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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【エピローグ】

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「なんだこれ? メール? なんかのアドレスが貼り付けてあるみたいだけどよ」

 一里之が堂々と覗き込んだものの、さすがに一緒になって大々的に覗き込むわけにはいかない班目。少しばかり距離を置いて遠目にスマートフォンの画面を眺める。

「うん。メールで送ってもらったホームページのアドレス。ほら、前の事件で意気投合した図書委員会の相崎さんっていたでしょ? 彼女に、事件を解決したのは千早ちゃんで、古物商をやってるって話しをしたら、どうしてネットに情報がないのか――って話になって」

 猫屋敷古物商店は、ネットでの情報はおろか固定の電話すら引いていない。地方紙に広告を出しているわけでもなければ、いわゆる営業活動というものもしていない。最近はタイミング良く店が開いていることが多いが、相変わらず班目は千早の連絡先を知らなかった。軟派な大海が連絡先を交換していたというのに、班目はいまだに連絡先の交換ができていないのだ。一応、こちらの連絡先は教えてあるが、用がある時も絶滅危惧種となった公衆電話からかけてくるという徹底ぶり。きっと、店と客という線引きをしっかりしているのであろう。だから、一里之達に声をかけてもらうだけでも、班目はいちいち店を訪れ、約束を取り付けてから日を改めて店に訪れるという面倒な手順を踏んでいた。いっそのこと、一里之辺りと連絡を取れるようにしておけば、わざわざ店を訪れなくとも千早と連絡が取り合えるようになるかもしれない。つまり、それほどまでに猫屋敷古物商店というのは認知されにくい存在なのである。

「で、相崎さんがホームページとか作れるって話になったの。そうすれば今よりもお客さんが来るようになるだろうし――ってことで、千早ちゃんにも協力してもらってホームページを立ち上げましたぁ! 連絡先とかは書いてないけど、メールフォームとかいうやつも実装してあるらしくて、メールだけでもお客さんとのやり取りができるらしいよ」

 なるほど、それは実にありがたい。これで千早の連絡先を知らずとも連絡が取り合えるではないか。もっとも、いわゆる常連である班目にもかたくなに連絡先を教えなかったというのに、ホームページの立ち上げに加えてメールフォームを新設したというのは――どういう心情の変化だろうか。班目の心を読んだかのごとく、千早が「時代というものが時代ですし、ある程度の利益を出さなければならない――という現実的な問題もありますから」と呟く。しかしながら、どういうわけだか下を向き、なるべくこちらのほうを見ないようにしている。
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