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第一話 コレクター【事件編】

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 察するに、巌鉄とは別行動していた刑事が、新山のところに向かったらしい。普段は治安の悪い雨立街も、今日ばかりは大人しくしていることだろう。

「新山さん。同じことの繰り返しのようで申し訳ないのですが、もう一度事件のことについて詳しくお話を聞かせていただきたい。どこか、話ができる場所で――」

 辺りを見回してはみるが、店らしい店は例のファミレスくらいしかない。あまりにもこぢんまりとしている店ではできない話だろう。

「あそこの高架下でいいんじゃねぇか? 雨よけにもなるし、この時期は空気が冷えてて居心地も悪くねぇ」

 坂田がそう言って視線を向けた先には、街の中心部へと続く高架が伸びていた。少しずつぱらついてきた雨をよけるのにも高架下は最適だし、確かに涼しいかもしれない。

「まぁ、込み入った話だし、逆にそういうところのほうがいいのかもな。俺は構わないが――」

 巌鉄が視線を寄越してきたことに気づいた楠野は「俺も別に構いませんよ」と返す。新山は「仁ちゃんがおすすめのところならば地獄でも」と笑顔を見せ、坂田はあからさまな舌打ちをする。

「それにしても――ちょっとだけ警察のこと見直した。銀山達にあれだけの啖呵を切るなんて思ってもみなかったから」

 楠野からすれば、警察の印象というのはあまり良くないものだ。なにかが起きてからではないと動いてくれないし、まともに取り合ってもくれない。そして、何よりも腰抜けだ。そう思っていたからこそ、巌鉄の行動には驚かされた。あれは誰がどう見ても、本気で相手を潰そうとしていたから。

「俺も年甲斐なくやっちまったもんだ。ちょっと反省しないとな」

 高架下は楠野が思っていた以上に環境が整備されていた。上を走る車の音は仕方ないにしても、ひんやりと冷えた空間にはパイプ椅子がいくつか並んでおり、挙げ句に灰皿まで置いてある。

「ここの土地――どこの誰の所有地だか知らないが、完全な不法侵入だな」

 その光景を見て溜め息を漏らした巌鉄を、坂田は「まぁ、いいじゃねぇかよ」となだめる。

「いざとなったら、警察の人間がいるわけだし、誰かに注意された時も安心だな」

 坂田に便乗すると「ったく、警察をなんだと思ってるんだ?」と巌鉄。しかしながら、率先して灰皿に歩み寄ると煙草に火を点ける。

 自然と坂田と楠野はパイプ椅子に着席。残った一脚には、巌鉄にすすめられた新山が座る。巌鉄は高架の橋脚に寄りかかる形で口を開いたのだった。

「さて、新山さん。事件のこと、知ってる限りで構わないから、詳しく話してもらえないか?」
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