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第一話 コレクター【事件編】

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「悪いことに憧れんのも一時的なもんで、はたから見ればダセェってことだろ?」

 巌鉄が代弁するかのごとく言うと、坂田は満足がに頷いた。

「分かってるじゃねぇか。煙草、酒、薬――後、集団の暴走行為か。あんなのだって、はたから見たらダセェだけだろ? 煙草、酒、薬はどれも依存しているだけだし、暴走行為のどこがイケてんだ? 人様に迷惑をかけてるだけじゃねぇか」

 坂田の熱弁を巌鉄が鼻で笑い飛ばした。

「そう言ってる手前で、堂々と煙草を吸われてもなぁ。それに、お前だって何度も傷害でしょっぴかれてるだろうが。説得力がねぇんだよ」

 坂田が煙を吐き出してながら「うるせぇ、おっさんが」と言い放った直後のことだった。坂田が急にテーブルのかげに身を隠す。

「鐘、テーブルの下に隠れろ。銀山達だ――」

 言われるままにテーブルのかげに隠れるが、どこに銀山の姿を見たのだろうか。通りを映す窓ガラス越しであれば、まだなんとかなりそうだが、もし店内に入っているとなると面倒だ。

 何やら店の入り口で店員と客らしき相手が揉めているような声が聞こえる。満席だから席が空くまで待ってくれと訴える店側と、とりあえず店の中に入れろという客。客のほうの声には聞き覚えがある。間違いない。銀山だ。

「巌鉄のおっさん。銀山に見つかると面倒だからよ、適当にあしらってくれ」

 適当にあしらえと言われても、テーブルのかげに坂田と楠野が隠れているのは明白だ。他のテーブルの客から、あいつらは何をやっているのか――という視線すら向けられている。

 店の入り口側で客が激昂し、とうとう店員の制止を振り切って店内に入ってきたらしい。おそらく、外から楠野達の姿を見つけたのであろう。店に入ってくるなり、荒々しい足音が近づいてくる。

「適当にあしらう? いやいや、事件の参考人だろ? ちゃんと話を訊かせてもらわないとな」

 足音は当然のように楠野達のテーブルの前までやって来て止まった。テーブルのかげからも見える見慣れたスニーカー。間違いなく銀山のものだった。

「見つけたぜぇ、坂田ちゃーん。こんなところで昼飯とは、いい度胸だなぁ」

 先にテーブルのかげから姿を見せていたのだろう。坂田のほうに向かって銀山から言葉が投げかけられる。自分ばかり隠れているような形になっていることを察した楠野は、大人しく体を起こした。と同時に上半身をひねり、銀山の横っ腹にボディーブロウをくらわせた――つもりだった。
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