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5章

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 妙に暖かい日か寒い日が続いて、服装選びに困る時期が来た。
 しかし結花はそんなのお構いなしに、出勤時はミニスカに肌が見えそうなスリップでブーツだ。上はさすがに寒いので着ているが、これもブランド物だ。
 結花はすでに着替えて勤務開始を待っている相川に声をかける。スマホとにらめっこしながら、足を組んでいた。
「かっちゃーん、おはよぉーっ! ね、これ似合ってる?」
 くるりと一回転して「どう? 似合ってる?」とアピールする。
 相川は目を合わせず冷めた口調でいいんじゃないですか。早く着替えてくださいと答える。
「あとその名前で呼ぶのやめてもらえます?」
「だってーみんなそう呼んでたからさぁ-。顔こわーいっ。せっかく今日はと一緒に出来るからって気合い入れてきちゃった」
 結花はてへぺろと言って相川の頬をツンツンする。
 顔が引きつって「やめてくれますか」と席を移動する。
 全身に鳥肌が立った。
 なんなんだこいつは。馴れ馴れしいんだけど!
 てか、これセクハラ?! 女から男もあるのか?
 ああいうのはおっさんが若い子にベタベタ触ったり、エッチなことを言ってきて嫌がってるのを楽しんでるイメージがあるけど、それの逆版ということだよな?
「早く着替えてきてください」
 相川のきつい物言いに「えー意地悪っ!」と頬を膨らませて結花は更衣室に向かった。
 今日は相川とペアで仕事をする日だ。
 彼に会えるということで、結花は4時に起きてメイクとファッションに気合いを入れた。
 入ってから最初の3週間ほどは悠真に迎えに来てもらったり、無理矢理起こされるような形で出勤していたが、相川を楽しみにしているのか、結果的に自分で出勤できるようになった。
 自転車が多少できるようになった。
 結花はプライベートで自転車を何十年も使っていない。
 通学は母の周子またはお手伝いさん達にお願いしていたし、常習的に遅刻していた。
 時間が押しているときは、校則違反となるメイクを車の中でやっていた。
 寝起きもよくないし、起きてもマイペースで朝食、頭からつま先までのメイクに2時間ほどかかるのもしばしばあった。
 そのため担任からのコメントで生活態度を改めるように通知表に毎年書かれていた。ただでさえ、分相応に有名校に入った。兄の良輔、姉の静華そして母の周子が卒業したということもあり、学費が半額になるから。寄付をすればもう少し安くなる。成績もあんまりよろしくないのに、生活態度もひどかったので、毎年進級の危機に陥っていた。それでも周子が寄付していたこともあり、教師達はだんまりになっていた。
 この1ヶ月間結花は数回無断欠勤や早退未遂をしている。
 職場いくのだるいとか、急に熱がでたとか身内が死んだと言って。
 店長である野崎や教育係である福島に一切連絡しないので、不審に思った彼らが悠真に連絡して、そのたびに結花の家まで来ていた。
 悠真はすぐに結花のSNSを調べ上げた。身辺調査でアカウントを見つけたから、今でも不審な動きないか調べるために使っている。
 体調悪いと聞いていたのに、のんきにテレビを見ていたり、SNSに朝活と称して、早くからやっているカフェに行っていた様子を投稿していた。
 陽貴や野崎や福島の悪口も載せられていた。
 相川や若い男性スタッフ達が可愛いだ、デートしたいだ投稿していて、浮ついた気でやるなら、監視を置くと脅した。
 しかし全然状況は変わらず、相川は結花を見ると最初の頃以上に距離を置いたり、かち合わないようにしていた。
 着替えてきた結花は懲りずにかっちゃーんとベタベタ触る。
 席を移動してもこの調子だ。
 早く誰か来てくれと祈っているうちに、徐々にバックヤードの休憩スペースに人が増えていく。
 結花は若い男性スタッフ達に相川と同じように、ベタベタ触る。
 若い男性スタッフ達は結花と距離おくか、慣れてきたのかからかっている人と分かれていた。
 からかっている人達は大学生スタッフ2人。
「ゆいちゃん今日もかわいねー」
「かわいーのは当然よ! もっと言って!」
「店長とか福島にいじめられてない? あの2人うざいからな」
「そうなのぉー、ゆいちゃんにいじめてくるのー」
 大学生スタッフ2人のうち、がたいがいい方に泣きつく。
 長身で華奢で茶色い髪型のスタッフが結花の頭をなでる。
「もしなにかされたら、俺たちがするから」
「俺も店長嫌いだからぶっ飛ばすよ。今日は誰くるの?」 
「かっちゃんと太刀川のおばちゃんと春日かすがって女」
 春日というのは、農産スタッフにいる大学1年生で、週2回朝早い時間帯と夕方の時間帯の週3回来ている。勤務歴は3年。大学に入った関係でこのような形になっているが、高校の時は平日週3で夕方の勤務に入っていた。
 穏やかな感じで優しい顔つきだが、結花は彼女のことも気に食わない。若い男性スタッフ達の人気者だからだ。
 今ここでは結花派と春日派で分かれているが、後者の方が優勢である。主に勤務態度の面で。
 結花を好意的に見ている人達は、調子のいい男性スタッフ達と農産スタッフおばちゃん3人衆ぐらいだ。
 最初に結花を甘やかさないようにと通達されていたが、一部の人がそれを守らないため、職場にメリハリがつかなくなっている。
 強いて言うなら結花の好き放題させているところがあった。
「朝礼はじめまーす」
 店長の野崎の声を耳に届きませんと言わんばかりに、結花は大学生スタッフにちょっかいをかけていた。
 朝礼終了後相川はそそくさと自分の持ち場に向かうが、結花に追いかけられる。
「かっちゃんまってー! ゆいちゃんも一緒にいくー!」
 結花は相川の腕を絡もうとするが、振り払われ泣き真似をはじめる。
「ひっどーおい。女の子には優しくしないとだめだよ?」
 相川は持ち場できっしょと忌々しげに吐き捨てる。
 マジで無理だ、あの人。なんで触ってくんだよ。
 しかも勝手にあだ名で呼んでさ、なんのつもりだよ?
 小学校の時彼女のようなタイプの女子にいじられてきた。おかげで女性がちょっと苦手だ。だから中学受験して男子校に入った。
 特に同年代、若い人もしくはそう見える人。身内はまだいけるが、他人になると無意識に逃げ出したくなる。
 今日のメンバーにいる春日の方が遙かにましだ。
 彼女に比べたら全く害がない。
 最初入った時についてくれた人だったが、年上だからと言って偉そうにしないし、早く終わるコツやパートのおばちゃん達や店長と上手くやる方法を教えてくれた。
 これは自分が男性が苦手であることを店長に面接の時に話していたからそういった女性と上手く立ち回る方法を教えてくれた。
 あとは自分と似た境遇だからというのもある。
 春日は小学校時代に同い年の親戚の男子に胸が大きいことをからかわれた挙げ句、触られた。
 それ以来学校にしばらくいけなくなり、中学は地元ではなく、女子校に入ったといつだったか言っていた。
 今のバイトで男性苦手を克服するために入ったらしい。
 全くそういう風に見えなかったが、だから春日と一緒だとやりやすいのかもしれないと思った。
 彼女とは天と地の差だ。
「やっほー、早くやろっ! 今日は何するのー?」
 相川の背後から結花は声をかける。
 いきなりのことなので相川は驚きのあまり腰を抜かす。
「び、びっくりしました。き、距離が近いですよー!」
 すかさずゆっくり距離を取ろうとする相川だが、結花はねぇねぇとボディータッチをする。
 相川の顔色がだんだん白くなっていく。呼吸も荒くなる。
 春日か太刀川のおばちゃんでもいいから、早く来てくれ!
 少し座り込んで呼吸を整える中「あ、相川くん……ん? 大丈夫?!」と声が聞こえた。
 結花が振り向くとベビーフェイスの華奢な女性がいた――春日だ。
「あー、相川くん、ちょっとしんどそうねー。どうした?」
 春日は慌てて相川に駆け寄り結花に「何があったんですかー」とのんびりした口調で尋ねる。
「な、なんでもないです……気にしないでください」と相川はゆっくり立ち上がる。
「わ、私悪くないもん! ちょーっと、話しかけたらこれよ?! あんた、距離近いじゃん! なに、彼女気取り?!」
 春日がさりげなく相川の背中をさするのが気に入らないのか、結花はヒステリックな声で詰め寄る。
「そんなー、まさか。単に座り込んでる人がいたから声かけただけですよ。呼吸つらそうだったのでー。それがたまたま男性だったというだけですよ。もし依田さんが同じことあっても、私は同じように対処しますよー」
 コロコロと笑う春日に結花は口先をとがらせて「あー、そーですか」と拗ねる。
 後から太刀川がやってきて、相川が息苦しそうであることを春日が説明する。
「ちょっち働きすぎだよ。高校生で過労なんてだめ、絶対だよー。ちょっと休憩スペースで休んできな! あとは私達にまかせんしゃい! 自分でいける? 店長呼ぶ?」
 太刀川は胸を叩いて高らかに宣言する。
「は、はい……、お言葉に甘えさせて頂きます」
 春日が内線で野崎がいる事務用スペースに内線で呼ぶ。事情を聞いた野崎はすぐにきた。
 相川の顔色の悪さに気づいた野崎は「ちょっと連れて行くから、やっててくれ」と休憩スペースに連れて行った。
「依田さん、先ににんじんの袋詰めお願いします。太刀川さんちょっといいですか」
「はぁ? なんで私が?! あんたがやりなさいよ!」
「ごめんね、ゆいちゃん、ちょっとお話あるから、また後で一緒にしましょ」
 太刀川がなだめるが、結花はなんでよと突っ立っていた。
 高校生とはいえ、先輩である春日にあんた呼びする結花はこれが通常運転である。自分が下だと思った人間には名字で呼ばずあんたかお前呼ばわりだ。主なターゲットは同性。
 春日は声を潜めて
「――太刀川さん、今日私と袋詰めのペアでしたが、交代してくれますか? 相川くんと交代してくれませんか? 私と依田さんでやります」
「どうしてー……? あ、そういうことね」
 春日の意図が一瞬分からなかったが、すぐに理解出来た。
 相川が結花のことを苦手に思っているからだ。
 結花が絡もうとしたら、すぐに距離をとる。それはここでの作業も同じだ。
 店長から極力相川と結花を一緒にさせないように強く言われているが、この1ヶ月でなんとなく理由が分かった気がする。
 それは他のメンバーも気づいている。だから、結花に分からないように相川と離れさせようと試行錯誤している。
「分かったわ。そうしよう。一人だとちょっと時間かかるけど、それは仕方ないわ。もし早く終わったら、こっちもお願い」
「分かりました」
 それぞれ持ち場に戻り、春日は結花が収穫用のコンテナに座って菓子パンを食べている姿に呆れていた。
「依田さん、作業はどうしたんですか?!」
「今日朝ご飯食べるの遅れちゃってさー。それにどうやっていいか教わってないから、やらなくていいかなって思って」
 あまりな言い分に近くで聞いていた太刀川も、目を丸くして、思わず口を出す。
「ゆいちゃん、それはないと思うよ。仕事に関してメモしてる? 福島さんからマニュアル頂いたと思うんだけど、それある? 全部そこに載ってるわよ。ほら、壁にも貼ってあるよ。分からなかったらそれを見たらいいのよ」
「あとここでの菓子パンはちょっと……野菜や果物を取り扱っているので、衛生面的にまずいかなと思いますよ」
「え、ここで飲食だめですなんて書いてないじゃん。そんなの聞いてないんだけどぉ。小娘の癖に私に指図する気?!」
 腕を組んでにらみつける結花。
「はいはい小娘のお話聞いてくださいねー、お母さん。にんじんの袋詰め一緒にやりましょー」
 ペースに呑まれまいと春日は結花に作業するように促す。心臓が跳ね上がりそうな緊張感がある。
「鈴ちゃん、私と交代する?」
「いいえ、大丈夫でーす!」
 段ボールを運んで欲しいことを伝えると、私に力作業させるつもりなのとまたしても喚く。
「ゆいちゃん、ほら一緒にもって!」
 太刀川がにんじんの入った段ボールを抱えるとむ結花は全く力を入れず抱える。
「ちからないのーじゃなくて、入れる気ないでしょー。おばちゃん分かってるわよ」
 見破られたかと言わんばかりにしぶしぶ抱えて、作業台の上に載せた。
「じゃぁここからは、できるよね? ほら、頑張って」
 尻を叩かれた結花は春日に教わりながら、作業していく。
 教わってる時もなんでこんな女に言われないといけないんだとブツクサ文句言っていた。
「依田さん聞こえてますよー。言われたくないなら、真面目にしてくださいねー」
 袋を機械で梱包していた春日が嗜める。
 八つ当たりするかのように春日に「あんたの喋り方ムカつく。年下のくせに」と段ボールに入ってたにんじんを数本投げつけた。床に落ちた。
「い、いてーっ……?! なに?!」
 顔面に当たったので地味に痛い。
 段ボールからにんじんを取り出して、上下に投げる結花。その顔は口角が上がってて、楽しんでいるかのようだった。
「私に指図するとこうなるの。呉松家のお嬢様であり、依田社長の妻である私に、下民げみん風情があれこれ言うなんて、頭おかしいんじゃない?!」
 結花は春日に近づいて手に持ったにんじんで、彼女の額に叩きつける。
「小娘の分際で私に指図するなんて、一生無理よ。ひれ伏しなさい。ここで働いてやってるんだから。ブッサイクの癖に調子乗るな。今から死んでよ。目障りだから」
 ドスの効いた声で春日を煽る。彼女は硬直して何も答えられず、座り込んでしまった。
「ゆ、ゆいちゃん?! 何してるの! 鈴ちゃん! 大丈夫?」
 太刀川が春日を介抱するために、大丈夫かと声をかけるが、
「え? 生意気だからお仕置きしただけぇー。小娘の癖に私に色々抜かしてくるからさー。鏡みなよー。自分が偉いと思ってんのぉ?!」
 煽る結花に春日は返事をするのもやり返す気力もない。唇をかみしめて下を向く。
「生意気ってなに? ゆいちゃんは教えてもらう立場でしょ! それに年なんて関係ないわ!」
 味方に注意された結花は感に障ったのか、太刀川にも「うるさいわよ! このババア! ひれ伏せ、社長夫人の前だ」と暴言を吐く。
 結花は女性2人に注意されて無かつっくのか「どうやっていじめ倒そうか」とニヤニヤし始めた。
 よし、スマホで動画撮影してでもしようか。
 呉松家のお嬢様であり、依田悠真社長夫人である私にあれこれ言うなんて、立場分かってるの?!
 だから下民は嫌いなのよ。こんな人達と一緒にいるなんて無理。私はなのよ!
「なにやってるんだ!」
 入り口から男性の怒声が響いた。
 

 
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