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査定3 おばけマンションの人喰いエレベーター【問題編】
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「よくよく考えると、あいつ一人でこんなところによく暮らせるなぁ」
ヘルメットを脱いでバイクを降りると、そびえ立つおばけマンションを見上げる一里之。山の斜面かおばけマンションのどちらかのせいで、駐車場にはほとんど日が当たらないのだろう。ひび割れたアスファルトの隙間からは苔が生えていた。住居者がいないから管理費が賄えない。管理費が賄えないから、裏手の駐車場など目につかないところの整備がおろそかになる。その結果、部屋の借り手がつかないという悪循環に陥っているように見えた。
「でも、独り暮らしってちょっと憧れるけど。親とかに縛られることもないんだろうし」
同じくおばけマンションを見上げる愛。その高さは思っていた以上である。自慢にもならないが、妻有郷にこれより高い建物はないだろう。
「でも、地元でおばけマンションなんて呼ばれてる物件に住むんだぜ? コンビニまでかなり距離ありそうだし、夜になると辺りも真っ暗だしよ。よく正義のやつも平気で住んでいられるよ」
大海の両親が高級嗜好でおばけマンションを選んだのと同様、大海もおばけの類をまるで信じない部類である。だからこそ、こんなひっそりとしており、ほとんど住人のいないマンションで暮らしていても平気なのだ。むしろ、ほとんど住人がいないから、大音量で音楽が聴けるし、生活音を気にする必要もなければ、なによりも面倒な近所付き合いがなくて助かる――とは、大海本人の言葉である。悔しいから付け足したくはないが、女の子も連れ込み放題だとか。リア充爆発しろ――なんて言葉が流行ったが、一応リア充に当てはまるであろう一里之が妬ましく思うのだから、大海には粉微塵にでもなってもらわねば割が合わない。
「確か大海君の住んでいる階は最上階でしたよね? 班目様から聞いた話ですが」
いつの間に車から降りてきたのだろうか。一里之の隣で、手持ちのバッグを片手におばけマンションを見上げる千早がいた。改めて隣に立ってみて、千早の小柄さを実感する。
「あぁ、そうだよ」
一里之が答えると、千早に遅れてようやく車を降りた班目が口を開く。
「私が口出しをすると、ややこしいことになるかもしれませんから、あくまでもそちら主体でお願いしますよ。私はあくまでも同行しているだけということで」
班目の言葉に「分かってます」と千早。直接聞いたわけではないが、ここにきた目的は持ち込まれた品物の値踏みである。ゆえに刑事である班目主体ではなく、古物商の千早が主体とならねばならない。その証拠か、千早の顔つきが少し変わったような気がした。商売人としての顔つきというか、雰囲気も異なっているように思えた。
「それでは参りましょう」
そう言うと、おばけマンションの正面側に向かって歩き出す千早。それに続く一里之達。おばけマンションにて発生した有名動画配信者殺害事件。正面に回った千早がぽつりと漏らした一言を、一里之は聞き逃さなかったのであった。
「このいわく、しかと値踏みさせていただきます――」
ヘルメットを脱いでバイクを降りると、そびえ立つおばけマンションを見上げる一里之。山の斜面かおばけマンションのどちらかのせいで、駐車場にはほとんど日が当たらないのだろう。ひび割れたアスファルトの隙間からは苔が生えていた。住居者がいないから管理費が賄えない。管理費が賄えないから、裏手の駐車場など目につかないところの整備がおろそかになる。その結果、部屋の借り手がつかないという悪循環に陥っているように見えた。
「でも、独り暮らしってちょっと憧れるけど。親とかに縛られることもないんだろうし」
同じくおばけマンションを見上げる愛。その高さは思っていた以上である。自慢にもならないが、妻有郷にこれより高い建物はないだろう。
「でも、地元でおばけマンションなんて呼ばれてる物件に住むんだぜ? コンビニまでかなり距離ありそうだし、夜になると辺りも真っ暗だしよ。よく正義のやつも平気で住んでいられるよ」
大海の両親が高級嗜好でおばけマンションを選んだのと同様、大海もおばけの類をまるで信じない部類である。だからこそ、こんなひっそりとしており、ほとんど住人のいないマンションで暮らしていても平気なのだ。むしろ、ほとんど住人がいないから、大音量で音楽が聴けるし、生活音を気にする必要もなければ、なによりも面倒な近所付き合いがなくて助かる――とは、大海本人の言葉である。悔しいから付け足したくはないが、女の子も連れ込み放題だとか。リア充爆発しろ――なんて言葉が流行ったが、一応リア充に当てはまるであろう一里之が妬ましく思うのだから、大海には粉微塵にでもなってもらわねば割が合わない。
「確か大海君の住んでいる階は最上階でしたよね? 班目様から聞いた話ですが」
いつの間に車から降りてきたのだろうか。一里之の隣で、手持ちのバッグを片手におばけマンションを見上げる千早がいた。改めて隣に立ってみて、千早の小柄さを実感する。
「あぁ、そうだよ」
一里之が答えると、千早に遅れてようやく車を降りた班目が口を開く。
「私が口出しをすると、ややこしいことになるかもしれませんから、あくまでもそちら主体でお願いしますよ。私はあくまでも同行しているだけということで」
班目の言葉に「分かってます」と千早。直接聞いたわけではないが、ここにきた目的は持ち込まれた品物の値踏みである。ゆえに刑事である班目主体ではなく、古物商の千早が主体とならねばならない。その証拠か、千早の顔つきが少し変わったような気がした。商売人としての顔つきというか、雰囲気も異なっているように思えた。
「それでは参りましょう」
そう言うと、おばけマンションの正面側に向かって歩き出す千早。それに続く一里之達。おばけマンションにて発生した有名動画配信者殺害事件。正面に回った千早がぽつりと漏らした一言を、一里之は聞き逃さなかったのであった。
「このいわく、しかと値踏みさせていただきます――」
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