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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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 有名動画配信グループとはいえ、ラクレスは素人の集団である。プロのような見せ方を求めるつもりはないが、千早から見ても動画の観点がずれているのだ。今回の企画は人喰いエレベーターがメインに据えられている。ならば、1階で待つ博士がカメラを持つのではなく、カネモト本人がカメラを持つべきだったのではないだろうか。ただただ1階でカネモトを見送り、そして帰ってくるのを待つだけの動画というのは、なんとなく面白みがないように思える。

「確かに――。せっかくの生配信なのに、1階でカネモトの帰りを待つだけというのは、見せ方として下手のように思えますねぇ。視聴している方の興味は、あくまでも人喰いエレベーターにあったでしょうし」

 班目が同意してくれるが、結局のところその真意はラクレスにしか分からない。本人達に直接話を聞ければ良いのだが、それができないから今回の事件はなおさらに難しくなっている。改めて再生が始まった動画は、しばらく1階で待機を続ける画面と、博士の独り言を垂れ流すと、突如として凄惨な場面へと切り替わる。まるで予期していなかった光景。ほのぼのとしたホームドラマで食卓を囲む場面において、天井から死体が突然降ってくるような衝撃。博士の慌てぶりと、情けない悲鳴が辺りに響く。

「そう言えば、カネモトさんが発見された時のことを、もう少し詳しくお聞きしたいと思っていたんです。動画を見る限りでは、なにか鈍器のようなもので頭を殴られたことくらいしか分かりませんので」

 今回の事件は情報量が少なく、その割に不可解なことが多いため、カネモトの死因などには触れていなかった。どうせ出張査定となることは目に見えていたし、その時に話を聞いたほうが効率が良いと考えたのだ。千早の言葉に咳払いをすると、刑事らしく手帳をめくりながら口を開く班目。

「この辺りは警察の仕事ですからねぇ。改めて、殺害されたのは金本礼司かねもとれいじ、21歳。都内の大学に通う大学生です。まぁ、ラクレスとして活動を始めてからは、ほとんど大学には行ってなかったみたいです。動画を投稿することで、かなりの広告収入を得ていたみたいですし、そっちのほうに心血を注ぎたくなる気持ちは分からなくありません。――死因は金属バットによって頭部を殴られたことによる脳挫傷。凶器と思われる金属バットは、エレベーターの隅に転がっていました。ちょうど死角に入ってしまっていて、生配信の動画のほうには映り込んでいませんがね」
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