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第六章 アリアドネの嘘【現在 七色七奈】

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「となると、これも作られた写真ってことになりますね」

 映像の一部は、当時のことを再現するかのごとく手法で撮影されたものである。そうでなければ、赤松朱里を除く全員の場面が、俯瞰視点にはならないだろう。

 その場で映像を撮影しているように見えるのは赤松朱里の視点のみ。それ以外の場面においては、カメラマンという存在があり、おそらく役者が演じているのだと思われる。そして、写真もまた、あえて作られたものだとすれば――。

「あ、これ――湯川智昭ですね」

 私は集合写真の中から見慣れた顔を見つけた。もちろん、ラーメンを私達のところへ配達してくれ、そしてミノタウロスの森の鳥居で首を吊ったであろう湯川智昭とは別人。あくまでも、ビデオテープの中の演者――という意味での湯川智昭だ。

「この子は赤松朱里だな。彼女にいたっては――本人のような気がしないでもない。まぁ、俯瞰的なシーンで写っている彼女が、本人だとは限らないけどね」

 今度は大和田が赤松朱里を発見。実に彼女を簡単に見つけられたのには理由がある。なぜなら、彼女に限っては、集合写真の中ではなく、枠外に存在したからだ。

「写真撮影の日に休んでしまったのでしょうね。私、こんなことをするなら、いっそのこと別の写真なんて貼らなきゃいいと思います。みんなと一緒に写っていないから――みたいな理由でやっているのかもしれませんけど、事実、みんなとは一緒に撮影していないわけで。いっそ、潔く欠席ということにしておいたほうが親切だと思います。そこまで記念に残るというものではないし」

 何かおかしなことを言っただろうか。大和田は感心するかのように何度か頷く。

「へぇ、特に女子なんて、意味もないのにプリクラだとか、写メだとか撮るものだと思っていたよ。それこそ、毎日飽きもせず、同じ友人とばかり」

 実にくだらないことだ。そう返してやろうと思った頃になって「いや、君もてっきり、そういうタイプだと思っていたから意外でさ」と大和田。

 大和田ほど、それらに対しての悪意はなかったものの、あまり良いものだと思ったことはなかった。私はそれくらい冷めた学生だったのかもしれない。

 高校の時に交際した男が、結婚なんてことを口にした時は吹き出しそうになった。友達同士で、ずっと友達だ――なんて、嘘でも言いたくなかった。

 大和田の言うタイプ――というのは、きっと世の中も知らず、学生という立場を謳歌していた人種のことを指すのであろう。

 ――私は違う。その頃から、しっかりと将来を見据えていた。友達だって、選んでいたはずだ。いいや、そのような思考はきっと小学生の頃から持っていたような気がする。親が離婚なんてしたもんだから、変に小さい頃から現実主義だったのだ。
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