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終章

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 すずらんは無視して職場のテレビを付ける。
「あー、セリバーテルとうとう陥落かんらくしたのねー」
 昼のワイドショーで占部浩平と瀬里香が警察に連行される映像が流れている。
  詐欺容疑だ。警察がやっと動いてくれたんかと内心呆れる。
「そりゃネットであんなに言われたらねー……それに被害者かなりいたんだから」
「被害者への賠償、あとは不倫してたから慰謝料請求の支払いが待ってるわ」
「メシウマですね。因果応報すぎて」
「ある意味藤原日奈子も因果応報じゃない? 略奪して今度は不倫されてるんだから。メシウマざまぁよ。今日はご飯が美味しくなるわ」
 報われたのか浮かれた口調になるすずらん。
「ききょうも実母に会いたくないみたいですからねー」
 大屋によって、藤原日奈子ふじわらひなこの居場所を突き止める事ができた。
  占部浩平と瀬里香が住んでる近辺だった。本当目と鼻の先の距離だった。
 場所が分かったのは藤原日奈子のSNSだった。
 エステに行きましただ、ランチに行きましただ充実してる私アピールをしていた。しかし、ネットで「イタイ人」認定をされてるそうで、匿名掲示板でのおもちゃにされていた――つまりネット上で珍獣扱いされている。ニヤニヤしながら「こいつ痛いやつだなー。やらかしてくれないかなー」と野次馬根性やじうまで見られる対象であった。
  歳関係なく、服装が露出したものや言動がぶりっ子というのもあったからだ。
「多分藤原日奈子は、占部瀬里香にマウント取ってるつもりだったんじゃない?」
「占部瀬里香も、似たような事してたしねー。こいつもネットのニラヲチの道具にされてたみたいだし。あと、占部浩平も」
 二人ともネットのサウンドバックになって以来、日奈子同様匿名掲示板で扱いにされ、スレが立っている。
 二人共前々からこうばしいひとでたまに掲示板にSNSが貼り付けられる程度だったが、今回の件で拍車がかかった。
 「残当ざんとうよ。藤原日奈子しかりあの二人もそうだけど、やったことの事実はずっと残る。引き合いにされる覚悟で生きていかないといけない。被害者の心の傷は一生残るんだから、加害者のやったことことも一生残さないといけないの」

  ――過去の行いや言動は刺青のように消えない。

  それがたとえ冤罪だろうが、本当に犯罪をしようが、騒ぎ起こしたの刺青は消えない。
  今までの行い、言動、信用度、好感度全てが集約しゅうやくされ、これからの人生が決まる。
  占部瀬里香と浩平は元々好感度が低かった。それがあり叩かれていた。
  琉実菜を召使いにし、挙句の果てには、美人局を無理やりさせようとした。
  仕事も真面目にせず、二人してイチャついていた上、謝罪という名のの動画が残っただけだ。
  しかも不倫関係であることも露見し、二人の悪行が全世界に公開処刑された。
 仮にきちんと謝罪をしようが、償おうが何しても叩かれるだろう。ほとぼりが冷めて平穏な暮らしをしようとしても、過去のことを引き合いにされるだろう。
 被害者が許すと言っても外野は叩く。
 何かと引き合いにされて叩かれ続けるのが、あの二人への制裁であり因果応報だろう。  
 追い討ちをかけるように、警察に捕まり、被害者への救済、藤原日奈子への慰謝料の支払いが来た。
  この二人に対する因果応報はまだ始まったばかりだ。
  人の恋心を悪用し、家族やスタッフを巻き込んでまで大金を手に入れてもすぐ消えるだろう。
  占部瀬里香は昔から外面は良かったが、陰で同級生をいじめてたり、嫌がらせをしていた。隙がないように先生達――自慢のスタイルの良さで男性教師の懐に入り、何かあっても瀬里香の味方で問題が有耶無耶うやむやになっていた。
  挙句の果てには、既婚者の先生と関係を持ち、依怙贔屓えこひいきをしていた。そのため、学内の評判はよろしくなかった。
  占部浩平は成績優秀だったが、瀬里香同様、陰で嫌がらせをしていた。また、裕福な家の長男ということもあり、お金で解決してきた。
 過去のことを何かと引き合いにされ、後ろ指さされながら生きていくのがこの二人の償いだ。
  もう今までのように贅沢はできない。
 「美人局で手に入れたお金で、SNSでリッチな生活や遊び相手に困らない自分」とマウント取って顰蹙ひんしゅくを買ってきた罰だ。
  この二人の家族は血縁関係であるという事実は消えない。
  それは琉実菜も同じだ。
  しばらくネットや周りからのバッシングが来るだろう。家族関係の刺青は消えないのだから。
  でも、周りが評価するかどうか全ては、この後の日頃の行いと言動にかかってくる。
「そういえば、数年前の美人局事件、占部瀬里香と浩平が関わってたって。大屋さんが言っていた」
「あー、やっぱり?  丁度ききょうが小学生で、高木浩二こうじ千鶴ちづるがいなくなった時期とかぶってるね。多分この件が原因でどっか行ったんじゃない?」
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