66 / 136
第二章
四話
しおりを挟む
ベルはロセウスの背へ、ラヴィックとトトーはアーテル、エリオットとコーディリアはアルブスの背へそれぞれ乗った。アーテルとアルブスは、いつもと違って二人ずつ背に乗せているので大丈夫かと心配をして一瞥したものの、その心配は杞憂に終わる。軽やかな足取りでいつもと変わらず、ロセウスの少し後ろを走っていた。
すでにラヴィックたちが、ナツゥーレにあるベルの家へ訪ねに来ていたことが噂で広まっていたのだろう。家から王城まで向かう道中、少しでも顔を見ようと大勢の人たちが集まっていた。さすがに足早で駆けていくのは気が引けるので、先頭を走るロセウスに少しだけ速度を落としてもらう。
ベルが集まった人たちへ手を振るように、ラヴィックたちも慣れた様子で手を振っていた。歓声はベルが目覚めた時と同じかそれ以上だった。それもそうだろう。基本的に輝人が三人も集まることは滅多にないのだから。それに他国へ行かなければ、自国の輝人以外見かけることもそうはない。
ベルが眠っている間にエヴィックたちが何度か顔を見せに来たとは言うが、それはお忍びでの話。眠っている姿を見て、すぐに帰って行ったという。だから街の人は誰も来たことに気づいたものはいなかったらしい。
街を抜ければ、王都へ向かう道中は家が建っていないため、ベルたちを見ようとやってくる人たちはさすがにいなかった。走る速度を上げ、話しやすいようアーテルとアルブスに横に並んでもらい、今後のことを話した。
「実はさ、皆にお願いがあって」
「お願い? どんなことだ?」
話を促すエリオットに頷き、建国祭に参加してもらえないかとお願いをした。
「ああ、そういえば、ナツゥーレの建国祭はちょうどこの時期だったな」
「そうなの。四日後から三日間王都で行われるんだけど、そこでちょっとした盛り上げ役を皆でしたいと思っててさ。最初は二人が訪ねてくるってなった時、パーティや別で祭りをってなったんだけど、ちょっと大げさな事は嫌かなって。でも歓迎しないのも、国としては引き下がれないでしょう? だから建国祭に出ることで、歓迎されましたよーアピールをしようかと思って……どうかな?」
ちょうど開催される建国祭に出てしまえば、エドアルドも大した準備をしなくてもいいし、ベルたちも気構えなくて済む。人前に出るとしてもベルが考えていたような演出や、夜の食事くらいだろう。
とはいえ、エリオットたちの誰かが嫌だと言えば、無理に押しつけるわけにはいかない。勝手に参加表明をした手前断りにくいが、嫌だと言うのであれば断る気ではある。
「私は構わないぞ」
「俺も大丈夫だぜ。かたっ苦しい事より、そっちの方が楽しそうだしな」
案の定、ベルの考えていた通りの返事が返ってきてほっと胸を撫で下ろす。
「トトーとコーディリアも大丈夫?」
「うん、僕も賛成。その方が何かと都合はいいだろうしね」
「私も問題ないわ。むしろ皆で盛り上げるというのは今までやったことがないから、少しワクワクするわね。それでこういうのがしたいっていう案はありますの?」
それぞれの反応は思っていたよりもよく、自身の考えを四人へ話した。
建国祭で行う演出に、道中かなり盛り上がり、いつの間にか王都へとついていた。初めて王都へ来たときと同じく、検問所を並ばずフリーパス状態で中へと通される。街よりもさらに多くの人で賑わっていたため、ベルたちが揃ってやってきたことが広まると、あっという間に人が押し寄せてきた。街でしたように、笑顔で手を振りながら王城まで向かう。王城への入城も検問所と同じくフリーパス状態で通された。
ロセウス、アーテル、アルブスの三匹には人化をしてもらい、合計八人という大所帯で国王の元へ向かった。
案内をしてくれる男性は、初めてベルが王城へ足を運んだ時と同じ男性だった。しかし今回は輝人が三人、そしてその召喚獣が五人もいるとあってか、その背中からは緊張感が漂っていた。それでも決して顔には出さないところは、さすがとしか言いようがない。もしベルが男性の立場だとしたら、緊張で手足を震えさせ、ロボットのような歩き方をしていたであろう。
「どうぞ、こちらへお入りください」
通された部屋はいつもとは違う、さらに拾い部屋だった。
人数も人数だからなのだろう。
部屋の中は、華美ではあるが下品ではない調度品が幾つも飾られていて、来客者と歓談するために、ソファが設置されていた。予めベルが訪ねると言っていたからなのだろう。
ベルたちに合わせて、座り心地の良さそうな二人掛けのソファを手前に一つ、そして机を挟むようにして二つ設置されていた。おそらく奥側がベルたち用なのだろう。ロセウスたちの席が用意されていないのは、いつもロセウスたちがベルの背後へ立っているからだ。もしロセウスたちの分も用意してほしいと口にすればすぐに設置されることだろう。
「お待ちしておりました、ベル様。エヴィック様、エリオット様方も、ご足労を感謝致します」
ドアのすぐ近くに立って待っていたエドアルドが頭を下げる。隣に立っていたラシードも同じように深く頭を下げた。
すでにラヴィックたちが、ナツゥーレにあるベルの家へ訪ねに来ていたことが噂で広まっていたのだろう。家から王城まで向かう道中、少しでも顔を見ようと大勢の人たちが集まっていた。さすがに足早で駆けていくのは気が引けるので、先頭を走るロセウスに少しだけ速度を落としてもらう。
ベルが集まった人たちへ手を振るように、ラヴィックたちも慣れた様子で手を振っていた。歓声はベルが目覚めた時と同じかそれ以上だった。それもそうだろう。基本的に輝人が三人も集まることは滅多にないのだから。それに他国へ行かなければ、自国の輝人以外見かけることもそうはない。
ベルが眠っている間にエヴィックたちが何度か顔を見せに来たとは言うが、それはお忍びでの話。眠っている姿を見て、すぐに帰って行ったという。だから街の人は誰も来たことに気づいたものはいなかったらしい。
街を抜ければ、王都へ向かう道中は家が建っていないため、ベルたちを見ようとやってくる人たちはさすがにいなかった。走る速度を上げ、話しやすいようアーテルとアルブスに横に並んでもらい、今後のことを話した。
「実はさ、皆にお願いがあって」
「お願い? どんなことだ?」
話を促すエリオットに頷き、建国祭に参加してもらえないかとお願いをした。
「ああ、そういえば、ナツゥーレの建国祭はちょうどこの時期だったな」
「そうなの。四日後から三日間王都で行われるんだけど、そこでちょっとした盛り上げ役を皆でしたいと思っててさ。最初は二人が訪ねてくるってなった時、パーティや別で祭りをってなったんだけど、ちょっと大げさな事は嫌かなって。でも歓迎しないのも、国としては引き下がれないでしょう? だから建国祭に出ることで、歓迎されましたよーアピールをしようかと思って……どうかな?」
ちょうど開催される建国祭に出てしまえば、エドアルドも大した準備をしなくてもいいし、ベルたちも気構えなくて済む。人前に出るとしてもベルが考えていたような演出や、夜の食事くらいだろう。
とはいえ、エリオットたちの誰かが嫌だと言えば、無理に押しつけるわけにはいかない。勝手に参加表明をした手前断りにくいが、嫌だと言うのであれば断る気ではある。
「私は構わないぞ」
「俺も大丈夫だぜ。かたっ苦しい事より、そっちの方が楽しそうだしな」
案の定、ベルの考えていた通りの返事が返ってきてほっと胸を撫で下ろす。
「トトーとコーディリアも大丈夫?」
「うん、僕も賛成。その方が何かと都合はいいだろうしね」
「私も問題ないわ。むしろ皆で盛り上げるというのは今までやったことがないから、少しワクワクするわね。それでこういうのがしたいっていう案はありますの?」
それぞれの反応は思っていたよりもよく、自身の考えを四人へ話した。
建国祭で行う演出に、道中かなり盛り上がり、いつの間にか王都へとついていた。初めて王都へ来たときと同じく、検問所を並ばずフリーパス状態で中へと通される。街よりもさらに多くの人で賑わっていたため、ベルたちが揃ってやってきたことが広まると、あっという間に人が押し寄せてきた。街でしたように、笑顔で手を振りながら王城まで向かう。王城への入城も検問所と同じくフリーパス状態で通された。
ロセウス、アーテル、アルブスの三匹には人化をしてもらい、合計八人という大所帯で国王の元へ向かった。
案内をしてくれる男性は、初めてベルが王城へ足を運んだ時と同じ男性だった。しかし今回は輝人が三人、そしてその召喚獣が五人もいるとあってか、その背中からは緊張感が漂っていた。それでも決して顔には出さないところは、さすがとしか言いようがない。もしベルが男性の立場だとしたら、緊張で手足を震えさせ、ロボットのような歩き方をしていたであろう。
「どうぞ、こちらへお入りください」
通された部屋はいつもとは違う、さらに拾い部屋だった。
人数も人数だからなのだろう。
部屋の中は、華美ではあるが下品ではない調度品が幾つも飾られていて、来客者と歓談するために、ソファが設置されていた。予めベルが訪ねると言っていたからなのだろう。
ベルたちに合わせて、座り心地の良さそうな二人掛けのソファを手前に一つ、そして机を挟むようにして二つ設置されていた。おそらく奥側がベルたち用なのだろう。ロセウスたちの席が用意されていないのは、いつもロセウスたちがベルの背後へ立っているからだ。もしロセウスたちの分も用意してほしいと口にすればすぐに設置されることだろう。
「お待ちしておりました、ベル様。エヴィック様、エリオット様方も、ご足労を感謝致します」
ドアのすぐ近くに立って待っていたエドアルドが頭を下げる。隣に立っていたラシードも同じように深く頭を下げた。
0
お気に入りに追加
672
あなたにおすすめの小説
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
【完結】エルモアの使者~突然死したアラフォー女子が異世界転生したらハーフエルフの王女になってました~
月城 亜希人
ファンタジー
やりたいことを我慢して質素に暮らしてきたアラフォー地味女ミタラシ・アンコが、理不尽な理由で神に命を奪われ地球から追放される。新たに受けた生は惑星エルモアにある小国ガーランディアの第二子となるハーフエルフの王女ノイン・ガーランディア。アンコは死産する予定だった王女に乗り移る形で転生を果たす。またその際、惑星エルモアのクピドから魔物との意思疎通が可能になるなどの幾つかのギフトを授かる。ところが、死産する予定であった為に魔力を持たず、第一子である腹違いの兄ルイン・ガーランディアが魔族の先祖返りとして第一王妃共々追放されていたことで、自身もまた不吉な忌み子として扱われていた。それでも献身的に世話をしてくれる使用人のロディとアリーシャがいた為、三歳までは平穏に過ごしてきたのだが、その二人も実はノインがギフトを用いたら始末するようにと王妃ルリアナから命じられていた暗殺者だった。ノインはエルモアの導きでその事実を知り、またエルモアの力添えで静寂の森へと転移し危機を脱する。その森で帝国の第一皇子ドルモアに命を狙われている第七皇子ルシウスと出会い、その危機を救う。ノインとルシウスはしばらく森で過ごし、魔物を仲間にしながら平穏に過ごすも、買い物に出た町でロディとアリーシャに遭遇する。死を覚悟するノインだったが、二人は既に非情なルリアナを見限っており、ノインの父であるノルギス王に忠誠を誓っていたことを明かす。誤解が解けたノイン一行はガーランディア王国に帰還することとなる。その同時期に帝国では第一皇子ドルモアが離反、また第六皇子ゲオルグが皇帝を弑逆、皇位を簒奪する。ドルモアはルリアナと共に新たな国を興し、ゲオルグと結託。二帝国同盟を作り戦争を起こす。これに対しノルギスは隣国と結び二王国同盟を作り対抗する。ドルモアは幼少期に拾った星の欠片に宿る外界の徒の導きに従い惑星エルモアを乗っ取ろうと目論んでいた。十数年の戦いを経て、成長したノイン一行は二帝国同盟を倒すことに成功するも、空から外界の徒の本体である星を食らう星プラネットイーターが降ってくる。惑星エルモアの危機に、ノインがこれまで仲間にした魔物たちが自らを犠牲にプラネットイーターに立ち向かい、惑星エルモアは守られ世界に平和が訪れる。
※直接的な表現は避けていますが、残酷、暴力、性犯罪描写が含まれます。
それらを推奨するものではありません。
この作品はカクヨム、なろうでも掲載しています。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
私のバラ色ではない人生
野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。
だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。
そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。
ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。
だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、
既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。
ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。
私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。
まゆみ。
ファンタジー
今回は公爵令嬢に転生ですか。あ、でも子沢山の末っ子らしい。
ま、チートスキルがあるわけでもないし、普通の人生ですよって…え?ちょっと待って?番ですか?聖女ですか?花?なにそれ?……いやいやいや、記憶を『忘れない』で転生を繰り返してるだけの何の取り柄も無い私に、無理難題吹っかけないでくださいよ?
『忘れない』けど、思い出せない、このポンコツの私にどうしろと?
──3歳から始まる異世界見聞録。
龍にエルフに獣人に……その他もろもろ世界での目標は、成人まで生き延びる事。
出来れば長生きしたいんです。
******
3歳児から始るので、最初は恋愛的なものはありません。
70話くらいからちょこちょこと、それっぽくなる……と良いな。
表紙のキャラも70話以降での登場人物となります。
******
「R15」「残酷な描写あり」は保険です。
異世界→現代→異世界(今ココ)と転生してます。
小説家になろう。カクヨム。にも掲載しております。
挿絵というほどのものでは無いのですが、キャラのラフ画をいくつか載せていきたいと思っています。
【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。
そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。
悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。
「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」
こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。
新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!?
⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎
マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 〜強面、筋骨隆々、とても強い。 でもとっても優しい男が異世界でのんびり暮らすお話〜
かむら
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞にて、ジョブ・スキル賞受賞しました!】
身長190センチ、筋骨隆々、彫りの深い強面という見た目をした男、舘野秀治(たてのしゅうじ)は、ある日、目を覚ますと、見知らぬ土地に降り立っていた。
そこは魔物や魔法が存在している異世界で、元の世界に帰る方法も分からず、行く当ても無い秀治は、偶然出会った者達に勧められ、ある冒険者ギルドで働くことになった。
これはそんな秀治と仲間達による、のんびりほのぼのとした異世界生活のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる