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第二章
六十九話
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――異界の湖の向こう側。
そこは召喚獣や契約獣になる存在たちが住む世界。ロセウスやアルブス、アーテルらが住んでいた場所だ。どういった場所なのか。行ったことがないから、ロセウスたちに聞く話から想像することしかできないが、ここよりもさらにファンタジーな世界のようだ。
「生まれ変わり……」
「ありえない話じゃない。だって僕もこうして生まれ変わったんだから。この世界の端から端までずっと旅をしてきた。それでもリリーは見つからなかった。だったらこの世界にリリーはもういないんじゃないか。そう思ったんだ」
クライシスの話は非現実的に見えて、その実そうでもない。クライシスはこの世界に転生を果たし、鈴もベルへと生まれ変わった。実例が二つもあるのだから、その可能性を信じてしまうのも無理はない。ベルだって、もし大切な三人が命を落としてしまうようなことがあれば、その可能性へ真っ先に辿り着くだろう。
「けれど異界の湖には番人がいる。番人の目を盗んで向こう側へはいけない。だからこうして番人を倒して向こう側に行こうと思ったんだ。でも君たちにこの計画を気づかれたらその時点で失敗となる。だから君に毒を盛って、異界の湖から注意を逸らしたんだ」
たしかにクライシスの目論見通り、ベルたちの意識は王都に持っていかれていた。ヴァイオレットやムースがいなければ、異界の湖にクライシスがいることに気づきもしなかっただろう。
事情を把握し、ベルは気持ちを落ち着かせるために深呼吸を一つする。
「ねぇ、クライシス。こうしてリーディルの無事を確認できた今、貴方はもう誰にも刃を向けないと誓える?」
「リリーが僕の隣にいてくれるのなら」
「そう、わかった。なら私は貴方のために協力をするよ」
「……あっそう」
つっけんどうな返事なのは、恥ずかしからなのか、素なのか。
それでもベルからの協力を拒まなかったのは、確実な前進である。
「日本でのことは、私はもう気にしていない。だからクライシスは反省や償いもをしなくてもいい。けれどここでクライシスがしたことは別。それくらいは分かるよね?」
クライシスがいくら子どものような性格をしていたとしても、ベルよりも数百年も前にこの世界に転生を果たしたのだ。数百年も人生の先輩なのだから、分かってもらわなければ困る。
「まあ、それくらいは」
分かってくれなかったら、と少し心配をしていたのだが、どうやら大丈夫なようだ。内心息をつき、なら、と話を続ける。
「反省をして、償いをしてほしい。出来るよね?」
ロゼリアで遊んだこと。
ベルに毒を盛ったこと。
そして自分本位な考えてヴィータに危害を加えたこと。
細かなことをあげたらキリが無くなるので、この三点のみに絞ることにする。
「…………わかった。でも償いってどうすればいいんだよ」
そこは自分で考えて、と口にしようとしたが、その言葉を直前で飲み込む。本来なら自分で考え行動を起こすことこそ自分のためになるのだが、今回ばかりはそこまで悠長なことを言ってられない。
(リーディルに会えなかったってまた暴れられても困るし)
それに好転するかも、と先に口にしたのはベル自身だ。自身で考え行動する云々は後々リーディルに任せるしかない。リーディルもクライシスのために体を張っているのだ。それくらいは何も言わなくても、請け負ってくれるだろう。
「まずは反省。これは私が言わなくてもわかるよね?」
「まあ大体は」
「なら今のところはよし……とする」
(していいのかはわからないけど)
心の中で自身にツッコミを入れつつ、償いの話にいく。
「クライシスがこれから行うことは幾つかある。まず一つ目はロゼリアたちに謝ること。大体ではあれど、反省をしているのであればできるよね。そして二つ目はこの場所の修復。自分で壊したんだからこれくらいは当然。そして最後に――」
ベルが最後に示した言葉に、クライシスだけでなくロセウスたちも驚きの声と反対の声をあげた。しかしそのことについては元々覚悟していたので、総無視を決め込む。肝心なのはクライシスの気持ちだ。
クライシスは数十秒間を空けたのち、了承を示した。
そこは召喚獣や契約獣になる存在たちが住む世界。ロセウスやアルブス、アーテルらが住んでいた場所だ。どういった場所なのか。行ったことがないから、ロセウスたちに聞く話から想像することしかできないが、ここよりもさらにファンタジーな世界のようだ。
「生まれ変わり……」
「ありえない話じゃない。だって僕もこうして生まれ変わったんだから。この世界の端から端までずっと旅をしてきた。それでもリリーは見つからなかった。だったらこの世界にリリーはもういないんじゃないか。そう思ったんだ」
クライシスの話は非現実的に見えて、その実そうでもない。クライシスはこの世界に転生を果たし、鈴もベルへと生まれ変わった。実例が二つもあるのだから、その可能性を信じてしまうのも無理はない。ベルだって、もし大切な三人が命を落としてしまうようなことがあれば、その可能性へ真っ先に辿り着くだろう。
「けれど異界の湖には番人がいる。番人の目を盗んで向こう側へはいけない。だからこうして番人を倒して向こう側に行こうと思ったんだ。でも君たちにこの計画を気づかれたらその時点で失敗となる。だから君に毒を盛って、異界の湖から注意を逸らしたんだ」
たしかにクライシスの目論見通り、ベルたちの意識は王都に持っていかれていた。ヴァイオレットやムースがいなければ、異界の湖にクライシスがいることに気づきもしなかっただろう。
事情を把握し、ベルは気持ちを落ち着かせるために深呼吸を一つする。
「ねぇ、クライシス。こうしてリーディルの無事を確認できた今、貴方はもう誰にも刃を向けないと誓える?」
「リリーが僕の隣にいてくれるのなら」
「そう、わかった。なら私は貴方のために協力をするよ」
「……あっそう」
つっけんどうな返事なのは、恥ずかしからなのか、素なのか。
それでもベルからの協力を拒まなかったのは、確実な前進である。
「日本でのことは、私はもう気にしていない。だからクライシスは反省や償いもをしなくてもいい。けれどここでクライシスがしたことは別。それくらいは分かるよね?」
クライシスがいくら子どものような性格をしていたとしても、ベルよりも数百年も前にこの世界に転生を果たしたのだ。数百年も人生の先輩なのだから、分かってもらわなければ困る。
「まあ、それくらいは」
分かってくれなかったら、と少し心配をしていたのだが、どうやら大丈夫なようだ。内心息をつき、なら、と話を続ける。
「反省をして、償いをしてほしい。出来るよね?」
ロゼリアで遊んだこと。
ベルに毒を盛ったこと。
そして自分本位な考えてヴィータに危害を加えたこと。
細かなことをあげたらキリが無くなるので、この三点のみに絞ることにする。
「…………わかった。でも償いってどうすればいいんだよ」
そこは自分で考えて、と口にしようとしたが、その言葉を直前で飲み込む。本来なら自分で考え行動を起こすことこそ自分のためになるのだが、今回ばかりはそこまで悠長なことを言ってられない。
(リーディルに会えなかったってまた暴れられても困るし)
それに好転するかも、と先に口にしたのはベル自身だ。自身で考え行動する云々は後々リーディルに任せるしかない。リーディルもクライシスのために体を張っているのだ。それくらいは何も言わなくても、請け負ってくれるだろう。
「まずは反省。これは私が言わなくてもわかるよね?」
「まあ大体は」
「なら今のところはよし……とする」
(していいのかはわからないけど)
心の中で自身にツッコミを入れつつ、償いの話にいく。
「クライシスがこれから行うことは幾つかある。まず一つ目はロゼリアたちに謝ること。大体ではあれど、反省をしているのであればできるよね。そして二つ目はこの場所の修復。自分で壊したんだからこれくらいは当然。そして最後に――」
ベルが最後に示した言葉に、クライシスだけでなくロセウスたちも驚きの声と反対の声をあげた。しかしそのことについては元々覚悟していたので、総無視を決め込む。肝心なのはクライシスの気持ちだ。
クライシスは数十秒間を空けたのち、了承を示した。
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