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第1章 グランディール
10. 決着
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グエインが叫んだその瞬間、自分の姿にハッと気づくフィーネ!
ブワアアァ! キンッ‼
カシャンカシャンっ‼
二人の剣は何かに弾かれて……いやフィーネの魔法で弾かれて地面に落ちる。一瞬で二人の間に風が吹き抜け、弾き飛ばされた剣が地面に転がる現状。
「一体……何が起こった……んだ⁇」
何らかの力で自分の剣がグッと持っていかれた感覚に呆然としているグエインの目の前に、顔を真っ赤にしたフィーネが胸元をおさえプルプルとしていた。
さっきまでの戦いにご満悦の女性ではなく、なんとも可愛らしい幼い表情をみせるフィーネに戸惑う。
(なんだ? さっきまでの姫さんとは違うな……)
そう思っているとフィーネに意外な事を尋ねられる。
「ねえっ……この国の女性は、こういった胸が強調された服やドレスが主流で……みんなこんなドレスなんじゃないの?」
「はっ?」
急に服の……ドレスの話をし始めるフィーネに、グエインは拍子抜けだ。さっきまで殺気たっぷりで真剣を振り回してたんだぞ! 戦いに集中してたんじゃないのか?
(なんなんだこいつ……)
頭をポリポリとかきながら、とりあえず指を指しながら指摘してやることに。
「あのなぁ姫さん……このグランディールでそんな胸をバーンと強調して誘ってるような姫さんはいねぇよ。それにだな……くっきりしたボディーラインもないな! 大体は肌を…露出を控えたおとなしいデザインの淑女様ばかりだ」
「そんな嘘……嘘でしょ!」
驚きのあまり嘘だと声が出てしまう。ショックを受けているフィーネ。だがグエインは続けて口を開く。
「だが……」
言葉を発しながらフィーネをジーッと見るグエイン。下から上までじっくりフィーネを見た上で、
「姫さん……あんたのきれいな顔! それに華奢な体! 確かに……こんなたっぷりなはち切れそうな胸に、細い腰、引き裂いたドレスの合間から見えるふっくらした尻。すっとのびる細い脚も隠すのはもったいないかもな!姫さんはこれで正解なんじゃないのか?」
しみじみと上から下までフィーネを見るグエインに、さらに恥ずかしすぎて……ますます真っ赤になりたえきれなくなったフィーネは、
「ばかっ‼」
バチンッ‼
と、グエインの頬をひっぱたく。顔を真っ赤にしてどこかに隠れてしまいたいフィーネが、んんん……と目を回しながら悶ている。声に出せない恥ずかしさで悶ている姿が、また無性に騎士達には可愛らしく見える。
キュンっ
(なんだこのいきものは?)
グエインや騎士達は、なんだか妙に胸のあたりがソワソワする。こんな規格外な姫さんに出会ったことなどないぞ……と、まずはさておき、恥ずかしいと思っている体を隠してやらねばなぁ……そう思いながら、
「なぁ姫さん。これでもかけときな……そんな姿じゃ目のやり場に困る!」
グエインは自身のマントをフィーネに纏わせる。グランのマントよりゴツくてしっかりしているマントだ。
「その細さで、その度胸! 一戦交えて素人じゃない事はわかったから……」
観念したようにフィーネを冷やかしではないと認める。
「まぁ……悪かったな。そのフィーネと呼んでやる! だからちゃんとした格好で次はこい! 戦える格好でだ。そしたらまた剣交えてやるよ。冷やかしじゃないことはわかったから」
そう……グエインはフィーネを認めてくれた。その瞬間……ぱぁぁと笑顔になるフィーネだった。フィーネに興味を持ったグエインは得意な武器の把握にうつる。
今の模擬戦で使ったのは一般的な凡用武器。得意な慣れた武器なら、さらなる高みにも近づけると……
「そういえばフィーネの武器は普段から扱うのはこのレイピアか? それともその細剣がいつも使ってる剣なのか?」
フィーネが今回選んで使ったのは細剣寄りのレイピアだった。その為、必要だったら用意すると声をかけるグエイン。
「次の練習用に用意しておいてやるよ」
頭をポリポリかきながらフィーネに提案すると武器よりも違うことに反応する。
「えっまた来ていいの?」
パァッと明るく喜ぶフィーネだが……一瞬でシュンとなる。落差が激しいので心配するグエイン。
「どうしたんだ?」
突然シュンとして黙ってしまったフィーネに心配そうに声をかける。
「レイピア? 細剣? ……んー、剣は使ったことないからどっちかな? わかんない……どうしよう」
フィーネの意外な返答に驚きを隠せない。なんとフィーネがしょげていたのは武器の名前はもとより、使ったことがなかったものだった為、グエインの返事に悩んでいたようだ。その言葉に驚きを隠せなかったのはグエインだ。
「なんだと! 剣は使うのは初めてなのか⁉」
コクンと頷くフィーネに驚いているグエイン。
武器を使った戦いがは初めて……というが、そんな素人の戦いではなかった!
ゾクッ……
久しぶりにグエインがヒヤリと冷や汗をかく。
怪物が目の前にいるかのように! フィーネはそんなグエインを見つめている。
(あっ……傷だらけだ。もぅ……血も出てるじゃない、さっきの模擬戦でだよね?)
フィーネはスッとグエインの側に歩き、肩に手をポンッと置いてたたく。
「どう? もう痛くない?」
フィーネが肩に触れるとじんわり体が温かくなる。
パアァァァ……
触れてしばらくすると、体が光に包まれ体に異変が!
「⁉ なんだ? ……ケガが」
スウゥゥ……
先程の戦いの闘気で流血していた傷が全くなく、そして戦線で傷ついていた古傷も瞬時に修復していた。驚き戸惑っているグエインにさらなる行動を取る。
「あと……さっき得意な武器って言ってたんだけど、私が得意なのは剣じゃなくて…こっちだよグエイン」
ペンダントに手をあてて弓に即座に変換すると、遠くの隅にある木箱を積み重ねた場所に向かって射る!
「穿て!ライトニング‼」
バリバリバリーっ
ズダンッ!!
「‼」
狙った先にあった木箱がズタズタに引き裂かれパリパリと音がしている。
「‼」
「⁉」
一瞬の出来事に、驚きのあまり周りの騎士たちも呆然とする。
「魔法……しかも高度で正確……」
フィーネの実力に騎士たちも声が出ない。
軽々しく弓を披露した後にくるっと振り返りグエインに、
「武器は私は弓なのだから、剣は今日初めて握ったの。意外と楽しかったし使えなさそうでなかったから習ってみたいかもって思えたから……ぜひ習いたいな!」
ワクワクっとしているフィーネに……
(エンチャントに、自由自在に武器を操るとは……)
「フィーネは魔女? 聖女なのか?」
「…………」
まーたこの質問だ。この国の人はまたこの話……やれやれといった感じで聞き返す。
「んー……それ前にもなんか、そんな事聞かれたけどそれって一体何なの?」
シオンにもグランにも言われたその魔女、聖女の存在が気にならないわけではない……だがそれじゃないなと思っている。
「お前っそれ無自覚なのか! おい……その力はなぁ……」
と、グエインがフィーネに話しかけようとした会話の途中で、遠くから大声で名前を呼ばれる。
「フィーネ!」
先程の奥の部屋から待っていたあの人の声が‼
ピクッ!
心地よいグランの声に反応せずにはいられない!
「あっグランの声だ!」
フィーネが声がする方を慌てて振り向くと……ズルっ……
「⁉」
「ばっバカッ! 急に動くなっ! マントが外れるぞ‼」
急に向きを変えるフィーネに声かけるが、すでに遅かった!
バサッ……
「あっ……」
急にふり向いたはずみで、グエインのマントが落ちる! と同時にサァっと我に返るフィーネ。
(あ……間に合わず……か)
と、グエインはバツが悪そうに額に手を当てる。肌があらわになったフィーネは、慌ててババッと胸を隠す。
フィーネ自身も真っ赤に、まわりの騎士達はさらに真っ赤に! 脚元に目をやると太ももから足先まで引き裂いたドレスのスリットから脚があらわになっていた。
(あっ……しまった。せっかくのドレス、引き割いてちぎったんだった……)
状況を飲み込めないグランが無言で、途中自分のマントを拾いながら、急ぎ近くに歩み寄り怒り出す。
「フィーネ! 何があったらこんなになるんだ! 大丈夫か‼ 少し場を外しただけなのに……まさか騎士達に乱暴でも何かされたのか⁉ 事と次第によれば……」
ヒヤッ……
「⁉」
「‼」
怒りのグラン。殿下の怒りに空気が凍りつきその場が居たたまれなくなる。周りの騎士達もざわつく……その様子を見て慌ててフィーネが答える。
「グラーンっ違うのっ! みんなじゃない!」
ふるふるしながらグランに抱きつく‼
その瞬間!
ムギュッ!
「⁉」
「⁈」
「‼」
グランまで真っ赤になって固まる‼ フィーネがぎゅっとグランに抱きついた瞬間、ふんわりした胸がグランにムギュッと言わんばかりに密着する!
(殿下……約得……け、けしからんがうらやましい!)
多数の騎士達の一思いが一斉に一致する!
慌てた付き添いの騎士がグランの手からマントを取り、フィーネにマントをかけてあげる。
フィーネはフルフルしながらグランに訴える!
「グラーンっこの服、ドレス普通じゃないって! 恥ずかしくて死にそうだよ‼ ねぇ知ってたの? なんで早く言ってくれなかったの⁉ こんな露出の多い服みんな着ないんだって!」
うっ‼ そんな……うるうるの目で下から上目遣いで訴えられながら見つめられても……誘われてるかのようで真っ赤になり慌てるグラン。
「いや……そこ怒るとこそこじゃないって! それにちょっとフィーネから離れただけでなんでこんなにドレスボロボロなの! 一体何したんだ⁉」
グランはフィーネが騎士達に何かされたのかと心配しているようだ。だが……以外な答えがすぐに帰ってきた。
「あっ違うよ。グエインと剣模擬戦してて動くのに邪魔だったから、私が引き裂いたの。動きやすいように剣でビリビリッって……」
「は?」
あっけらかんと話すフィーネに唖然とするグラン。ダメだ……頭がついていかない……グランは額に手をあててため息をつくととりあえず決断する。
(先に着替えが必要だ!)
「フィーネっ部屋に戻ろうっ。その格好じゃあ目のやり場に困る!」
フィーネをマントで覆い、姫様抱っこをして急いで部屋へ向かう準備をする。
(こんな状態のフィーネの肌を数多の騎士に見せるわけにはいかない‼)
と……立ち去る二人にグエインが、
「フィーネまたな!」
「⁇ またねーグエイン」
(手を振るフィーネ)
条件反射で会釈するフィーネ。その瞬間グエインの声に静かに殺気を放つグラン。
ゾクッ……
(おや……殿下もフィーネに興味が? 女性に興味のない殿下が……また、俺も興味を持っている一人。フィーネはなんとも不思議な姫さんだ)
そう思うフィーネの後ろ姿が小さくなって騎士団から去っていったのだった。
部屋にグランがフィーネを連れて戻ると、メイド達に泣かれる。いや嘆かれる!
「あぁ! おいたわしや‼ 姫様がこんな目に……」
「うぅ……お召し物が引き裂かれて、さぞかし怖かったことでしょう」
「殿下このような事をした者を厳罰に!」
嘆き悲しむメイド達にフィーネはバツが悪い!
(……いや、これは……その……)
いたたまれなくなったフィーネは、正直に打ち明ける。
「みなさんごめんなさい。騎士の方と模擬戦で邪魔だったから私が引き裂いてその、せっかくの磨き上げして、服をだめにしてごめんなさ……」
言葉を選んで話していると、途中でメイド達にもみくちゃにされる。
「あぁ乱暴されたわけではないのですね!」
「磨き上げなどいつでも出来ます。無事で良かったですわ‼」
「お体は無事なのですね! 指一本触れられてませんよね!」
安堵するメイド。その姿にホッとする……が、つかの間!グエインの言葉を思い出して逆にフィーネが怒る!
「あっ私怒ってますからね‼ 露出多い服は、グランディールじゃ着ないって聞いたからもう絶対着ないからっ!」
プンスカ怒っているフィーネ。やり取りをみていたグランがいろんな表情のフィーネを垣間見てフッと笑い、
「今日はいろいろあったからメディア、湯浴みをして休ませてやってくれ。くれぐれも明日以降は『露出が少ないドレス』を仕立てるように。フィーネまた明日」
「うんまた明日ね!」
「承知いたしました」
シュンとするメディア達だが……切り替えは早い!
パパンっ!
「さぁ切り替えは大事でございますから。湯浴みの時間でございます。たくさんの騎士に見られたお肌、それに汗をかいた体を磨き直しますよ! 丁寧にじっくり! やっておしまい!」
バババっと押しかけるメイド達。
「丁寧にみがきあげますからね!」
「⁉ キャーッ‼ 湯浴みヤダー‼ だめっ触っちゃ!」
最終的にメイド達に湯浴みに連れ去られ、体中すみずみまで磨かれるハメになるフィーネだった。
ブワアアァ! キンッ‼
カシャンカシャンっ‼
二人の剣は何かに弾かれて……いやフィーネの魔法で弾かれて地面に落ちる。一瞬で二人の間に風が吹き抜け、弾き飛ばされた剣が地面に転がる現状。
「一体……何が起こった……んだ⁇」
何らかの力で自分の剣がグッと持っていかれた感覚に呆然としているグエインの目の前に、顔を真っ赤にしたフィーネが胸元をおさえプルプルとしていた。
さっきまでの戦いにご満悦の女性ではなく、なんとも可愛らしい幼い表情をみせるフィーネに戸惑う。
(なんだ? さっきまでの姫さんとは違うな……)
そう思っているとフィーネに意外な事を尋ねられる。
「ねえっ……この国の女性は、こういった胸が強調された服やドレスが主流で……みんなこんなドレスなんじゃないの?」
「はっ?」
急に服の……ドレスの話をし始めるフィーネに、グエインは拍子抜けだ。さっきまで殺気たっぷりで真剣を振り回してたんだぞ! 戦いに集中してたんじゃないのか?
(なんなんだこいつ……)
頭をポリポリとかきながら、とりあえず指を指しながら指摘してやることに。
「あのなぁ姫さん……このグランディールでそんな胸をバーンと強調して誘ってるような姫さんはいねぇよ。それにだな……くっきりしたボディーラインもないな! 大体は肌を…露出を控えたおとなしいデザインの淑女様ばかりだ」
「そんな嘘……嘘でしょ!」
驚きのあまり嘘だと声が出てしまう。ショックを受けているフィーネ。だがグエインは続けて口を開く。
「だが……」
言葉を発しながらフィーネをジーッと見るグエイン。下から上までじっくりフィーネを見た上で、
「姫さん……あんたのきれいな顔! それに華奢な体! 確かに……こんなたっぷりなはち切れそうな胸に、細い腰、引き裂いたドレスの合間から見えるふっくらした尻。すっとのびる細い脚も隠すのはもったいないかもな!姫さんはこれで正解なんじゃないのか?」
しみじみと上から下までフィーネを見るグエインに、さらに恥ずかしすぎて……ますます真っ赤になりたえきれなくなったフィーネは、
「ばかっ‼」
バチンッ‼
と、グエインの頬をひっぱたく。顔を真っ赤にしてどこかに隠れてしまいたいフィーネが、んんん……と目を回しながら悶ている。声に出せない恥ずかしさで悶ている姿が、また無性に騎士達には可愛らしく見える。
キュンっ
(なんだこのいきものは?)
グエインや騎士達は、なんだか妙に胸のあたりがソワソワする。こんな規格外な姫さんに出会ったことなどないぞ……と、まずはさておき、恥ずかしいと思っている体を隠してやらねばなぁ……そう思いながら、
「なぁ姫さん。これでもかけときな……そんな姿じゃ目のやり場に困る!」
グエインは自身のマントをフィーネに纏わせる。グランのマントよりゴツくてしっかりしているマントだ。
「その細さで、その度胸! 一戦交えて素人じゃない事はわかったから……」
観念したようにフィーネを冷やかしではないと認める。
「まぁ……悪かったな。そのフィーネと呼んでやる! だからちゃんとした格好で次はこい! 戦える格好でだ。そしたらまた剣交えてやるよ。冷やかしじゃないことはわかったから」
そう……グエインはフィーネを認めてくれた。その瞬間……ぱぁぁと笑顔になるフィーネだった。フィーネに興味を持ったグエインは得意な武器の把握にうつる。
今の模擬戦で使ったのは一般的な凡用武器。得意な慣れた武器なら、さらなる高みにも近づけると……
「そういえばフィーネの武器は普段から扱うのはこのレイピアか? それともその細剣がいつも使ってる剣なのか?」
フィーネが今回選んで使ったのは細剣寄りのレイピアだった。その為、必要だったら用意すると声をかけるグエイン。
「次の練習用に用意しておいてやるよ」
頭をポリポリかきながらフィーネに提案すると武器よりも違うことに反応する。
「えっまた来ていいの?」
パァッと明るく喜ぶフィーネだが……一瞬でシュンとなる。落差が激しいので心配するグエイン。
「どうしたんだ?」
突然シュンとして黙ってしまったフィーネに心配そうに声をかける。
「レイピア? 細剣? ……んー、剣は使ったことないからどっちかな? わかんない……どうしよう」
フィーネの意外な返答に驚きを隠せない。なんとフィーネがしょげていたのは武器の名前はもとより、使ったことがなかったものだった為、グエインの返事に悩んでいたようだ。その言葉に驚きを隠せなかったのはグエインだ。
「なんだと! 剣は使うのは初めてなのか⁉」
コクンと頷くフィーネに驚いているグエイン。
武器を使った戦いがは初めて……というが、そんな素人の戦いではなかった!
ゾクッ……
久しぶりにグエインがヒヤリと冷や汗をかく。
怪物が目の前にいるかのように! フィーネはそんなグエインを見つめている。
(あっ……傷だらけだ。もぅ……血も出てるじゃない、さっきの模擬戦でだよね?)
フィーネはスッとグエインの側に歩き、肩に手をポンッと置いてたたく。
「どう? もう痛くない?」
フィーネが肩に触れるとじんわり体が温かくなる。
パアァァァ……
触れてしばらくすると、体が光に包まれ体に異変が!
「⁉ なんだ? ……ケガが」
スウゥゥ……
先程の戦いの闘気で流血していた傷が全くなく、そして戦線で傷ついていた古傷も瞬時に修復していた。驚き戸惑っているグエインにさらなる行動を取る。
「あと……さっき得意な武器って言ってたんだけど、私が得意なのは剣じゃなくて…こっちだよグエイン」
ペンダントに手をあてて弓に即座に変換すると、遠くの隅にある木箱を積み重ねた場所に向かって射る!
「穿て!ライトニング‼」
バリバリバリーっ
ズダンッ!!
「‼」
狙った先にあった木箱がズタズタに引き裂かれパリパリと音がしている。
「‼」
「⁉」
一瞬の出来事に、驚きのあまり周りの騎士たちも呆然とする。
「魔法……しかも高度で正確……」
フィーネの実力に騎士たちも声が出ない。
軽々しく弓を披露した後にくるっと振り返りグエインに、
「武器は私は弓なのだから、剣は今日初めて握ったの。意外と楽しかったし使えなさそうでなかったから習ってみたいかもって思えたから……ぜひ習いたいな!」
ワクワクっとしているフィーネに……
(エンチャントに、自由自在に武器を操るとは……)
「フィーネは魔女? 聖女なのか?」
「…………」
まーたこの質問だ。この国の人はまたこの話……やれやれといった感じで聞き返す。
「んー……それ前にもなんか、そんな事聞かれたけどそれって一体何なの?」
シオンにもグランにも言われたその魔女、聖女の存在が気にならないわけではない……だがそれじゃないなと思っている。
「お前っそれ無自覚なのか! おい……その力はなぁ……」
と、グエインがフィーネに話しかけようとした会話の途中で、遠くから大声で名前を呼ばれる。
「フィーネ!」
先程の奥の部屋から待っていたあの人の声が‼
ピクッ!
心地よいグランの声に反応せずにはいられない!
「あっグランの声だ!」
フィーネが声がする方を慌てて振り向くと……ズルっ……
「⁉」
「ばっバカッ! 急に動くなっ! マントが外れるぞ‼」
急に向きを変えるフィーネに声かけるが、すでに遅かった!
バサッ……
「あっ……」
急にふり向いたはずみで、グエインのマントが落ちる! と同時にサァっと我に返るフィーネ。
(あ……間に合わず……か)
と、グエインはバツが悪そうに額に手を当てる。肌があらわになったフィーネは、慌ててババッと胸を隠す。
フィーネ自身も真っ赤に、まわりの騎士達はさらに真っ赤に! 脚元に目をやると太ももから足先まで引き裂いたドレスのスリットから脚があらわになっていた。
(あっ……しまった。せっかくのドレス、引き割いてちぎったんだった……)
状況を飲み込めないグランが無言で、途中自分のマントを拾いながら、急ぎ近くに歩み寄り怒り出す。
「フィーネ! 何があったらこんなになるんだ! 大丈夫か‼ 少し場を外しただけなのに……まさか騎士達に乱暴でも何かされたのか⁉ 事と次第によれば……」
ヒヤッ……
「⁉」
「‼」
怒りのグラン。殿下の怒りに空気が凍りつきその場が居たたまれなくなる。周りの騎士達もざわつく……その様子を見て慌ててフィーネが答える。
「グラーンっ違うのっ! みんなじゃない!」
ふるふるしながらグランに抱きつく‼
その瞬間!
ムギュッ!
「⁉」
「⁈」
「‼」
グランまで真っ赤になって固まる‼ フィーネがぎゅっとグランに抱きついた瞬間、ふんわりした胸がグランにムギュッと言わんばかりに密着する!
(殿下……約得……け、けしからんがうらやましい!)
多数の騎士達の一思いが一斉に一致する!
慌てた付き添いの騎士がグランの手からマントを取り、フィーネにマントをかけてあげる。
フィーネはフルフルしながらグランに訴える!
「グラーンっこの服、ドレス普通じゃないって! 恥ずかしくて死にそうだよ‼ ねぇ知ってたの? なんで早く言ってくれなかったの⁉ こんな露出の多い服みんな着ないんだって!」
うっ‼ そんな……うるうるの目で下から上目遣いで訴えられながら見つめられても……誘われてるかのようで真っ赤になり慌てるグラン。
「いや……そこ怒るとこそこじゃないって! それにちょっとフィーネから離れただけでなんでこんなにドレスボロボロなの! 一体何したんだ⁉」
グランはフィーネが騎士達に何かされたのかと心配しているようだ。だが……以外な答えがすぐに帰ってきた。
「あっ違うよ。グエインと剣模擬戦してて動くのに邪魔だったから、私が引き裂いたの。動きやすいように剣でビリビリッって……」
「は?」
あっけらかんと話すフィーネに唖然とするグラン。ダメだ……頭がついていかない……グランは額に手をあててため息をつくととりあえず決断する。
(先に着替えが必要だ!)
「フィーネっ部屋に戻ろうっ。その格好じゃあ目のやり場に困る!」
フィーネをマントで覆い、姫様抱っこをして急いで部屋へ向かう準備をする。
(こんな状態のフィーネの肌を数多の騎士に見せるわけにはいかない‼)
と……立ち去る二人にグエインが、
「フィーネまたな!」
「⁇ またねーグエイン」
(手を振るフィーネ)
条件反射で会釈するフィーネ。その瞬間グエインの声に静かに殺気を放つグラン。
ゾクッ……
(おや……殿下もフィーネに興味が? 女性に興味のない殿下が……また、俺も興味を持っている一人。フィーネはなんとも不思議な姫さんだ)
そう思うフィーネの後ろ姿が小さくなって騎士団から去っていったのだった。
部屋にグランがフィーネを連れて戻ると、メイド達に泣かれる。いや嘆かれる!
「あぁ! おいたわしや‼ 姫様がこんな目に……」
「うぅ……お召し物が引き裂かれて、さぞかし怖かったことでしょう」
「殿下このような事をした者を厳罰に!」
嘆き悲しむメイド達にフィーネはバツが悪い!
(……いや、これは……その……)
いたたまれなくなったフィーネは、正直に打ち明ける。
「みなさんごめんなさい。騎士の方と模擬戦で邪魔だったから私が引き裂いてその、せっかくの磨き上げして、服をだめにしてごめんなさ……」
言葉を選んで話していると、途中でメイド達にもみくちゃにされる。
「あぁ乱暴されたわけではないのですね!」
「磨き上げなどいつでも出来ます。無事で良かったですわ‼」
「お体は無事なのですね! 指一本触れられてませんよね!」
安堵するメイド。その姿にホッとする……が、つかの間!グエインの言葉を思い出して逆にフィーネが怒る!
「あっ私怒ってますからね‼ 露出多い服は、グランディールじゃ着ないって聞いたからもう絶対着ないからっ!」
プンスカ怒っているフィーネ。やり取りをみていたグランがいろんな表情のフィーネを垣間見てフッと笑い、
「今日はいろいろあったからメディア、湯浴みをして休ませてやってくれ。くれぐれも明日以降は『露出が少ないドレス』を仕立てるように。フィーネまた明日」
「うんまた明日ね!」
「承知いたしました」
シュンとするメディア達だが……切り替えは早い!
パパンっ!
「さぁ切り替えは大事でございますから。湯浴みの時間でございます。たくさんの騎士に見られたお肌、それに汗をかいた体を磨き直しますよ! 丁寧にじっくり! やっておしまい!」
バババっと押しかけるメイド達。
「丁寧にみがきあげますからね!」
「⁉ キャーッ‼ 湯浴みヤダー‼ だめっ触っちゃ!」
最終的にメイド達に湯浴みに連れ去られ、体中すみずみまで磨かれるハメになるフィーネだった。
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◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
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