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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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「ほら、この時にはなぜか観葉植物が映り込んでいないんです」

 問題の場面で動画を一時停止する。カネモトが乗り込む際、鏡に映り込んだのは郵便ボックスのみ。観葉植物の緑は確認できない。

「確か、今日は置いてあったよね? 観葉植物」

 愛の言葉に千早は頷く。エレベーターホールにて、郵便ボックスの脇に観葉植物が置いてあったのは記憶に新しい。その観葉植物が、なぜかカネモトがエレベーターに乗り込む場面では、映り込んでいないのだ。ただでさえ合わせ鏡で確認しにくいのであるが、さすがに観葉植物の緑があるとないのとでは大きな違いがある。

「だったら、ラクレスの連中がどかしたんじゃね? 撮影の邪魔になるかなんかで」

 そう言うとお茶を飲み干す一里之。大海に向かって「おかわり」と茶碗を差し出す。大海が茶碗を受け取ると、ソファーに横になった。一里之にとって大海の家は、我が家同然といったところか。

「でも、だとしたらなぜ? 別に観葉植物があったところで撮影の邪魔にならないでしょうし――」

「それに、もし邪魔だと感じたのであれば、生配信が始まる前に撤去しておくべきだと私は思うのですが」

 班目の言葉に乗っかる形で、千早は自分の考えを発信する。もし仮に、なにかしらの理由でラクレスが観葉植物を撤去したとしよう。それならば、生配信が始まった時点で観葉植物は撤去されているべきではないのだろうか。しかしながら、冒頭でエレベーターを呼んだ際には、確かに中の合わせ鏡に観葉植物の緑が映り込んでいる。となると、準備と称してしばらく視聴者を待たせた時間帯に撤去したのか。どちらにせよ、直接的に邪魔にはならないような観葉植物を、なぜ撤去する必要があったのか。新たな発見は、新たな謎へと姿を変えてしまった。

「それと――私はこのようなことをやったことがないので分からないのですが、なんといいますか、見せ方がおかしいと思いませんか?」

 動画を一時停止にしたまま、漠然と抱いていた疑問を口にする千早。こればかりは、センスの問題というか、余計なことなのかもしれないが、ずっと気になっていたことだ。

「見せ方――って?」

 愛が問うてくる。

「配信の見せ方です。今回の配信は、人喰いエレベーターに食べられてみた――との趣旨があります。実際、そこがメインに据えられているのだから、生配信を視聴する人達がもっとも興味を抱くのは、エレベーターの中でなにが起きるのかという点だと思うのです。カネモトさんがエレベーターに乗り込むのであれば、彼にカメラを持たせて、エレベーターの中を撮影したほうが、趣旨にも合っているし、より良い見せ方になったのではないでしょうか?」
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