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第二章 動き出す狂気【現在 七色七奈】

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 それにしても、乗り気になっているのは大和田である。何事も起きないような田舎の駐在さん。もしかすると、刺激というものに飢えているのかもしれない。もちろん、目指すべき世界は、刺激のない、退屈だけど平和な世界なのかもしれないが、人というものは結構自分勝手だったりする。

「悪いけど、ここにはパトカーってもんがないから――車出してもらえると助かるな。俺のは、いつぶっ壊れるか分からないポンコツの軽自動車だし、お客さんを乗せて走れるような状態じゃねぇんだ」

 この辺りに住むには、車というものが必要不可欠になるだろう。一応、バスは走っているものの、中心街に向かうバスが一時間に一本あったらラッキーだったような気がする。下手すると二時間に一本という時間帯もあった記憶が残っている。そのような環境でありながら、大和田はろくに走らない軽自動車に乗っているらしい。こちらの生活にまだ慣れていないのか、それとも車がなくて痛い目に遭ったことがないのかのいずれかである。まぁ、家と職場は同じようなものだし、そこまで困らないのかもしれない。

「別に構いませんけど、道案内はお願いしますね」

 先に駐在所を出た大和田の後を追って外に出る。時刻としては、ようやく朝の慌ただしい時間帯が終わるかどうかの時間。今から赤松朱里の実家に行っても、迷惑な時間にはならないだろう。

 愛車――と言っても、そこまで乗り慣れていない車に乗り込むと、大和田が助手席へと乗り込んでくる。格好はもちろん、警察官の格好のままだ。こんな場面を目撃されては、またすぐに田舎の噂になるのではないだろうか。ずっとここにいるわけではない私は別に構わないが、大和田は困るのでは――そんなことを考えつつも車を発車させた。

 大和田に道案内をされて車を走らせる。言われるまでは、そこまで頭の中には残っていなかったものが、その場所、その場所を訪れる度に蘇る。あぁ、確かここはこんな光景だった。そして、この先に向かうと――という具合に、私の中で連想ゲームが始まり、後半はほとんど大和田の道案内なしで、杉谷地区まで到着することができた。

「私の記憶が正しければ、この先にお地蔵さんがあって、そこから山の方に向かうと神社があったはずです」

 集落といっても、民家の数は多くない。ぽつり、ぽつりとある程度であり、そのほとんどは自然に包まれている。私の記憶が間違いでなければ、目印となるお地蔵さんが、民家の切れ間にぽつんと出てくるはず。
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