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第二章 動き出す狂気【過去 赤松朱里】
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無人の自転車は全部で4台あった。ミノタウロスの森の入り口――目印の鳥居の前に停めてしまうと、あからさまにそこに用事があるように見られてしまうから、あえて手前の、しかも目立たない場所に停めたのであろう。
感覚としては、ミノタウロスの森はすぐそこなのであるが、しかし実際に歩くとなると、まだ多少の距離がある。自分の自転車1台くらい、ミノタウロスの森の前に停まっていても、なんとも思われるまい。そもそも、時間が時間であるため、ミノタウロスの森の前を誰かが通るということはない。この先に広がっているのは田畑だけであり、民家はなかったはず。ゆえに、もう少し近づいてから自転車を停めよう。そう考えた。
停止するために一度は地面についた足を蹴り出し、改めて自転車を走らせる。しかし、次の瞬間のことだった。何かを前輪が踏んづけたと思ったら、後輪が宙に向かって跳ね上がった。朱里は前のめりになる形で自転車から放り出され、まるでホームベースに滑り込む野球選手かのごとく、両手から地面へと滑り込んだ。地面は砂利が敷き詰められており、痛くないわけがない。うつ伏せになったまま、しばらく起き上がれないでいると、ジンジンと両腕が痛み始めた。暗くて確認できないが、両腕を擦りむいてしまったらしい。
ようやく起き上がると、服についた土埃を払う。自分の少し後ろには無惨に転がった自転車。何よりも驚いたのは、カゴの中に入れておいたビデオカメラが地面に放り出されていたことだ。
壊れてしまったらどうしよう。朱里は腕が痛むことも忘れてビデオカメラに駆け寄った。慌てて拾い上げると、モニターを出してカメラの具合を確認する。画面が真っ暗だから、もしかして壊れてしまったのではないかと思ったが、しかし遥か遠くに見える街灯のほうへとカメラを向けると、モニターにもその明かりが反映された。どうやら、壊れてはいないようだ。
「よかったぁ――」
胸を撫で下ろすと同時に、両腕が痛み始めた。こんなことになるなんて思ってもいなかったが、しかし準備を万端にして出てきただけのことはある。確か、消毒液と包帯をリュックの中に詰めてきたはずだ。
朱里はリュックサックを下ろすと、なかば手探りで包帯と消毒液を取り出す。おもむろに消毒液を痛むところにかけて、大声を上げそうになってしまった。思ったよりもしみる。大怪我ということはないだろうが、備えあれば憂いなしだ。しっかり準備していた自分を褒めてあげたい。
感覚としては、ミノタウロスの森はすぐそこなのであるが、しかし実際に歩くとなると、まだ多少の距離がある。自分の自転車1台くらい、ミノタウロスの森の前に停まっていても、なんとも思われるまい。そもそも、時間が時間であるため、ミノタウロスの森の前を誰かが通るということはない。この先に広がっているのは田畑だけであり、民家はなかったはず。ゆえに、もう少し近づいてから自転車を停めよう。そう考えた。
停止するために一度は地面についた足を蹴り出し、改めて自転車を走らせる。しかし、次の瞬間のことだった。何かを前輪が踏んづけたと思ったら、後輪が宙に向かって跳ね上がった。朱里は前のめりになる形で自転車から放り出され、まるでホームベースに滑り込む野球選手かのごとく、両手から地面へと滑り込んだ。地面は砂利が敷き詰められており、痛くないわけがない。うつ伏せになったまま、しばらく起き上がれないでいると、ジンジンと両腕が痛み始めた。暗くて確認できないが、両腕を擦りむいてしまったらしい。
ようやく起き上がると、服についた土埃を払う。自分の少し後ろには無惨に転がった自転車。何よりも驚いたのは、カゴの中に入れておいたビデオカメラが地面に放り出されていたことだ。
壊れてしまったらどうしよう。朱里は腕が痛むことも忘れてビデオカメラに駆け寄った。慌てて拾い上げると、モニターを出してカメラの具合を確認する。画面が真っ暗だから、もしかして壊れてしまったのではないかと思ったが、しかし遥か遠くに見える街灯のほうへとカメラを向けると、モニターにもその明かりが反映された。どうやら、壊れてはいないようだ。
「よかったぁ――」
胸を撫で下ろすと同時に、両腕が痛み始めた。こんなことになるなんて思ってもいなかったが、しかし準備を万端にして出てきただけのことはある。確か、消毒液と包帯をリュックの中に詰めてきたはずだ。
朱里はリュックサックを下ろすと、なかば手探りで包帯と消毒液を取り出す。おもむろに消毒液を痛むところにかけて、大声を上げそうになってしまった。思ったよりもしみる。大怪我ということはないだろうが、備えあれば憂いなしだ。しっかり準備していた自分を褒めてあげたい。
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