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第二章
十一話
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指揮者が指揮をするような動作で、ベルが両手を振る。そのタイミングで、ベルとエリオット、ラヴィックの足が地面から離れ、宙に浮いた。もちろん数センチなどという小さな単位ではない。数メートルという、遠くでも分かるような浮き方だ。
これは、アルブスの風の魔法だ。最初は予定に入れていなかったのだが、王城に近い場所にいる者だけでなく、色んな人に自分たちの姿を見てもらった方がいいだろうというエリオットやラヴィックから出た案だった。宙に浮く案は確かに名案ではあるが、それにはアルブスの承諾が必要となる。自身の体を宙に浮かせ、空を走るのは四日前にはじめて試したこと。アルブスが安全面を考えて無理だと言うのなら、ベルはアルブスの意見に従おうと決めていた。しかしアルブスはあっさりと承諾して見せた。元々ベルが自身も空を飛びたいと言っていた時点で、すぐに練習をしようと思っていたようだ。それに王都から街まで魔法で飛んで感覚を掴んだから、一日練習すれば大丈夫だと言ってのけた。さすがベルに甘く、優秀な召喚獣である。
ベルたち三人が空中に浮き、全員がその姿を確認できるところで、アルブスがベルたちの体を風の魔法で空中に固定させる。しっかりとその場に固定されたことを確認して、左右にいるエリオットとラヴィックに視線で合図を送った。二人が頷いたのを一瞥して、息を吸った。
「召喚獣、ロセウス・ウルペース、アーテル・ティグリス、アルブス・ティグリス。我が名の元に命ずる。――馳せ参じよ」
「召喚獣、トトー・カルメン。我が名の元に命ずる。――馳せ参じよ」
「召喚獣、コーディリア・ドロップ。我が名の元に命ずる。――馳せ参じよ」
何をやるのかと期待を胸にして、声を潜めて待つ空気の中、ベルの声が響いた。ベルが三人の名前を紡ぎ、次にラヴィック、そいてエリオットが続く。
それぞれが両手を前へ翳すと、空中に光を伴う幻想的な魔法陣が五つ現れ、その魔法陣の上に光の粒子を纏って五人の召喚獣が人化した姿で現れた。
元々この場まで一緒に来ていたので、そのままベルたちと一緒に宙に浮けばいいのだが、こういった手間をかけた演出も場を盛り上げる一環である。ベルたちにとって、ロセウスたちは契約獣ではなく、召喚獣。召喚獣はどこでも呼び出すことができるから召喚獣と呼ばれる。だからこそ呼び出す、といった行為は特別なものではないのだが、国民たちからしてみれば違う。
現に、空中に突然現れた魔法陣から五人の召喚獣が出てきたことによって、驚きや感嘆の声が上がっていた。
人化した召喚獣五人の整った美貌に、誰もが目を引き付けられる。ロセウス、アーテル、アルブスの端正な顔立ちに女性はうっとりと瞳を潤ませ、コーディリアの妖艶な姿に男性は頬を緩ませ、トトーの可愛らしい姿に、どちらにも引っかからなかった者たちが胸をキュンと掴まれた。しかしその美貌に目を奪われた者たちはさらに驚くことになる。
ベルが指を鳴らして合図を送ると、人であった姿から、獣へと変化させたからだ。
ロセウスは三本の尾を持つ桜色の狐に。
アーテルは黒い毛並みに白の縞模様を持つ黒虎、アルブスはその逆で白い毛並みに黒の縞模様を持つ白虎へ。
トトーは真っ白な兎、コーディリアは金の獅子へと姿を変えた。
姿を変えることは契約獣でも出来ることだが、他の職業と比べると契約術師は狭き門であるため数が少ない。そのためこれだけの数が一斉に姿を変えるということを目にした者は中々いないに違いない。
国民たちを驚かせることに成功したことに、内心ガッツポーズをする。
けれどここで油断をしていけない。まだショーの序盤に過ぎないのだから。
ベルたち輝人が召喚術師として、それぞれの召喚獣に視線で合図を出した。その合図に召喚獣たちは頷き、各々の魔法を発動させる。
最初に魔法を発動させたのは、ロセウスだった。ロセウスの使える魔法は火と結界。今回の場合、結界はあまり見世物として役に立たないので、攻撃魔法として有名な火を使用することにした。もちろんそれは攻撃としてでなく、見世物としてだ。
ロセウスが無数の火の球をそらへ発射させる。国民たちはそれにつられるように視線を上へ、上へと上げていった。そして全ての視線が火の球へ集中したところで、火の球を破裂させた。いや、破裂という言葉は不適切かもしれない。
盛大な音とともに空に彩りを持たせた。
つまりは魔法で花火を打ち上げた、という言い方の方が正しいだろう。火の色は、温度調節をすることによって様々な色に変えることができる。この温度調節を利用して、様々な色の花火を打ち上げた。
そしてこの場にいる召喚獣はロセウスだけではない。
アーテルは水魔法で、コーディリアも光の魔法を駆使して、幻想的な模様を空に描き、人々の目を楽しませた。
トトーは、歌兎と呼ばれる種族で、歌の魔法が得意だ。そのため派手な魔法は使えないがその分、歌というジャンルで人々の目ではなく耳から楽しませた。その不思議な歌は自然と心に響き、楽しい気分にさせてくれる。人々の上げる歓声で歌が届き渡らないはずなのに、そこは魔法のおかげでというべきなのか、さすが歌兎というべきなのか、しっかりとそれぞれの耳に届かせていた。
国民たちの幸せそうな顔に満足し、最後にエドアルドやラシードの顔も確認すれば、笑みが溢れていた。
これは、アルブスの風の魔法だ。最初は予定に入れていなかったのだが、王城に近い場所にいる者だけでなく、色んな人に自分たちの姿を見てもらった方がいいだろうというエリオットやラヴィックから出た案だった。宙に浮く案は確かに名案ではあるが、それにはアルブスの承諾が必要となる。自身の体を宙に浮かせ、空を走るのは四日前にはじめて試したこと。アルブスが安全面を考えて無理だと言うのなら、ベルはアルブスの意見に従おうと決めていた。しかしアルブスはあっさりと承諾して見せた。元々ベルが自身も空を飛びたいと言っていた時点で、すぐに練習をしようと思っていたようだ。それに王都から街まで魔法で飛んで感覚を掴んだから、一日練習すれば大丈夫だと言ってのけた。さすがベルに甘く、優秀な召喚獣である。
ベルたち三人が空中に浮き、全員がその姿を確認できるところで、アルブスがベルたちの体を風の魔法で空中に固定させる。しっかりとその場に固定されたことを確認して、左右にいるエリオットとラヴィックに視線で合図を送った。二人が頷いたのを一瞥して、息を吸った。
「召喚獣、ロセウス・ウルペース、アーテル・ティグリス、アルブス・ティグリス。我が名の元に命ずる。――馳せ参じよ」
「召喚獣、トトー・カルメン。我が名の元に命ずる。――馳せ参じよ」
「召喚獣、コーディリア・ドロップ。我が名の元に命ずる。――馳せ参じよ」
何をやるのかと期待を胸にして、声を潜めて待つ空気の中、ベルの声が響いた。ベルが三人の名前を紡ぎ、次にラヴィック、そいてエリオットが続く。
それぞれが両手を前へ翳すと、空中に光を伴う幻想的な魔法陣が五つ現れ、その魔法陣の上に光の粒子を纏って五人の召喚獣が人化した姿で現れた。
元々この場まで一緒に来ていたので、そのままベルたちと一緒に宙に浮けばいいのだが、こういった手間をかけた演出も場を盛り上げる一環である。ベルたちにとって、ロセウスたちは契約獣ではなく、召喚獣。召喚獣はどこでも呼び出すことができるから召喚獣と呼ばれる。だからこそ呼び出す、といった行為は特別なものではないのだが、国民たちからしてみれば違う。
現に、空中に突然現れた魔法陣から五人の召喚獣が出てきたことによって、驚きや感嘆の声が上がっていた。
人化した召喚獣五人の整った美貌に、誰もが目を引き付けられる。ロセウス、アーテル、アルブスの端正な顔立ちに女性はうっとりと瞳を潤ませ、コーディリアの妖艶な姿に男性は頬を緩ませ、トトーの可愛らしい姿に、どちらにも引っかからなかった者たちが胸をキュンと掴まれた。しかしその美貌に目を奪われた者たちはさらに驚くことになる。
ベルが指を鳴らして合図を送ると、人であった姿から、獣へと変化させたからだ。
ロセウスは三本の尾を持つ桜色の狐に。
アーテルは黒い毛並みに白の縞模様を持つ黒虎、アルブスはその逆で白い毛並みに黒の縞模様を持つ白虎へ。
トトーは真っ白な兎、コーディリアは金の獅子へと姿を変えた。
姿を変えることは契約獣でも出来ることだが、他の職業と比べると契約術師は狭き門であるため数が少ない。そのためこれだけの数が一斉に姿を変えるということを目にした者は中々いないに違いない。
国民たちを驚かせることに成功したことに、内心ガッツポーズをする。
けれどここで油断をしていけない。まだショーの序盤に過ぎないのだから。
ベルたち輝人が召喚術師として、それぞれの召喚獣に視線で合図を出した。その合図に召喚獣たちは頷き、各々の魔法を発動させる。
最初に魔法を発動させたのは、ロセウスだった。ロセウスの使える魔法は火と結界。今回の場合、結界はあまり見世物として役に立たないので、攻撃魔法として有名な火を使用することにした。もちろんそれは攻撃としてでなく、見世物としてだ。
ロセウスが無数の火の球をそらへ発射させる。国民たちはそれにつられるように視線を上へ、上へと上げていった。そして全ての視線が火の球へ集中したところで、火の球を破裂させた。いや、破裂という言葉は不適切かもしれない。
盛大な音とともに空に彩りを持たせた。
つまりは魔法で花火を打ち上げた、という言い方の方が正しいだろう。火の色は、温度調節をすることによって様々な色に変えることができる。この温度調節を利用して、様々な色の花火を打ち上げた。
そしてこの場にいる召喚獣はロセウスだけではない。
アーテルは水魔法で、コーディリアも光の魔法を駆使して、幻想的な模様を空に描き、人々の目を楽しませた。
トトーは、歌兎と呼ばれる種族で、歌の魔法が得意だ。そのため派手な魔法は使えないがその分、歌というジャンルで人々の目ではなく耳から楽しませた。その不思議な歌は自然と心に響き、楽しい気分にさせてくれる。人々の上げる歓声で歌が届き渡らないはずなのに、そこは魔法のおかげでというべきなのか、さすが歌兎というべきなのか、しっかりとそれぞれの耳に届かせていた。
国民たちの幸せそうな顔に満足し、最後にエドアルドやラシードの顔も確認すれば、笑みが溢れていた。
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