21 / 226
査定1 家族記念日と歪んだ愛憎【解答編】
7
しおりを挟む
キンモクセイは挿し木という手法で育てた場合、最低でも5年は花をつけない。しかし、日記の中では第3回の家族記念日の段階で、その前年に花が咲いていたことになる。これも日記が4年周期で書かれていたことが判明すれば、あっさりと謎が解決する。
「第3回の日記が書かれた前年にキンモクセイの花が咲いている。最初に書かれた日記から数えると第3回は8年後――その前年ということは、実際はキンモクセイを挿し木で植えてから7年後に花が咲いていたということになる。なるほど、それなら筋が通りますねぇ」
ひとつの綻びがほどけると、それらが連鎖するように一度に弾ける。この感覚を心地よく思えるのは、刑事としての性なのかもしれない。いいや、誰だって同じようなカタルシスを感じるであろう。
「ふたつめのポイントとなる、日取りがどうやら悪い年があるというのも、日記が4年周期で書かれていたものだと考えれば解決します。家族記念日の次の年は、当たり前ですけど2月29日がありません。だからこそ、被害者にとって必ず日取りが悪いことになり、家族記念日も前後してしまうのです」
家族記念日は毎年行われていたようだが、しかし2月29日は4年に一度しかない。だから、他の年に家族記念日をやるのであれば、必ず家族記念日はその前後に動いてしまうのだ。日記は4年周期でしか書かれていないのに、その記述の中に前後の年のことが書かれてしまっているからこそ、混乱と矛盾を招いてしまったのだろう。
「ここまでくれば、みっつめのポイントとよっつめのポイントも解決します。第7回の日記で赤いチャンチャンコをプレゼントされているということは、その年に被害者は60歳だったことになります。そこから逆算します。第6回が56歳の時、第5回が52歳の時、第4回が48歳、第3回が44歳、第2回が40歳、そして最初に日記が書かれたのが36歳。ちなみに第8回が64歳の年に書かれたものということになりますから、この日記は被害者が36歳の頃から64歳にいたるまで――実に28年という歳月をまたいで書かれていたことになります」
日記は28年に渡り書かれていたものだった。それを彼女はキンモクセイだけで見抜いたのだ。その洞察力には恐れ入る。いいや、彼女の場合は鑑識眼といったほうが名誉になるのかもしれない。
「第3回の日記が書かれた前年にキンモクセイの花が咲いている。最初に書かれた日記から数えると第3回は8年後――その前年ということは、実際はキンモクセイを挿し木で植えてから7年後に花が咲いていたということになる。なるほど、それなら筋が通りますねぇ」
ひとつの綻びがほどけると、それらが連鎖するように一度に弾ける。この感覚を心地よく思えるのは、刑事としての性なのかもしれない。いいや、誰だって同じようなカタルシスを感じるであろう。
「ふたつめのポイントとなる、日取りがどうやら悪い年があるというのも、日記が4年周期で書かれていたものだと考えれば解決します。家族記念日の次の年は、当たり前ですけど2月29日がありません。だからこそ、被害者にとって必ず日取りが悪いことになり、家族記念日も前後してしまうのです」
家族記念日は毎年行われていたようだが、しかし2月29日は4年に一度しかない。だから、他の年に家族記念日をやるのであれば、必ず家族記念日はその前後に動いてしまうのだ。日記は4年周期でしか書かれていないのに、その記述の中に前後の年のことが書かれてしまっているからこそ、混乱と矛盾を招いてしまったのだろう。
「ここまでくれば、みっつめのポイントとよっつめのポイントも解決します。第7回の日記で赤いチャンチャンコをプレゼントされているということは、その年に被害者は60歳だったことになります。そこから逆算します。第6回が56歳の時、第5回が52歳の時、第4回が48歳、第3回が44歳、第2回が40歳、そして最初に日記が書かれたのが36歳。ちなみに第8回が64歳の年に書かれたものということになりますから、この日記は被害者が36歳の頃から64歳にいたるまで――実に28年という歳月をまたいで書かれていたことになります」
日記は28年に渡り書かれていたものだった。それを彼女はキンモクセイだけで見抜いたのだ。その洞察力には恐れ入る。いいや、彼女の場合は鑑識眼といったほうが名誉になるのかもしれない。
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。
白羽の刃 ー警視庁特別捜査班第七係怪奇捜査ファイルー
きのと
ミステリー
―逢魔が時、空が割れ漆黒の切れ目から白い矢が放たれる。胸を射貫かれた人間は連れ去られ魂を抜かれるー
現代版の神隠し「白羽の矢伝説」は荒唐無稽な都市伝説ではなく、実際に多くの行方不明者を出していた。
白羽の矢の正体を突き止めるために創設された警視庁特捜班第七係。新人刑事の度会健人が白羽の矢の謎に迫る。それには悠久の時を超えたかつての因縁があった。
※作中の蘊蓄にはかなり嘘も含まれています。ご承知のほどよろしくお願いいたします。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
警視庁鑑識員・竹山誠吉事件簿「凶器消失」
桜坂詠恋
ミステリー
警視庁、ベテラン鑑識員・竹山誠吉は休暇を取り、妻の須美子と小京都・金沢へ夫婦水入らずの旅行へと出かけていた。
茶屋街を散策し、ドラマでよく見る街並みを楽しんでいた時、竹山の目の前を数台のパトカーが。
もはや条件反射でパトカーを追った竹山は、うっかり事件に首を突っ込み、足先までずっぽりとはまってしまう。竹山を待っていた驚きの事件とは。
単体でも楽しめる、「不動の焔・番外ミステリー」
バージン・クライシス
アーケロン
ミステリー
友人たちと平穏な学園生活を送っていた女子高生が、密かに人身売買裏サイトのオークションに出展され、四千万の値がつけられてしまった。可憐な美少女バージンをめぐって繰り広げられる、熾烈で仁義なきバージン争奪戦!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる