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第3章 ニルヴィアの谷と嘆きの谷

30. 精霊の想いと嘆きの谷……

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プツン……パンッ!
 ティアの体から光が……ティアの体から膨大な魔力が一気に放たれその場で風が巻き上がる!
カァァァァ…… キィンッ!
ゴゴゴゴゴッ‼
【ヴアアアアアア‼】
【ダメっ!ダメよティア!】
 ティアが雄叫びをあげている! その姿を見たリースとサラディナーサがティアのしようとする事を止めにかかる! どうやらティアは獣人化しようとしているようだ。この里特有のスキルで、愛するアッシュの仇を討つためにティアは身命を投げ打って獣人化しようとしている!だがそこにはリースの悲痛な叫びがこだましていた!
【だめよっティア‼ あなたにそれは!】
 サラディナーサも止めに入るが間に合わない!
カッ‼
 光りに包まるれるティア。そして光の束が収まりティアを見ると……
【グルルルル! ガォォォォ!】
【あ……ああ……ティア……ティアアア!】
 獣と化し理性を失ったティア。その姿にリースは我を忘れて叫ぶ。里にいる精霊が変身すれば怒りがおさまれば元の姿に戻れる……が、混血児のティアはもう二度と元の姿に優しいティアに戻れない! 嘆き悲しむリース。亡骸のアッシュに獣と化したティア……その現実に嘆くリース。
【私が……私さえしっかりしていたら……こんな事には……】
 自分を追い詰めているリースだが!
バキッっ‼
キイイィィィ‼
 ティアの怒りはおさまらない! ゲインセイに向かってティアは魔法やヒヅメなどで闘いを挑んでいた。
【クッ! 大人しく喰われたらよいものを……お前達里の者を喰らいつくしバーティミアス帝国の贄にしてやろう!】
【⁉】
【バーティミアス帝国だと⁉】

バーティミアス帝国……
 それははるか昔から東の大国として君臨している大都市……この頃の帝国には精霊刈りに躍起になっている者がおり、精霊を取り込んでは自分の力に強制的にしている。精霊にとっては憎き人間の住まう土地だった。
 普通は契約をもとに使用できる魔法も、強制的に精霊を痛めつけ弱らせた隙に無理やりに消滅させる代わりに脅して契約を結ばせる人間がいるのだ。
 そしておぞましいかな……虐待の上にむりやり契約させられた精霊を殺し、むさぼり喰う。そして人間に力を奪われ死んでしまう……奴隷のような扱いに精霊達には恐れられていた。
 近年この息吹の里は人間と精霊の楽園と呼ばれ、精霊達の間では言い伝えられていた場所であった。平和でたくさんの精霊がいるが強力な結界があり、邪な侵入者を拒んでいると。
 餌がたくさんあるこの地にどうにか侵入できないかと……だから研究を重ね邪悪な者は自国民を、民を人間を激しく痛めつけ記憶喪失にした他人に、邪な人間を憑依させ結界をすり抜け、そして内側から壊し巣食う計画だったのだと……
【まさか!……人間が我らを喰うだと!】
 ワナワナとうち震えるリース。息吹の里が……私の民が……こんな人間の私欲のために苦しめられているだと⁉
【さて……このうっとおしい獣も飽きましたし、たくさん里には喰いごたえのある者が……】
バチチッバチッっ!
 ゲインセイは結界に包まれる。サラディナーサは結界を張ってみるが……すぐに解除されてしまう。
パンッ!
【こんなものでは私は止められませんよ……あなた達では話にならない……】
【ちっ……コイツは魔力の底がわからない! このままじゃみんなを守れない‼】
 と……戦闘中の滝に向かってくる人影が近寄る。それはバッシュと腕にいる幼いニルヴィだった。かなりの激しい音に心配になって家から出てきてしまったようだ。それを見たゲインセイはニンマリとしている。
【リース様っサラディナーサ様っ大丈夫ですか?】
【……なっ! 来るな!急ぎ家へ戻るんだ!】
【ほほぅ……コレは柔らかくてうまそうだ!】
 と、ふたりを狙うゲインセイ。激しい魔法や攻撃が二人を襲うが……リースとサラディナーサが全力で守っている。
パァァァ!
【くそっ……この子達だけは絶対に守ってやる!】
 リースとサラディナーサは必死に二人を魔法で守っていると……ティアがゲインセイに飛びかかり襲いスキをついてティアがゲインセイに噛みつきながら爪で背中から引き裂く!
ザシュッ!
【グルルル!】
【⁉】
【グアァァァ‼】
 魔法耐性のある人間に精霊の魔法は聞きにくいが物理は有効! 今の攻撃はゲインセイにはかなり有効な攻撃だった。
【くそっ! 忌々しい獣がっ‼】
 ティアの攻撃はかなりダメージを与えたようだ。ゲインセイ自身も魔法でしか戦闘がおこらないとたかをくくっていた為、物理による深手は想定外だった! ゲインセイはティアを狙うがリースがそれを邪魔をする。
【させないわ! わたしの子供達に……手出しはさせない!】
 激しい攻防!それを見つめるニルヴィ……と、ふいにニルヴィが荒ぶる獣を見つめながらつぶやいていた。
【……ママ……?】
【……⁉】
ピクッ!
 ニルヴィの呼び声に反応するティア! 夫アッシュを殺し、さらに弟や娘まで狙っているこの人間を絶対に許さない‼
【ウォォォォー】
 ティアが吠えると体中から光が溢れ出しゲインセイがその光に怯む。キラキラとした光はゲインセイを包み込みすべての魔力を奪っていく。
【なんだ……これは‼ 力が……抜けるだと!……】
 ゲインセイの魔力が抜けて、怯んだその瞬間をリースとサラディナーサは見逃さなかった!
シュッ!
【いまだリース‼捉えた!】
【隔絶と時空の精霊リースが命じる……ゲインセイ……リースの手でキサマを封印する!】
カカッ! ドンッ‼
 リースの声でゲインセイはサラディナーサの結界とともにキューブに固く封印される。だが……中からは恨みの声が漏れ出て聞こえてくる!
【くそっくそぉっ! 忌々しい精霊め……封印解除されたらお前達を真っ先に喰らってやる‼】
 封印されてなお恨みつらみを発する人間にリースは一喝する!
【黙れ!いつか……お前を倒すものが現れるまで私はお前を拒絶する!】
 そう言うと……ゲインセイは……静かに封印されていった。

 ニルヴィが獣に近寄る。毛を撫でながらニルヴィにはこの獣が誰なのかわかっているようだった。ニルヴィが獣のティアを抱きしめる。ティアはニルヴィをペロッと舐める。泣きながらニルヴィが母を恋しがりすがるその光景にバッシュは驚きを隠せない。
【マ……ママ……ママァ!】
【ニルヴィ! これが……姉さん⁉】
【すまないバッシュ……私の結界が……もっと私が早く気がついていれば……こんな悲劇は起こらなかったのに……】
 リースが二人に詫びる。一連の出来事を整理していくサラディナーサは、ゲインセイが言っていた言葉が引っかかっていた。
【なぁ……リース。恐らくこの場所はバーティミアスに……帝国に知られてしまったのではないのか? このままでは皆が危ないんじゃないか?】
 そう……一度侵入され手口も明らかだ……今のままでは新たなゲインセイが侵入してきてもおかしくない。リースはティアとニルヴィをじっと見つめる。リースはニルヴィの元に向かい膝をおりながら問いかけた。
【ニルヴィ……ママに……人間のママに逢いたいか?】
 優しい問いかけにニルヴィはコクンと頷く。
【ママ……うん……ママに逢ってママといたい。お兄ちゃんとまたみんなで暮らしたい……】
【⁉】
 ニルヴィは三つだ……父親は惨殺され母親は獣……この悲劇はなんとしても元に戻したい。そう決意した神妙な面持ちのリースがサラディナーサに頼む。
【サラディナーサ……頼みがある……私は人間が嫌いになった……が……やはり里の人間は好きで仕方がない……私はこの場を荒らされたくない】
【ああ……人間が嫌いになってもこのリースが作った里を……リースが大好きなのはわかっている】
 とリースは静かに覚悟を決めたようだ。
【私は……未来に託そうと思う……】
 そう言うとニルヴィとティアに近づきそっと二人を抱きしめる。
【二人共……私を許してくれ……】
【えっ?】
カッ!!
【⁉】
【リースまさか……】
 光った瞬間、ニルヴィとティアは跡形もなく消え去り……代わりに光る指輪が浮かんでいた。サラディナーサはリースの意図を察する。二人を指輪に封印したのだった。
【ああ……私は未来に託す……いつかこの子達を……この親子を……獣人化を解きそして解放してくれる者が現れるように……ティアを人に戻してくれる優しい人が現れるように願いを込めて……】
 指輪には真っ赤なルビーが光り輝いていた。
【これは『ニルヴィアの指輪』……中は刻を止めてあるわ……サラディナーサ……あなたにお願いがあるの……近隣で南にファブニールという国があるわ……あれはスレイプニールが治める国……あれは清く正しい精霊だからこれを渡して……いつかニルヴィとティアをを助けられる者が現れるように……渡してほしい】
 リースは覚悟を決めている。この時代では二人を救うことができない事を見定めて未来に託したのだ。そしてそれは別れの瞬間でもあったのだ。
【わかった……】
【そして……私は私自身でこの里を封印する……これ以上悲劇に見舞われないように……だが私の時空魔法で刻を止めても侵入者によっていつか壊されてしまうだろう……だからサラディナーサ……あなたに外から私ごと封印してもらいたい!】
【⁉ それじゃリースは……】
【封印するのよ!】
【‼】
 突然の提案にサラディナーサは戸惑う! ここを救うには刻をとめる必要がある。だが……
【それじゃ私がリースに逢えなくなる! それにいつ解放されるかなんてわからないわ! 永遠に解放されないかもしれない!】
 リースはにっこり笑いながらサラディナーサに告げる。
【いいのよ……私はこの愛した場所を守りたいの……いつかまた……あなたと笑って過ごせる里になるように……】
 リースの決意は固かった。人間が馬鹿なことさえしなければ精霊が……リースがこんな目に合わなくてすんだのに! 怒りがこみ上げるサラディナーサ‼それをみたリースが謝りながら魔法を唱えている。
【サラディナーサ……辛い役目をごめんね……でもあなたなら……私達を助けてくれる者を導いてくれると信じて‼】
カッ!
 リースから魔法陣が紡がれる!慌てるサラディナーサはリースにまだちゃんと別れが言えていない……
【! 待ってリース!待って……】
【……隔絶と時空の精霊リースがこの息吹の里の刻を止める……一切の刻を隔絶し……封印する!】
カカッ!!
 光とともに刻がとまる。リースは光となり……里全体を包み込んでいる。
【(きっとまた……笑い会えるように……)】
ヒィンッ……
 必死に涙をこらえながらサラディナーサは魔法陣を展開し魔力を紡ぐ。
【グスっ……封印と微睡みの精霊サラディナーサが命じるっ……里を封印し微睡みの森にて旅人を惑わし……この里をリースを守りたまえ……】
ゴゴゴゴゴッ‼
 里をどんどん森の木々が包み込み隠されていく。鬱蒼とした森が辺りを包み込み時空を歪めたのだった。
【リース……いつか……また逢うのよ! 私があなたを救うからあなたも里も諦めないで!私はあなたを絶対に諦めないわ‼】
 そう言い残しサラディナーサはリースに託された南のファブニールに向かう。聖なる精霊スレイプニールが治める国へ急ぐ。
 ファブニールに着きスレイプニールに会い、事情を話すとスレイプニールは驚いていたのだが……スレイプニールもまたこの頃国を蝕む何かと戦っていた。少し考えたスレイプニールはサラディナーサに提案する。
【我が契約主も何者かに……悪意のニンゲンに蝕まれている……だがこれを解決する者が……必ずいつか力になるはずだ!……ファブニール王家でこの『ニルヴィアの指輪』は代々紡いでいく……だからサラディナーサ……お前もリースを諦めるな!】
 スレイプニールの言葉に涙が溢れる。スレイプニールはサラディナーサの気持ちをくんでくれていた。互いに人間に苦しめられている状況に、手を差し伸べてくれている精霊仲間同士涙を拭い、
【スレイプニール……私は諦めないわ……里もリースも私は……私は里の森を守護しているから……あなたも邪な何かに解放される事を森で願っているわ……】
 そう言い残し森で静かに息吹の里を守りだす。
 微睡みの魔法により谷に風が吹き荒れ、風が不気味に笑うように聞こえる。禍々しい雰囲気の谷はかつて人間と精霊の楽園息吹の里と呼ばれていたが、やがて『嘆きの谷』と呼ばれていく事になる。
 そして代々ファブニールでは『ニルヴィアの指輪』が伝えられ、ファブニールでは『ニルヴィアの谷』と呼ばれるようになる……

ザアアアァ……
 ここでサラディナーサの記憶の世界から現実に一気に戻される三人。
「こんな……人間が精霊を苦しめるなんて……」
 絶句しているティレニアだがふいにティレニアがフィーネを見るとヴァルがフィーネを気遣っていた。
〘フィーネ……大丈夫か?〙
 フィーネの目には大粒の涙がたたえられて顔を……幾度も伝って流れ落ちている。この場所の至るところからリースと呼ばれた精霊に対してのあたたかな気持ちと無念に打ちひしがれる悲しみがストレートに召喚士であるフィーネの心に響く。そしてサラディナーサの想いも……。
〘私は……ニンゲンがキライだ! だが……あのスレイプニールが託したのだろう……その私が託したニルヴィアの指輪を持っているのだから……〙
 フィーネは握っていた指輪を見つめる。悲しい光をたたえる指輪……フィーネはサラディナーサに詫びながら涙が溢れるフィーネはサラディナーサをきゅっと抱きしめていた。
「人間がごめんね……サラディ……」
スンスンスン……
 サラディナーサは抱きしめてきたフィーネにつぶやく。
〘不思議な子ね……あなた……〙
 そのフィーネとサラディナーサの様子にヴァルが告げる。
〘サラディナーサ……フィーネは『召喚士』だ……精霊を裏切ることはない絶対にない……〙
『召喚士』……
 数千年前に滅びた伝説の……精霊を導き精霊の味方……その『召喚士』が目の前に現れたのだ。ヴァルの言葉に安堵するサラディナーサ……
〘あぁ……やっとリースの待ち望んだ者がやってきたのね……〙
 フィーネは今まで見た全ての現状の記憶を見たうえで考え……サラディナーサに意外な判断を下す。
「サラディ……この場所はもう少しだけまだ封印しておいてくれるかしら?」
〘⁉ えっ! フィーネはリースを助けてくれないの⁉〙
 サラディが驚いてフィーネに詰め寄るが首を横に降るフィーネ。フィーネはサラディに答えた。
「違うわ……今この場所を解放してしまうとまた悪意のあるものにそのまま狙われてしまうわ!長年守ってくれたこの場を危険に晒したくないの。 今のままじゃダメなのよ……だから私はこのまま悲劇の元凶であるバーティミアス帝国へ向かおうと思うの!」
〘⁉〙
 フィーネはバーティミアス帝国に向かうと言い出す。そう……それは意外な判断だった。
〘フィーネ……どうしてなのだ?〙
「ヴァル……今ここを解放しても向こうは侵略してくるだけでしょ?だったら元凶を……バーティミアス帝国に向かって何が起こっているのか、そして悲しみの現況を断ってくるわ! 二百年前とはいえ……今も精霊が殺されてたりなんてしたら……私は耐えれないから!」
 フィーネの決意に解放しないのではなく、悲しみ元凶を断ってくれるの言葉に……サラディは納得し頷く。
〘わかったわありがとう……今まで守り続けてきたもの……私はあなたが戻るまで……またここを守り続けるわ……〙
 フィーネの意見を聞き入れそして……フィーネを気遣うサラディナーサ。
〘でも……気をつけてねフィーネ……精霊を喰らう国だから何してくるかわからない……『召喚士』であることはどうか気づかれないように……〙
 そしてサラディはフィーネに『真っ青な髪の毛の一部』を渡す。
「これは……」
〘これは私の加護……あなたに分けるわ……何か力になれるといいのだけれど……〙
 サラディナーサの気持ちをありがたく受け取りバッグに納めてサラディナーサと分かれる。
「必ず戻るわサラディ! もう少しだけ……待っててね!」
 フィーネはサラディに約束すると、サラディナーサはふっとその場から消える……その瞬間……

ゴゴゴゴッ……
 フィーネの目の前の道は木々達に封鎖され、また闇夜の深い森へと変貌を遂げる。ヴァルに光照らしてもらい着た道を戻り、森を抜けるその道中ティレニアに聞かれる。
「フィーネ様、バーティミアスに行くのに一度戻りますか?」
「グランディールには帰らないわ。ただ……ファブニールに一度戻りましょう。スレイプニールに会いたいの……」
 そう告げるとフィーネは左手を天にかかげ魔法で移動する。

『ファブニール』

シュンッ……
「スレイプニール⁉」
 フィーネの部屋にたどり着くと部屋でスレイプニールが待ち構えていた。何かを悟っているように見える。
〘スレイプニール………〙
スリッ……
 今にも泣きそうな心優しき召喚士にすり寄るスレイプニール。
〘すまないなフィーネ……まずはゆっくり休め……明日そなたが知りたいことを私が話そう……〙
〘……助かるスレイプニール……今のフィーネには休息が必要だ……〙
 ヴァルもフィーネの心を心配していたようだ……
 今日はスレイプニールの指示でファブリルの手配もあり、ファブニールで過ごすことになる。
 悲しい里の出来事と精霊の悲しみ……未来に託した想い……いろんな思いを胸に眠りにつくフィーネだった。
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