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第二章

五十三話

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 召喚獣の三人と夕食を終え、約束の二十二時までゆっくりと過ごそうとしていたのだが、お風呂に入り終わるなりゆっくりする暇もなく、三人の手によって大きなベッドの上へと連れていかれた。

「こ、これは……」

 連れていかれるなり、最初に注目したのは、それぞれの頭についているものだった。

 それぞれの頭やお尻にはケモ耳、そして尻尾が鎮座していたのだ。

「ベル、存分に触ってくれて構わないよ。約束だしね」

「え、でも……。ラヴィックとトトーとの戦いでは引き分けになっちゃったし」

 午前の試合では圧勝したものの、午後から行った二試合中一試合は負けこそしなかったが引き分けという結果に落ち着いてしまった。

 ベルとしては全部勝てたらもふれるという考えだったため、この発想はなかった。発想がなかったからこそ、引き分けた悔しさが普段よりも倍増していたのだ。

「だが、午後からの試合は本来の力を出せずに、だっただろ? それで引き分けになっただけ大したもんだろ」

「そうそう。お嬢は今日頑張ったんだから、俺たちからのご褒美ってことで。それに俺たちも頑張ったご褒美が欲しいし」

「セス、アーテ、アル……って、んん? あれ? ご褒美??」

 褒められた上にご褒美がもらえるとあって嬉しくなっていたのだが、アルブスの最後の一言が引っかかる。

 肩に顔がくっつきそうなくらい首を傾げれば、ロセウスの両手に顔を包まれて元の位置に戻された。

「私が言った言葉を覚えているかい?」

「確か、セスたちの耳や尻尾を思う存分触らせてくれるって。んでもってどこを触っても、その間私の体にちょっかいを出さないことも約束するって……」

 性感帯に値する耳の付け根部分を触っていいと許可までもらった。

「んでその後、俺が言った言葉は?」

「アルが言った言葉……あ。そういうことですか」

 ――触り終わったあとに、俺たちもお嬢の体を堪能させてもらうけどな

 確かそう言っていたはずだ。

 ベルの体を堪能させてもらうとは、つまりそういうことをするということ。ご褒美という言葉にも頷ける。だからこそ、三人は思う存分ベルにケモ耳を堪能してほしいのだ。

「で、お嬢? どうする?」

 アーテルが判断を委ねてくるが、選択肢は一つしかなかった。

「もふります」

「だよな、お嬢だし」

 己の欲望に忠実なベルの言葉には、もはや迷いすらなかった。

 そうして存分に満足をした数十分後、ベルの艶やかな声がベッドルームいっぱいに広がったのは言うまでもなかった。

 ただベルは自身に言い訳をするように心の中で呟いた。

 性感帯である付け根部分は、極力触れることを我慢した、と。






 時間が存分にあったこともあって、約束の二十二時までには無事就寝できたことに、ほっと息をつく。夕方までラヴィックたちとともにいたのだ。これで遅れてでもいたら、何をしていたのか大声で告げていると同義である。

 夢を夢だと認識する不思議な感覚を感じながら、小さな家の前にあるお茶会用のテーブルについた。

「昨日の夜ぶりー」

「うん、こんばんはムース、ヴァイオレットさん」

「ああ、こんばんはベル」

 ムースの気が抜けるような伸びた挨拶にベルも挨拶を返す。

 周囲を見渡せば、ベルを皮切りに続々と集まりだしているようだ。そうして全員が集まり、席についたところでムースが人差し指をくいっと動かす。するとベルたちの前にティーカップが出現した。ティーカップの中身は紅茶のようで、淹れ立てのように湯気が立っていた。香りも夢の中なのにきちんとあって、夢だと言われなければ現実と信じてしまう。紅茶に口をつけてみれば、口内に茶葉の豊かな風味が広がった。ここまで再現をしてしまうとは、さすがムースである。

 皆が紅茶で口を潤したところで、ヴァイオレットが口を開いた。

「さて、早速で悪いが、クライシスの居場所について報告をさせてもらうよ」

 その言葉にごくりと喉を思わず鳴らしてしまう。

「跡を辿って夢を渡り歩いた結果、クライシスの居場所がわかった」

「それはどこなんだ」

 我慢しきれなかったのか、ラヴィックが尋ねる。そんなラヴィックの言葉に頷き、ヴァイオレットは再度口を開ける。

「場所は――異界の湖だ」
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