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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】

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 白手袋を取り出してはめると、ビニール袋からハンディービデオカメラを取り出す。その仕草が異様に見えたのであろうか。大海は「あ、あぁ。テレビに繋ぐことはできると思うよ」と、やや戸惑いつつテレビのほうへと歩み寄った。

「後は、これをカメラのほうに繋げばいいと思う」

 大海がそう言ってケーブルを手渡してきた。千早がハンディービデオカメラを丁重に扱っているのを見て、そのような対応をしてくれたのかもしれない。

「ありがとうございます」

 千早はケーブルを受け取ってみるが、しかしどこに差していいのか分からない。それを見兼ねたのか、班目が「そこに差すんですよ」と、ケーブルの差し込み口を指差した。さて、ケーブルを差し込むと、大海がテレビをハンディービデオカメラの出力画面へと切り替えてくれる。ここから先の操作は、一度班目から習っているから問題ない。千早は動画の再生を始めた。

 まるで情報のない状態で見た生配信の映像と、ある程度の情報を得てから見る生配信の映像とでは、見え方も変わってくるはず。現状で足りないピースはなんなのか。これから何をすべきなのか。色々と見えてくるだろう。

 まずは冒頭の挨拶から。なんとも馬鹿げたやり取りをした後に、エレベーターが呼ばれて、全面が鏡張りの内装にラクレスが馬鹿騒ぎをする。改めて見てみると、合わせ鏡のエレベーターには、郵便ボックスと、その脇に置いてあった観葉植物が映り込み、それが乱反射していた。ところどころにある緑の色合いが、なかなかに不気味である。

 その後、ラクレス内でじゃんけんをして、カネモトがエレベーターに乗り込むことが決まる。この時点で、千早はある疑問を抱いていた。つまり、犯人の狙いが初めからカネモトだったとして、このじゃんけんでカネモトがエレベーターに乗ることにならなかったら、どうするつもりだったのかということ。事件そのものが起きなかったのか、それとも犯人の狙いはカネモトではなく、人喰いエレベーターに乗った人間なのか。それに、もし犯人がこのじゃんけんに負けて人喰いエレベーターに乗り込むことになっていたら、どうしていたのか。立ち位置が変われば、犯行のプランだって大きく変わったはずである。この辺りのことは、現時点では不明な点が多い。

「この時点で、まさかカネモトも殺されるなんて思っていなかったんだろうなぁ」

 テレビ画面を眺めながら一里之が呟いた。画面の中のカネモトはじゃんけんに負けてしまったことを、むしろ喜ぶかのように声を上げていた。
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