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第二章 動き出す狂気【現在 七色七奈】
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切り替わった画面には、古びた神社のようなものが映っていた。いいや、賽銭箱らしきものがあるし、その奥にある建物から察するに、まず間違いなく神社であろう。そう、小さい小さい神社だ。
私は過去の記憶を掘り起こす。こんな場所、この辺りにあっただろうか――。随分と昔のことではあるが、しかし意外と子供時代のことは覚えていたりするものだ。この神社もまた、どこか見覚えがあった。
画面が賽銭箱に寄り、その中を映す。どうやら、次のビデオテープは賽銭箱の中らしい。取り出すことは出来るだろうが、なんとも罰当たりな場所にビデオテープを放り込んでくれたものだ。
「こりゃ、杉谷の古神社だ。老朽化が進んで、新しい神社を別の場所に建てて移転したはず。まだ取り壊されていなかったのか」
杉谷の神社。あぁ、思い出した。それこそ、赤松朱里の家の近くにあった神社ではないか。ただ、場所が薄暗い森の中にあり、なんとなく不気味だった記憶がある。別に大人達に禁止はされていなかったが、自然と近寄らなかった場所だ。もっとも、赤松朱里は自分の庭のように出入りしていた記憶があるのだが。
――次のテープはここだよ。
一度は見たことのあるテロップが表示され、画面は再び砂嵐に戻った。しばらくするとテープが終わったのか、真っ青な画面が映る。右上のほうに【ビデオ】と書いてあるのが、なんだか時代を感じさせた。
「ビデオテープの意図はまだ分からない。でも、次のテープの場所は提示された。こりゃ、行ってみるしかねぇな」
お茶を一気に飲み干した大和田は、奥のほうへと向かう。
「あんた、朝飯はどうした?」
時刻としては、まだ一日が始まって間もない。大和田も通報で慌てて駆けつけただろうから、朝食をとっていないのだろう。
「あ、車の中で簡単に済ませたから――」
「そうか。それじゃ、ちょっと飯をかきこんでくるから、ここで待っててくれ。飯が終わったら、杉谷の古神社まで案内する」
私は簡単にではあるが朝食を済ませてあった。仮に、食べていなかったとしても、大和田のお誘いは断っていたに違いない。善意で言ってくれるのはありがたいのだが、今日会ったばかりの人のプライベートスペースに上がり込んで、しかも食事までご馳走になるというのは、あまり気が進まなかった。田舎では当たり前のことだが、それだけ私も都会に染まってしまったということなのだろう。
私は過去の記憶を掘り起こす。こんな場所、この辺りにあっただろうか――。随分と昔のことではあるが、しかし意外と子供時代のことは覚えていたりするものだ。この神社もまた、どこか見覚えがあった。
画面が賽銭箱に寄り、その中を映す。どうやら、次のビデオテープは賽銭箱の中らしい。取り出すことは出来るだろうが、なんとも罰当たりな場所にビデオテープを放り込んでくれたものだ。
「こりゃ、杉谷の古神社だ。老朽化が進んで、新しい神社を別の場所に建てて移転したはず。まだ取り壊されていなかったのか」
杉谷の神社。あぁ、思い出した。それこそ、赤松朱里の家の近くにあった神社ではないか。ただ、場所が薄暗い森の中にあり、なんとなく不気味だった記憶がある。別に大人達に禁止はされていなかったが、自然と近寄らなかった場所だ。もっとも、赤松朱里は自分の庭のように出入りしていた記憶があるのだが。
――次のテープはここだよ。
一度は見たことのあるテロップが表示され、画面は再び砂嵐に戻った。しばらくするとテープが終わったのか、真っ青な画面が映る。右上のほうに【ビデオ】と書いてあるのが、なんだか時代を感じさせた。
「ビデオテープの意図はまだ分からない。でも、次のテープの場所は提示された。こりゃ、行ってみるしかねぇな」
お茶を一気に飲み干した大和田は、奥のほうへと向かう。
「あんた、朝飯はどうした?」
時刻としては、まだ一日が始まって間もない。大和田も通報で慌てて駆けつけただろうから、朝食をとっていないのだろう。
「あ、車の中で簡単に済ませたから――」
「そうか。それじゃ、ちょっと飯をかきこんでくるから、ここで待っててくれ。飯が終わったら、杉谷の古神社まで案内する」
私は簡単にではあるが朝食を済ませてあった。仮に、食べていなかったとしても、大和田のお誘いは断っていたに違いない。善意で言ってくれるのはありがたいのだが、今日会ったばかりの人のプライベートスペースに上がり込んで、しかも食事までご馳走になるというのは、あまり気が進まなかった。田舎では当たり前のことだが、それだけ私も都会に染まってしまったということなのだろう。
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