22 / 45
4章
*
しおりを挟む
「瑠実菜はまだ戻って来ない?! 一体何してんだ?」
セリバーテルの事務所は、朝から社長である占部浩平の機嫌の悪さに社員達がびくついている。
部下やその他スタッフに八つ当たりするので、みんな気を遣う。最悪暴力が来る。
浩平喋り方は穏やかで優しそうだと最初思うが、いざ深く付き合ってみると、ただの性格悪い人である。
俳優みたいに顔がいいから騙される女性も少なくない。
「こーちゃーん、おこらないのぉー。ほら、お茶飲もー」
社長の妻である瀬里香が能天気に緑茶を渡す。
「すまんなぁー、瀬里香―。今日も服似合ってるぞー」
浩平は瀬里香を椅子に寄せて抱きつく。からの口付けだ。
瀬里香の服は半袖のブラウスに黒ミニスカートにヒョウ柄の黒ストッキング……どう考えてもビジネスに相応しいとは言えないものである。これは浩平の趣味でもあり、業務命令でもある。だから誰も注意しない。
女性スタッフは浩平の趣味でスタイルいい人やセクシー系が多い。社長の命令として服装も胸やお尻を強調するタイプで膝上までの服を着ている。
社員達は社長の機嫌が戻ったから良かったと思うと同時に、また始まったかーと冷ややかな目で見る。
朝から会社のトップが職場でイチャコラしている。
しかも建物が小さいので嫌でも見える。
社員達は最初は「仲良いですねー」と思っていたが、段々エスカレートして、今では公然の場でイチャコラは日常茶飯事、酷いときは致してる。
それが原因で社長宛てに用件があっても対応出来ず、後で怒られるのはスタッフ達である。
瀬里香の服装や社内でのイチャコラもそうだが、社員達は注意したくても出来ない。指摘するとパワハラされてしまうし、辞めさせられる。
みんな真面目な会社だと思って入ったらそうでもなく、美人局を強いられたり、会社のトップが仕事そっちのけでイチャコラしている。そんな姿を見て、すぐに辞めてしまう。
今残ってるのは社員歴浅い社員か、もう年齢的に行く場所がない人ばかりだ。
「社長、これ見てください……!」
浩平の席に一番近い橘がパソコンを持って見せる。
「いまそんなとこじゃないんだ! 邪魔しないでくれ」
瀬里香とイチャついてるとこを邪魔された浩平は、橘を冷たくあしらう。
「イチャコラしてる場合じゃないですよ! 社長の家大変なことになってますよ! うちに来るのも時間の問題ですよ!」
「はぁ? 何いってるの?」
「これ、社長の家でしょう? ネットに公開処刑されてますよ」
橘が見せたのは動画サイトで今朝投稿されたものだ。
『セリバーテルの社長の家に行ってみた《美人局社長に突撃したったwww》』と銘打ったタイトルで、男性二人組がインターホンを鳴らそうとしている。
「この二人に心当たりはありますか?」
「いや、全然……瀬里香は?」
「私もないわ。てか誰?」
浩平と瀬里香の顔が青ざめる。
どこのだれだか分からん連中に何故家が分かった?
「俺の家教えてないよね?!」
浩平は橘の首を掴んで大声で聞く。
セリバーテルの事務所内に沈黙が落ちた。せっせとパソコン操作したり、雑用やったりと、他人のフリに徹する他のスタッフ。
「し、しゃちょ、やめて、下さい……!」
「一発殴らせろ。お前が見せたから気分悪い」
「こーちゃん、それはやめてー」
瀬里香に止められた浩平は「まぁいいや」と橘を解放させる。
首を掴まれた橘はぜーぜほーはーと呼吸を整える。
「琉実菜が帰ってきてないのに……」
「えっ? 琉実菜さん帰って来てないんですか?」
「君には関係ないから黙っててくれないかな」
浩平の機嫌を損ねた橘に社員達から突き刺さる視線が来る。
「今日の社長いつも以上に機嫌悪いな……」
橘が席に戻った瞬間、チャイムが鳴った。
「橘くん! 君が出てくれ」
浩平に名指しされた橘は「はい」と裏返った声で返事する。
橘が事務所のドアを開けると、ビデオカメラを持った男性二人組がいた。
「あっ、セリバーテルさんですかー? 占部浩平社長と占部瀬里香さんはいらっしゃいますかー?」
「あ、あのしゃちょ……は……た、体調不良で……それにあなた達は……」
たじろぐ橘をよそに男性二人組はますます追い詰めた。
セリバーテルの事務所は、朝から社長である占部浩平の機嫌の悪さに社員達がびくついている。
部下やその他スタッフに八つ当たりするので、みんな気を遣う。最悪暴力が来る。
浩平喋り方は穏やかで優しそうだと最初思うが、いざ深く付き合ってみると、ただの性格悪い人である。
俳優みたいに顔がいいから騙される女性も少なくない。
「こーちゃーん、おこらないのぉー。ほら、お茶飲もー」
社長の妻である瀬里香が能天気に緑茶を渡す。
「すまんなぁー、瀬里香―。今日も服似合ってるぞー」
浩平は瀬里香を椅子に寄せて抱きつく。からの口付けだ。
瀬里香の服は半袖のブラウスに黒ミニスカートにヒョウ柄の黒ストッキング……どう考えてもビジネスに相応しいとは言えないものである。これは浩平の趣味でもあり、業務命令でもある。だから誰も注意しない。
女性スタッフは浩平の趣味でスタイルいい人やセクシー系が多い。社長の命令として服装も胸やお尻を強調するタイプで膝上までの服を着ている。
社員達は社長の機嫌が戻ったから良かったと思うと同時に、また始まったかーと冷ややかな目で見る。
朝から会社のトップが職場でイチャコラしている。
しかも建物が小さいので嫌でも見える。
社員達は最初は「仲良いですねー」と思っていたが、段々エスカレートして、今では公然の場でイチャコラは日常茶飯事、酷いときは致してる。
それが原因で社長宛てに用件があっても対応出来ず、後で怒られるのはスタッフ達である。
瀬里香の服装や社内でのイチャコラもそうだが、社員達は注意したくても出来ない。指摘するとパワハラされてしまうし、辞めさせられる。
みんな真面目な会社だと思って入ったらそうでもなく、美人局を強いられたり、会社のトップが仕事そっちのけでイチャコラしている。そんな姿を見て、すぐに辞めてしまう。
今残ってるのは社員歴浅い社員か、もう年齢的に行く場所がない人ばかりだ。
「社長、これ見てください……!」
浩平の席に一番近い橘がパソコンを持って見せる。
「いまそんなとこじゃないんだ! 邪魔しないでくれ」
瀬里香とイチャついてるとこを邪魔された浩平は、橘を冷たくあしらう。
「イチャコラしてる場合じゃないですよ! 社長の家大変なことになってますよ! うちに来るのも時間の問題ですよ!」
「はぁ? 何いってるの?」
「これ、社長の家でしょう? ネットに公開処刑されてますよ」
橘が見せたのは動画サイトで今朝投稿されたものだ。
『セリバーテルの社長の家に行ってみた《美人局社長に突撃したったwww》』と銘打ったタイトルで、男性二人組がインターホンを鳴らそうとしている。
「この二人に心当たりはありますか?」
「いや、全然……瀬里香は?」
「私もないわ。てか誰?」
浩平と瀬里香の顔が青ざめる。
どこのだれだか分からん連中に何故家が分かった?
「俺の家教えてないよね?!」
浩平は橘の首を掴んで大声で聞く。
セリバーテルの事務所内に沈黙が落ちた。せっせとパソコン操作したり、雑用やったりと、他人のフリに徹する他のスタッフ。
「し、しゃちょ、やめて、下さい……!」
「一発殴らせろ。お前が見せたから気分悪い」
「こーちゃん、それはやめてー」
瀬里香に止められた浩平は「まぁいいや」と橘を解放させる。
首を掴まれた橘はぜーぜほーはーと呼吸を整える。
「琉実菜が帰ってきてないのに……」
「えっ? 琉実菜さん帰って来てないんですか?」
「君には関係ないから黙っててくれないかな」
浩平の機嫌を損ねた橘に社員達から突き刺さる視線が来る。
「今日の社長いつも以上に機嫌悪いな……」
橘が席に戻った瞬間、チャイムが鳴った。
「橘くん! 君が出てくれ」
浩平に名指しされた橘は「はい」と裏返った声で返事する。
橘が事務所のドアを開けると、ビデオカメラを持った男性二人組がいた。
「あっ、セリバーテルさんですかー? 占部浩平社長と占部瀬里香さんはいらっしゃいますかー?」
「あ、あのしゃちょ……は……た、体調不良で……それにあなた達は……」
たじろぐ橘をよそに男性二人組はますます追い詰めた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
結婚式の日取りに変更はありません。
ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。
私の専属侍女、リース。
2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。
色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。
2023/03/13 番外編追加
(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)
青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。
ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。
さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。
青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる