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第二章 血にまみれた赤ずきん

9.カナタの能力

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まあ、そんな感じで、三人でトコトコと歩いて行くと何かに囲まれている気配がした。
「来たわね……。」
「ああ。」
(え……なに?なんかやばいやつでも来たの?)
焦っていると、木の後ろから飛び出してきたのは……。
「え?動物?」
なんと沢山の動物がカナタさんを囲んでいた。カナタさんもしゃがみ込んで動物たちの毛をわしゃわしゃしている。
「よ……良かったぁ~。」
安心で思わず、しゃがみ込んでしまう。なんか敵かと思った。
そんな私を見てカリナさんがクスッと笑う。カナタさんは……動物に夢中だった。
「初めて見たら、びっくりするだろ。」
そうカリナさんが言った。私はこくんと頷く。正直言って、とてもびっくりしたのだ。
「カナタさんは……動物に……好かれやすい、んですか?」
「好かれやすいというか……あれはもう能力だね、うん。『異常なレベルで動物に好かれる能力』。」
(能力……。確かに動物がたくさん出てくる童話だと便利だなぁ……。)
「生まれつきですか?」
動物たちとじゃれているカナタさんの傍にしゃがみ込んでそう聞く。よく見たら、私の猫も紛れ込んでじゃれていた。
「……名前決めた?」
「え?」
唐突に聞かれた質問にびっくりしてしまい、つい声が裏返ってしまった。カナタさんは笑った。
「この子の名前。」
この子……ああ、猫のことか。
「うーん……じゃあ、レレで。」
小さいときに見ていた本の主人公の名前だった。
家族にとても愛された女の子だった。
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