノタウロスの森に向かいましょう」
急に立ち上がった私に気圧されるかのごとく、何度か小さく頷いた大和田。
「どうしたんだ? 急に――」
確かに、大和田からすれば、私が急に動き出そうとしているように見えるだろう。しかしながら、実のところ私の脳みそはすでに物凄いスピードで回転を始めていた。
これまで見てきた場面が蘇る。ミノタウロスの森でミノタウロスに遭遇してしまった登場人物達。なんとかしてミノタウロスから逃れようとするが、しかしその毒牙にかけられて命を落としてしまう。そのミノタウロスは――多分あいつだ。
「分かったんです。ミノタウロスの正体が。今から決着をつけに行きましょう」
「残念ながら、私は昔から可愛くない性格だったんですよ。記念写真とか、そういうのも、あまり得意ではありませんでした」
私がそう答えると、大和田はやや苦笑いのようなものを浮かべて「そうか――」とだけ呟いた。
「あ、これは丸山夏帆ですね」
写真の中の登場人物探しは続いた。湯川智昭に続いて丸山夏帆も発見する。今度は大和田が写真に指をさした。
「これは――谷惇と宝田羽衣か」
ビデオテープの最初のほうに登場したものの、いまだに安否が不明な両名は、ちょうど男女の境目となる列で隣り合って写っていた。
これで登場人物は大体半分くらい。しかしながら、大和田と一緒にどれだけ探しても、それ以外の面子を見つけることはできなかった。
「おかしいな。全員が同じ写真に写ってるわけじゃないのか。そもそもクラスが違う――とか?」
大和田の言葉に、私は首を大きく傾げた。確かに、この写真には全員が写っているわけではなさそうだ。それこそ、高田富臣、依田由美香、鏑木孝之、細川茜の4人が写っていない。
「クラスが違うというか――もしかすると」
その写真を見つめているうちに、私の中ではある可能性が浮かび上がっていた。もしかすると、私は――いいや、私達はとんでもない勘違いをしていたのかもしれない。もし、私の推測が正しいのであれば、ある意味でそれは不意打ちのようなもので、実に気味の悪いものではあるが。
けれども、もしそうであれば――ミノタウロスはあの人物ということになるのではないだろうか。いいや、どう考えても間違いない。あの人物こそがミノタウロスだったのだ。
「大和田さん、支度ができたらミノタウロスの森に向かいましょう」
急に立ち上がった私に気圧されるかのごとく、何度か小さく頷いた大和田。
「どうしたんだ? 急に――」
確かに、大和田からすれば、私が急に動き出そうとしているように見えるだろう。しかしながら、実のところ私の脳みそはすでに物凄いスピードで回転を始めていた。
これまで見てきた場面が蘇る。ミノタウロスの森でミノタウロスに遭遇してしまった登場人物達。なんとかしてミノタウロスから逃れようとするが、しかしその毒牙にかけられて命を落としてしまう。そのミノタウロスは――多分あいつだ。
「分かったんです。ミノタウロスの正体が。今から決着をつけに行きましょう」
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