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第5章 カラニペア
62. クディの花
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ガダニーニの宿に泊まり一夜が明ける。フィーネはゴロンと寝返りをうつと……モッフモフの何かが顔に触れる。そのふわふわで癒やされるフィーネ♡
(あ~モッフモフの抱きまくら……これ好き♡……)
ふわふわの何かをキュッとそばに寄せて抱きしめながら寝ぼけているとすぐそばからあわてた声がする。
「フィっ!……フィーネっくすぐったいにゃ! 起きるのにゃ!」
「へっ……ササラァ?」
パチッ……
目をパッと開くと恥ずかしがっているササラが目の前にいた。ササラのしっぽをギュッと抱きしめている自分にハッと気づいたフィーネはあわてて手を放す。
「あっ……(汗)ササラ……ごめん! 気持ちよくてつい……(笑)」
しっぽをゆらゆらさせながらササラは照れていたのだが……隣でその姿を見たシオンが笑っている。
「大胆に抱きしめてましたねフィーネ(笑)そんなことが出来るのはフィーネくらいですよ?」
獣人達の耳やしっぽは急所になるため、普段触ることなど絶対にできないという。少しほんわかした雰囲気が漂う中、一晩過ぎササラの様子を見ていたヴァルがベッドにポスンと降りたちササラに話しかける。
〘ササラ……昨夜は危険を承知でここまできたのだろう? 何かフィーネに……用があるのではないのか?〙
「………にゃ!……それは……」
そう……昨夜遅くに訪ねてきたササラがフィーネに会いたいだけではないと言うことをヴァルが悟っていた。ササラはフィーネとヴァルの前にちょこんと座り話し出す。
「フィーネ!龍神様! ササラと一緒に……『クディの花』採りに行くの手伝ってほしいにゃ!」
〘クディの花……〙
「クディの花?ってどんな花なの?」
聞いたことのない花の名前だ。ササラがいうクディの花とは一体……
「その花は採取すると何かあるの? ササラ自身がほしいの?」
「違うのにゃ。クディの花は朝露を運ぶ花なのにゃ! クディの花は清めの器にゃ。ササラは朝露がほしいのにゃ。獣人大好きにゃのにゃ~」
ササラによるとクディの花と呼ばれる花は朝露を運ぶための器の花らしく道具でもあり、それで採取した朝露はとても獣人達が好きなものらしい。
「クディの花で採取した朝露を龍神様が祝福してくれたら……朝露が強力な結界になるにゃ! それで夕闇亭がさらに安全になるにゃ!」
どうやらその朝露を採ってきてヴァルが祝福し、夕闇亭周辺でまくと強力な結界を張れるらしく、獣人達の身の安全確保できるようだ。だが……シュンとしているのはササラだ。
「急にどうしたのササラ?元気ないけど……」
「クディの花は……クディリッツダンジョンにしか咲かない花にゃ……魔物が多くてなかなか奥深くまでササラは行けないのにゃ」
「ダンジョンがこの近くにあるのか?」
「そうにゃ。フィーネは強いニオイがするにゃ! ササラに協力してダンジョンに行くにゃ⁇」
話を聞いている途中から、ふとシオンがフィーネに目を向けるとフィーネはキラキラとした眼差しに変わり、期待に胸を膨らませている。ヴァルはなぜキラキラしているか察していてヤレヤレ……とため息をつきながらフィーネに忠告する。
〘ヤレヤレ……言っておくがフィーネ……ダンジョンは大森林と比べものにならない場所だ……魔物もケタ外れに強い……〙
「えっ!ダンジョンってそんなに危険な場所なの?洞窟みたいなところ探検するんでしょ?初めて聞く場所だからなんだか興味しかなくてっ(汗)行ってみちゃダメ?」
〘……まぁ今回はグランやアルヴィスもシオンもいる……さほど危険はないだろうが……〙
ヴァルもこのメンバーならまぁ許可しよう……とした瞬間!
バッ!
ギュウゥ……
「ヴァルありがとーっ大好き!」
フィーネは嬉しさのあまりヴァルをギュウウッ♡と抱きしめている。
〘ぐっ! ……フィーネっ……苦しいッ!!〙
胸に顔を挟まれてもがくヴァルをパッと離す。パタパタと飛びササラの頭にちょこんと乗るヴァル。
〘ササラ……ジレットにはちゃんと報告しておけ……そなたらは念話ができるであろう?……〙
「わかったのにゃ!龍神様のいうとおりにするにゃ。ジレットには話ししておくのにゃ」
「ねぇヴァル念話って?」
フィーネとシオンが首を傾げている。ササラがわかっていない二人に説明してあげた。
「獣人は集中すると獣人同士伝えたい相手に念を込めて離れていても会話ができるのにゃ。魔力に合わせて遠くの相手でも一定距離ならば会話できるにゃ。人間には使えない特技にゃ」
「獣人ってそんな事もできるとは……やはり人間とは違うんだな……」
獣人は離れていても会話ができるという。携帯や道具なしで会話ができるなんて羨ましい。魔法より優れてるものがあるのね……つぶやくフィーネにササラが首を傾げる。
「便利ね!獣人ってすごいじゃない~羨ましいなぁ~」
「にゃにを言ってるにゃ? フィーネは獣人にゃ?念話くらいすぐにでも使えるにゃ」
「………あっ!……そっかササラは……」
ササラはフィーネが獣人だと思っている。
あぁ……ササラは誤解してるんだったとフィーネは事実を話そうとしようとすると、ヴァルとフィーネはその瞬間から念話を交わすのだった。
ヒィンっ……
ピクッ……
〘(フィーネ……今からの会話は声に出すなよ……)〙
(ん!……急に念話ってどうしたの?ヴァル?)
〘(今……フィーネはササラに素のフィーネを見せようとしているな?……)〙
(えっ?そうだけど……だめなの?)
〘(……まだササラには素の姿を見せるな……)〙
(えっ……サラディナーサ解かずにこのままってこと?)
〘(あぁ……外から何かが来る……やはり今はフィーネを……召喚士とは周りには悟られたくない……)〙
(……良くないものがいるのね……ヴァルがいうならわかったわ言うのをやめとくね……)
ヴァルが気にする何かが外にいるようだ。精霊纏いは解除せずいることに。
とりあえずまずは朝ごはん!それに別部屋にいるササラを知らない仲間にササラを紹介しなくては!
立ち上がったフィーネはササラとシオンを連れて食堂部屋に向かうことにした。
「ササラ! 私の仲間を紹介するわ。朝ごはん食べながらお話しよう」
そう言いながらササラを食堂用の借りた部屋に連れて行くとすでに美味しそうなニオイが立ち込めていた。すごく鼻をくすぐるいい香りに、わぁぁとササラがしっぽをふっているとシオンがクスッと笑い席に座ってもらう。
「アルヴィス! グランおはよう」
「おはようフィーネ。食事の準備はできてるぞ」
元気なフィーネの声にアルヴィスもグランも反応し微笑む。事情を説明し食卓に一つ席を増やしてササラを紹介する。
そして今日はササラの依頼でクディの花を採りにダンジョンに行きたいと話すと皆が意外に乗り気だったのが驚きだった。
「久しぶりのダンジョンだ。まぁいろいろと心配事はあるが……」
「アルヴィスはダンジョンに行ったことがあるの?」
「あぁ……ダンジョンは入った瞬間、変わるからなぁ……」
「変わる? 何が変わるの?」
ダンジョンが入った瞬間に変わるとは……何を言っているの? とはてな顔のフィーネに説明してあげることにした。
「ダンジョンってのは気まぐれでな、今この瞬間入るのと少し遅れて入るのでは道筋がまったく変わるんだよ。行き着く先のゴールは変わらないんだが……コロコロと難易度が変わる魔窟なんだよ」
(へぇ……私がいた世界のゲームの中では決まった洞窟みたいな感じだったのにそれではなくて中はランダムなのか……)
ふむと難しい顔でフィーネが思いを巡らせて考えているとアルヴィスにクシャっと頭を撫でられる。
「へっ?」
「まぁそんなに難しい顔をするな……このメンバーだ。ある程度は大丈夫だと思うが危険とみなしたらすぐ引き返す。これはダンジョンの鉄則だからな!」
「はっ………はぁい……」
ドンドン進んでいきそうなフィーネに忠告する。周りからもズズいっと約束を迫られるフィーネは……はぁいっと返事をしアルヴィスが作ってくれた食事をとりすます。装備を整え、必要な道具を揃えた後に港町の外へ出ようとすると何やら複数後ろからついてくる足音が聞こえる。
ザッ……ザッ……
ザッ………ザッ………
距離を取りながらついてくる何者かが気になってしょうがないなぁと思っていたら纏っているサラディナーサから提案される。
〘フィーネ……ここは私でしょ? 使ってよ私の力を!〙
「!そうね……ふふふっここはサラディの力を発揮させてもらうわ」
フィーネはサラディナーサの提案になるほど確かに!と納得し提案にのることにした!
ヒィンッ……
「封印と微睡みの精霊サラディナーサ……私達を彼の者から隠せ!」
ブワッッ……
フィーネはサラディナーサの魔法を使い、近づく何者かから姿が見えない状態にさせる。そのすきに急ぎダンジョン入口へと駆けて抜けていく!どうやら難なく追手をやり過ごすことに成功したようだ。
ダンジョン自体はガダニーニからそう遠くない場所にあるため入り口まではすぐそこだ。走りながら確認をしていく。
「なぁササラ。ちなみにクディの花とやらはどんな花なんだ?」
グランがササラに説明させる。目的を達成するためには共有は大切なことだ。
「クディの花は、紫とピンクの花弁が特徴で少し大きな花にゃ。花は大きいからわかりやすくそして群生している場所には必ず清らかな滝や水辺があるにゃ」
「まずは水辺に行けばいいのか?」
「違うにゃ。今回は朝露がほしいのにゃ。夜明けを待って花を摘み、水辺の水で摘んだクディの花を浸けて清めて、そこに群生している花の朝露を器に集めてくるのが今回の依頼にゃ」
そこそこの大きさであると予測されるクディの花。花を摘んで花自身を清めてから朝露を集めることを共有する。
手順を間違うわけにいはいかない。そう何度も行ける場所ではないからだ。歩みを進めそしてダンジョンを目の前にすると、空間が歪み洞窟のようなものが現れる。はじめて見るダンジョンに目を奪われるフィーネ。
「ダンジョンって風貌は洞窟なのね……」
「ダンジョンも洞窟だけとは限らないんだぞ?塔なんか建物の場合、洞窟を抜けたら平原や山岳などもあるんだからな」
「とりあえず……このダンジョンへの入り方はそのまま入口を突っきるだけだ。入口ではぐれてしまうと最終地点まで行かないと合流できないから気をつけるんだぞ!」
ダンジョンをひとかたまりになり一緒に入ろうとすると突然バチバチとする音‼ どうやらフィーネの何かの魔法に反応しているようだ!
「フィーネ?」
「えっ……やばっ(汗)」
グラグラッ……
バチバチとする音と共にダンジョンに弾かれてしまったフィーネは数歩後ろに皆より下がる。何かに弾かれて少しみんなと離れてしまったのだ。まさか、まさか私がはぐれちゃうの?
「えっ……?」
「おいっ!……フィー………」
シュンッ……フッ……
なんと! フィーネを残してみんなが先に行ってしまう大ハプニングだ。
「うそ!……うそでしょ? えっこれ今から入っても……最終まで行かなきゃ皆と出会えないってやつじゃない!」
ビックリしているフィーネに肩にいたヴァルが険しい顔をしながらつぶやく。
〘フィーネの魔力に反応するとは……このダンジョン……先に行ったササラ達は大丈夫なのか?〙
「えっなんでササラ達の心配なの?」
疑問のフィーネにわかりやすくヴァルが説明してやる。
〘……ササラは今最新のフィーネの魔力入りの髪飾りをつけているだろう?……それにアルヴィスもグランもフィーネの魔力が入ったピン持ちだ……何事も無ければいいがな……〙
確かに……入口で自分の魔力に反応するのであれば……ササラ達にも何か被害があるかもしれない!
「マズイわね……ヴァル急いで追いかけよう! なんだか嫌な予感がするわ。できるだけ早く合流できるよう急ごう!」
そう言いながらヴァルを掴んでダンジョンの入り口をくぐる‼
ダンジョンの奥では一体、何が待ち受けているのだろうか……
(あ~モッフモフの抱きまくら……これ好き♡……)
ふわふわの何かをキュッとそばに寄せて抱きしめながら寝ぼけているとすぐそばからあわてた声がする。
「フィっ!……フィーネっくすぐったいにゃ! 起きるのにゃ!」
「へっ……ササラァ?」
パチッ……
目をパッと開くと恥ずかしがっているササラが目の前にいた。ササラのしっぽをギュッと抱きしめている自分にハッと気づいたフィーネはあわてて手を放す。
「あっ……(汗)ササラ……ごめん! 気持ちよくてつい……(笑)」
しっぽをゆらゆらさせながらササラは照れていたのだが……隣でその姿を見たシオンが笑っている。
「大胆に抱きしめてましたねフィーネ(笑)そんなことが出来るのはフィーネくらいですよ?」
獣人達の耳やしっぽは急所になるため、普段触ることなど絶対にできないという。少しほんわかした雰囲気が漂う中、一晩過ぎササラの様子を見ていたヴァルがベッドにポスンと降りたちササラに話しかける。
〘ササラ……昨夜は危険を承知でここまできたのだろう? 何かフィーネに……用があるのではないのか?〙
「………にゃ!……それは……」
そう……昨夜遅くに訪ねてきたササラがフィーネに会いたいだけではないと言うことをヴァルが悟っていた。ササラはフィーネとヴァルの前にちょこんと座り話し出す。
「フィーネ!龍神様! ササラと一緒に……『クディの花』採りに行くの手伝ってほしいにゃ!」
〘クディの花……〙
「クディの花?ってどんな花なの?」
聞いたことのない花の名前だ。ササラがいうクディの花とは一体……
「その花は採取すると何かあるの? ササラ自身がほしいの?」
「違うのにゃ。クディの花は朝露を運ぶ花なのにゃ! クディの花は清めの器にゃ。ササラは朝露がほしいのにゃ。獣人大好きにゃのにゃ~」
ササラによるとクディの花と呼ばれる花は朝露を運ぶための器の花らしく道具でもあり、それで採取した朝露はとても獣人達が好きなものらしい。
「クディの花で採取した朝露を龍神様が祝福してくれたら……朝露が強力な結界になるにゃ! それで夕闇亭がさらに安全になるにゃ!」
どうやらその朝露を採ってきてヴァルが祝福し、夕闇亭周辺でまくと強力な結界を張れるらしく、獣人達の身の安全確保できるようだ。だが……シュンとしているのはササラだ。
「急にどうしたのササラ?元気ないけど……」
「クディの花は……クディリッツダンジョンにしか咲かない花にゃ……魔物が多くてなかなか奥深くまでササラは行けないのにゃ」
「ダンジョンがこの近くにあるのか?」
「そうにゃ。フィーネは強いニオイがするにゃ! ササラに協力してダンジョンに行くにゃ⁇」
話を聞いている途中から、ふとシオンがフィーネに目を向けるとフィーネはキラキラとした眼差しに変わり、期待に胸を膨らませている。ヴァルはなぜキラキラしているか察していてヤレヤレ……とため息をつきながらフィーネに忠告する。
〘ヤレヤレ……言っておくがフィーネ……ダンジョンは大森林と比べものにならない場所だ……魔物もケタ外れに強い……〙
「えっ!ダンジョンってそんなに危険な場所なの?洞窟みたいなところ探検するんでしょ?初めて聞く場所だからなんだか興味しかなくてっ(汗)行ってみちゃダメ?」
〘……まぁ今回はグランやアルヴィスもシオンもいる……さほど危険はないだろうが……〙
ヴァルもこのメンバーならまぁ許可しよう……とした瞬間!
バッ!
ギュウゥ……
「ヴァルありがとーっ大好き!」
フィーネは嬉しさのあまりヴァルをギュウウッ♡と抱きしめている。
〘ぐっ! ……フィーネっ……苦しいッ!!〙
胸に顔を挟まれてもがくヴァルをパッと離す。パタパタと飛びササラの頭にちょこんと乗るヴァル。
〘ササラ……ジレットにはちゃんと報告しておけ……そなたらは念話ができるであろう?……〙
「わかったのにゃ!龍神様のいうとおりにするにゃ。ジレットには話ししておくのにゃ」
「ねぇヴァル念話って?」
フィーネとシオンが首を傾げている。ササラがわかっていない二人に説明してあげた。
「獣人は集中すると獣人同士伝えたい相手に念を込めて離れていても会話ができるのにゃ。魔力に合わせて遠くの相手でも一定距離ならば会話できるにゃ。人間には使えない特技にゃ」
「獣人ってそんな事もできるとは……やはり人間とは違うんだな……」
獣人は離れていても会話ができるという。携帯や道具なしで会話ができるなんて羨ましい。魔法より優れてるものがあるのね……つぶやくフィーネにササラが首を傾げる。
「便利ね!獣人ってすごいじゃない~羨ましいなぁ~」
「にゃにを言ってるにゃ? フィーネは獣人にゃ?念話くらいすぐにでも使えるにゃ」
「………あっ!……そっかササラは……」
ササラはフィーネが獣人だと思っている。
あぁ……ササラは誤解してるんだったとフィーネは事実を話そうとしようとすると、ヴァルとフィーネはその瞬間から念話を交わすのだった。
ヒィンっ……
ピクッ……
〘(フィーネ……今からの会話は声に出すなよ……)〙
(ん!……急に念話ってどうしたの?ヴァル?)
〘(今……フィーネはササラに素のフィーネを見せようとしているな?……)〙
(えっ?そうだけど……だめなの?)
〘(……まだササラには素の姿を見せるな……)〙
(えっ……サラディナーサ解かずにこのままってこと?)
〘(あぁ……外から何かが来る……やはり今はフィーネを……召喚士とは周りには悟られたくない……)〙
(……良くないものがいるのね……ヴァルがいうならわかったわ言うのをやめとくね……)
ヴァルが気にする何かが外にいるようだ。精霊纏いは解除せずいることに。
とりあえずまずは朝ごはん!それに別部屋にいるササラを知らない仲間にササラを紹介しなくては!
立ち上がったフィーネはササラとシオンを連れて食堂部屋に向かうことにした。
「ササラ! 私の仲間を紹介するわ。朝ごはん食べながらお話しよう」
そう言いながらササラを食堂用の借りた部屋に連れて行くとすでに美味しそうなニオイが立ち込めていた。すごく鼻をくすぐるいい香りに、わぁぁとササラがしっぽをふっているとシオンがクスッと笑い席に座ってもらう。
「アルヴィス! グランおはよう」
「おはようフィーネ。食事の準備はできてるぞ」
元気なフィーネの声にアルヴィスもグランも反応し微笑む。事情を説明し食卓に一つ席を増やしてササラを紹介する。
そして今日はササラの依頼でクディの花を採りにダンジョンに行きたいと話すと皆が意外に乗り気だったのが驚きだった。
「久しぶりのダンジョンだ。まぁいろいろと心配事はあるが……」
「アルヴィスはダンジョンに行ったことがあるの?」
「あぁ……ダンジョンは入った瞬間、変わるからなぁ……」
「変わる? 何が変わるの?」
ダンジョンが入った瞬間に変わるとは……何を言っているの? とはてな顔のフィーネに説明してあげることにした。
「ダンジョンってのは気まぐれでな、今この瞬間入るのと少し遅れて入るのでは道筋がまったく変わるんだよ。行き着く先のゴールは変わらないんだが……コロコロと難易度が変わる魔窟なんだよ」
(へぇ……私がいた世界のゲームの中では決まった洞窟みたいな感じだったのにそれではなくて中はランダムなのか……)
ふむと難しい顔でフィーネが思いを巡らせて考えているとアルヴィスにクシャっと頭を撫でられる。
「へっ?」
「まぁそんなに難しい顔をするな……このメンバーだ。ある程度は大丈夫だと思うが危険とみなしたらすぐ引き返す。これはダンジョンの鉄則だからな!」
「はっ………はぁい……」
ドンドン進んでいきそうなフィーネに忠告する。周りからもズズいっと約束を迫られるフィーネは……はぁいっと返事をしアルヴィスが作ってくれた食事をとりすます。装備を整え、必要な道具を揃えた後に港町の外へ出ようとすると何やら複数後ろからついてくる足音が聞こえる。
ザッ……ザッ……
ザッ………ザッ………
距離を取りながらついてくる何者かが気になってしょうがないなぁと思っていたら纏っているサラディナーサから提案される。
〘フィーネ……ここは私でしょ? 使ってよ私の力を!〙
「!そうね……ふふふっここはサラディの力を発揮させてもらうわ」
フィーネはサラディナーサの提案になるほど確かに!と納得し提案にのることにした!
ヒィンッ……
「封印と微睡みの精霊サラディナーサ……私達を彼の者から隠せ!」
ブワッッ……
フィーネはサラディナーサの魔法を使い、近づく何者かから姿が見えない状態にさせる。そのすきに急ぎダンジョン入口へと駆けて抜けていく!どうやら難なく追手をやり過ごすことに成功したようだ。
ダンジョン自体はガダニーニからそう遠くない場所にあるため入り口まではすぐそこだ。走りながら確認をしていく。
「なぁササラ。ちなみにクディの花とやらはどんな花なんだ?」
グランがササラに説明させる。目的を達成するためには共有は大切なことだ。
「クディの花は、紫とピンクの花弁が特徴で少し大きな花にゃ。花は大きいからわかりやすくそして群生している場所には必ず清らかな滝や水辺があるにゃ」
「まずは水辺に行けばいいのか?」
「違うにゃ。今回は朝露がほしいのにゃ。夜明けを待って花を摘み、水辺の水で摘んだクディの花を浸けて清めて、そこに群生している花の朝露を器に集めてくるのが今回の依頼にゃ」
そこそこの大きさであると予測されるクディの花。花を摘んで花自身を清めてから朝露を集めることを共有する。
手順を間違うわけにいはいかない。そう何度も行ける場所ではないからだ。歩みを進めそしてダンジョンを目の前にすると、空間が歪み洞窟のようなものが現れる。はじめて見るダンジョンに目を奪われるフィーネ。
「ダンジョンって風貌は洞窟なのね……」
「ダンジョンも洞窟だけとは限らないんだぞ?塔なんか建物の場合、洞窟を抜けたら平原や山岳などもあるんだからな」
「とりあえず……このダンジョンへの入り方はそのまま入口を突っきるだけだ。入口ではぐれてしまうと最終地点まで行かないと合流できないから気をつけるんだぞ!」
ダンジョンをひとかたまりになり一緒に入ろうとすると突然バチバチとする音‼ どうやらフィーネの何かの魔法に反応しているようだ!
「フィーネ?」
「えっ……やばっ(汗)」
グラグラッ……
バチバチとする音と共にダンジョンに弾かれてしまったフィーネは数歩後ろに皆より下がる。何かに弾かれて少しみんなと離れてしまったのだ。まさか、まさか私がはぐれちゃうの?
「えっ……?」
「おいっ!……フィー………」
シュンッ……フッ……
なんと! フィーネを残してみんなが先に行ってしまう大ハプニングだ。
「うそ!……うそでしょ? えっこれ今から入っても……最終まで行かなきゃ皆と出会えないってやつじゃない!」
ビックリしているフィーネに肩にいたヴァルが険しい顔をしながらつぶやく。
〘フィーネの魔力に反応するとは……このダンジョン……先に行ったササラ達は大丈夫なのか?〙
「えっなんでササラ達の心配なの?」
疑問のフィーネにわかりやすくヴァルが説明してやる。
〘……ササラは今最新のフィーネの魔力入りの髪飾りをつけているだろう?……それにアルヴィスもグランもフィーネの魔力が入ったピン持ちだ……何事も無ければいいがな……〙
確かに……入口で自分の魔力に反応するのであれば……ササラ達にも何か被害があるかもしれない!
「マズイわね……ヴァル急いで追いかけよう! なんだか嫌な予感がするわ。できるだけ早く合流できるよう急ごう!」
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