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第二話 Q&A【事件編】

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 いざ、ホテルの中に入ってみると、ハリボテを寄せ集めたような質素な廊下が続いているだけ。どのような構造になっているのか不明ではあるが、どうやら廊下を介して、それぞれの部屋が個別に独立した形になっているようだ。海外のモーテル方式が表現としては近いのかもしれない。それぞれの部屋が廊下で繋がれていることを除けば、ほぼそれだと言えよう。この形だからこそ、それぞれの部屋で全て完結するようになっているのだと思われるし、値段がリーズナブルなのも納得できる。これをホテルと呼べるかどうかは怪しいが。

「おい、坂田! 尻拭いってどういうことだよ!」

 廊下を駆け抜ける坂田を懸命に追いかけながらも、さきほどの言葉がどうにも引っかかる巌鉄。もう嫌な予感しかしない。

 巌鉄の問いかけに応えるかのごとく坂田が立ち止まる。いや、目的の扉の前に到着したというべきか。坂田は肩で息をしながらも、目の前の扉を乱暴に叩く。

「おい! 開けろ! おい!」

 当たり前だが、ラブホテルの部屋というものは施錠されている。中で清算する形となるのであれば、むしろ望まずとも部屋にはロックがかけられているだろう。そうでなければ、支払いをせずに帰れてしまうからだ。それでも坂田は途中で扉を叩くのを止めると、ドアノブを捻ってみる。当然、鍵がかかっているから開かない。

「やっぱり簡単には開かねぇか。仕方ねぇ」

 坂田は少しばかり扉から離れると、助走をつけて扉を蹴りつける。そんなに扉もやわではないから、当然ながらびくともしない。苛立ちをぶつけるためか、何度か腰の入った拳を扉に叩き込んだが、しかしびくともしない。

「お、おい。坂田……いくら俺が一緒にいるからって、やっていいことに限りはあるからな。できる尻拭いと、できない尻拭いってもんがある」

 とりあえず坂田の生身では、扉はどうにもならないようだ。それを見たからこそ、ようやく巌鉄は冷静さを取り戻して坂田に忠告することができた。しかしながら巌鉄は坂田のヤンチャぶりを見誤っていたのだ。

「こういうのはよ、鍵のを部分をどうにかすればいいんだよ。そうだ――なんかバール的なもんがねぇかな。扉の間に差し込んでこじ開けることができるような」

 坂田はぶつぶつと呟きながらも辺りを見回す。許可も取らずに扉をこじ開けるなんてとんでもない。巌鉄が同行していようとも、間違いなく大問題になってしまう。だが、この時の巌鉄にはまだ余裕があった。もしかすると、坂田の扱いに慣れた――つもりでいたのかもしれない。
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