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第二話 Q&A【事件編】

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 居酒屋に入る前に財布を取り出し、しばし懐と相談をする巌鉄。独り身ではあるとはいえ、生活するのに金がかからないというわけではない。それに、きっと世の中が想像しているより刑事というのは薄給だったりするものだ。

「こりゃ、給料日までもやし三昧だな」

 一度店に入ってしまえば、出入り口だってひとつなわけだから、外で待っていればいいような気もする。しかしながら、坂田は店に入るどころか、巌鉄から馳走になるつもりでいるようだ。今回の非公式捜査に、本人の希望とはいえ無償で付き合わせているわけだし、給与代わりに食事代を出してやってもバチは当たらないだろう。無理矢理に自分を納得させ、坂田に続いて店に入る。

 時間は食事時ということもあり、店内は主に仕事帰りと思われるサラリーマンや、OLで賑わっていた。仕事終わりの一杯というやつか。巌鉄も一緒になって特別な一杯をいただきたいところであるが、そこは我慢しなければならない。

 店はカウンターと小上がりで形成されているが、それぞれの小上がりは通路と低いパーテーションで遮られているだけだ。カウンターのほうが一段高くなっており、店員が出迎えてくれた時点で、巌鉄はカウンター席を希望する。坂田は小上がりがいいと駄々をこねた。当初の目的から完全に逸脱してしまっている。あくまでも巌鉄達がしているのは尾行であり、食事を楽しみに来たわけではない。

 カウンターでなければ金を出さない。その言葉に坂田は渋々と了承し、巌鉄達はカウンター席に着席。振り返れば小上がりを見渡すことができる。もっとも、ずっと振り返っているわけにもいかないから、たまに様子を見るということしかできないが。

 舞香達は当たり前のように酒を頼んで飲んでいるらしかった。まぁ、相手が誘ったのであれば、断ったらあまりにも不自然だ。舞香が酒を飲むのは仕方がない。

「とりあえず、鯛の酒盗とビール」

 ただし、こちらは話が別。メニューを片手に、さも当然とばかりに頼んだ坂田の頭を引っ叩く。

「お前はまだ未成年だろうが。それに酒盗って、お前どれだけ通な飲み方をしようとしてんだよ」

 酒はもちろん御法度であるが、飲み慣れているとしか思えない酒のアテに思わず手が出てしまった。坂田は舌打ちをすると「だからって叩くことはねぇだろうが」と一言。それを無視して巌鉄は坂田からメニューをひったくる。

「烏龍茶をふたつと、こいつには油ぎっとぎとの唐揚げで出してやってくれ。俺は茶漬けでも貰おうか」

 居酒屋一発目の注文が茶漬けとは申し訳ないのであるが、懐のことも考えたら、さっさと腹を膨らませたほうがいい。坂田も油たっぷりの唐揚げでも食えば、そうそう追加注文はしないだろう。
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