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査定4 なぜウグイスは鳴かなかったのか【問題編】
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千早の住んでいる妻有郷は、山々に囲まれた土地であるが、しかし車で30分も走れば日本海に出るという立地になっている。暇を持て余し、またバイクという足がある高校生にとって、夏の海ほど好都合なものはなかった。
「わざわざ誘っていただいて申しわけないのですが、ちょっと仕事が立て込んでまして――」
誘ってもらえるのは嬉しいのであるが、そのシチュエーションがよろしくない。浜辺で遊ぶ分には問題ないのであるが、いざ泳ぐとなったら問題だ。なぜなら、千早は少しだけ――ほんの少しだけ泳ぐということが苦手だからだ。決してカナヅチではない。蹴伸びとだるま浮きならできる。
「仕事か……。仕事なら仕方ねぇか。な、相模。猫屋敷は仕事で忙しいらしい。今日のところは諦めよう」
そう言って相模の肩を叩く一里之。相模本人はやや遠い目をしながら呆然とした様子で口を開く。
「いや、今日はこれでもう腹一杯だぁ。むしろ、海に行くのはまた今度にしようぜぇ」
宙を泳いでいる相模の視線が不気味であるが、どうやらあっさりと引き下がってくれたらしい。行き先が海でなければ、気分転換の意味合いも込めて考えたのであろうが、海は駄目である。あの大海原に対して、蹴伸びとだるま浮きは無力に等しい。
「いや、海に行こうって言い出したのはお前だろ? だから俺と愛も海に行く準備してきたってのによ」
海に行こうと言い出したのは相模。それに誘われたのが一里之と愛といった感じか。本来ならば千早も一緒に海へ――という流れだったのであろうが、言い出しっぺが海に行くのをやめると言い出した。そうなると、さすがに少し責任を感じ、自然と謝ってしまう千早。
「あ、あの。なんだかすいません……」
「いや、いきなりだったし気にしなくてもいいって! それに、こいつらがわがままを言ったわけだし」
すかさず愛がフォローに入ってくれるが、しかし一里之は「あ? 大地のわがままだし」と反論。言い争いに発展する直前に「喧嘩はいかんよ。喧嘩はぁ」と相模が割って入る。
「元はと言えばお前が海行きてぇって言い出したんじゃねぇか」
一里之と愛の言葉がシンクロする。さてさて、どう収拾をつけたら良いものなのか。きっと困ったような表情が出てしまっていたのだろう。気を遣ってくれたのか愛が話を一方的にまとめはじめる。
「はい、じゃあ今日は千早ちゃん抜きで海に行くということで。大地君、君が言い出したんだから、ちゃんと私達に付き合いなさい。いいね?」
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そう言って相模の肩を叩く一里之。相模本人はやや遠い目をしながら呆然とした様子で口を開く。
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「元はと言えばお前が海行きてぇって言い出したんじゃねぇか」
一里之と愛の言葉がシンクロする。さてさて、どう収拾をつけたら良いものなのか。きっと困ったような表情が出てしまっていたのだろう。気を遣ってくれたのか愛が話を一方的にまとめはじめる。
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