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4章
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「間違いを起こさなかっただけ良かったわ……」
みみずくは職場であるよろず屋ななつ星に琉実菜と一緒に来た。
「でしょ? 褒めてくださいよー」
「そんなの当たり前でしょう」
ピシャリと言い放つすずらんにみみずくは「酷いですよー」としょげる。
隣で琉実菜がさりげなくみみずくの頭を撫でる。
「で、どうするよ? 彼女」
「出来るだけ人目避けた方がいいんじゃない? ここ突き止められる可能性あるんだし」
GPSは消したとはいえ、ログが残っている可能性がある。そこから場所を突き止めれば、突撃される可能性が十分ある。
「奥の待機室ぐらいだね。あるとしたら」
待機室は案件が長期化した場合にくつろげる場所としてある。いわば仮眠室に近い。しかもベッドの寝心地はそれなりにいい。
副所長の大屋健二が「睡眠大事! 仕事のパフォーマンスに影響するから、こだわらなきゃ。しょぼいベッドで寝て腰痛になって動けなくなるぐらいなら、ちゃんとしたものの方がいい。よろず屋ななつ星のうりだ」といつもドヤ顔で語っているぐらいだ。
そこだとテレビがあるので時間潰しになるだろう。
「……すいません、私だけ動かないのはあれなんで、何かお手伝いすることがありますか?」
「お手伝い?」
すずらんが目を見てぱちくりして聞き返す。
「あなただいたいお客様でしょう? 素人が勝手に首突っ込んで掻き回されても困るわ。足でまといヒロインになりたいの?」
「すずらん言い過ぎ」
すずらんは大屋に嗜められるが「いや、でも……人の仕事に首突っ込まれても迷惑なだけです。素人の存在ほど迷惑なものはありません」と言い返す。
「あのねー、すずらん。素人が迷惑って言うけど、誰だって最初は素人よ。初っ端からプロで完璧な人はいないわ。まずは自分が出来ることを見つけ出したり、教わりながら、出来るようになるの」
「こんな見た目だけしか取り柄なさそうな人に何が出来るんだか」
すずらんは琉実菜を一瞥して毒づく。
「いい加減なさい! あなた、琉実菜さんのこと気に入らないでしょ?」
図星を突かれ二の句が続かない。
そうだ気に入らない。正直言って嫌いなタイプだ。
この手の人にロクな人やまともな人がいたためしがない。だいたい人間性に難あり率高い。小学校、中学校の同級生でいたが、わがままで仕切り魔だったので、最終的にみんなから距離を置かれていた。今はななつ星駅の近くの惣菜屋で働いているらしいが。
喋り方、態度、仕草、むしろ嫌われる才能があると褒めたくなる。
彼女がまだセリバーテルと繋がってる可能性を捨てきれない。
一度はうちの部下を美人局させようとしていた。たとえそれが誰からの命令だろうと、簡単に信用出来る訳がない。
「彼女はセリバーテルの社長の身内なんですよ?! どこで繋がってるか分からないんですよ。本人が言ったとはいえ、みみずくを騙そうとしてたんですよ? 身の上話も嘘かもしれませんし」
ここまで来るともはやすごいなーと感心するが。
「こういう女性程疑ってかからないと。純粋の皮被った腹黒女かもしれませんよ?!」
「すずらんさん! これ以上彼女を悪く言うのやめてください!」
「あらー、みみずく、彼女に惚れてるの? 恋は盲目っていうからね……部下が仕事と個人的感情をごっちゃになって情けないわ」
すずらんはわざとらしくため息をつきながら、みみずくに嫌味をとばす。
「こんな見た目だけ取り柄しかない人なんて、今はちやほやされますけど、あと数年したら捨てられますよ。何も価値がないんですから」
すずらんは鼻で笑う。
「個人的感情をごっちゃにしてるのはどっちかな? 人の価値を他人であるあなたが値踏みする筋合いなんてない。彼女を見た目だけしか取り柄ないって言うなら、取り柄を増やせばいいのよ」
大屋に強い口調で言われたすずらんは黙り込む。
この人はマジギレしてるんだと悟ったからだ。
普段飄々としてる人が怒ると怖いと言うが、大屋はそのタイプだ。
「わ、私、何でもやります。雑用とか掃除とか……」
おずおずと手を挙げて琉実菜はアピールする。
「えっ? マジで?! やってくれる?」
大屋の目が輝いた。
「雑用出来る人が一人でもいると助かるわー。ねぇ? すいせん」
「そうですね」
みみずくも頷く。
「じゃっ、琉実菜ちゃんにはコーヒーをいれてもらおうかしら。すずらん、コーヒーの入れ方教えてあげて。所長命令よ」
「……はい」
すずらんはしぶしぶ受け入れた。
嫉妬と不信感と信じるべきなのか……深く息を吸う。
「よろしくお願いいたします! すずらんさん」
目を輝かせて頼む琉実菜にすずらんは「わかったから、ついてきて」と琉実菜を給湯室に連れていった。その後、瑠実菜は大屋に呼ばれてどこかへ外出した。
みみずくは職場であるよろず屋ななつ星に琉実菜と一緒に来た。
「でしょ? 褒めてくださいよー」
「そんなの当たり前でしょう」
ピシャリと言い放つすずらんにみみずくは「酷いですよー」としょげる。
隣で琉実菜がさりげなくみみずくの頭を撫でる。
「で、どうするよ? 彼女」
「出来るだけ人目避けた方がいいんじゃない? ここ突き止められる可能性あるんだし」
GPSは消したとはいえ、ログが残っている可能性がある。そこから場所を突き止めれば、突撃される可能性が十分ある。
「奥の待機室ぐらいだね。あるとしたら」
待機室は案件が長期化した場合にくつろげる場所としてある。いわば仮眠室に近い。しかもベッドの寝心地はそれなりにいい。
副所長の大屋健二が「睡眠大事! 仕事のパフォーマンスに影響するから、こだわらなきゃ。しょぼいベッドで寝て腰痛になって動けなくなるぐらいなら、ちゃんとしたものの方がいい。よろず屋ななつ星のうりだ」といつもドヤ顔で語っているぐらいだ。
そこだとテレビがあるので時間潰しになるだろう。
「……すいません、私だけ動かないのはあれなんで、何かお手伝いすることがありますか?」
「お手伝い?」
すずらんが目を見てぱちくりして聞き返す。
「あなただいたいお客様でしょう? 素人が勝手に首突っ込んで掻き回されても困るわ。足でまといヒロインになりたいの?」
「すずらん言い過ぎ」
すずらんは大屋に嗜められるが「いや、でも……人の仕事に首突っ込まれても迷惑なだけです。素人の存在ほど迷惑なものはありません」と言い返す。
「あのねー、すずらん。素人が迷惑って言うけど、誰だって最初は素人よ。初っ端からプロで完璧な人はいないわ。まずは自分が出来ることを見つけ出したり、教わりながら、出来るようになるの」
「こんな見た目だけしか取り柄なさそうな人に何が出来るんだか」
すずらんは琉実菜を一瞥して毒づく。
「いい加減なさい! あなた、琉実菜さんのこと気に入らないでしょ?」
図星を突かれ二の句が続かない。
そうだ気に入らない。正直言って嫌いなタイプだ。
この手の人にロクな人やまともな人がいたためしがない。だいたい人間性に難あり率高い。小学校、中学校の同級生でいたが、わがままで仕切り魔だったので、最終的にみんなから距離を置かれていた。今はななつ星駅の近くの惣菜屋で働いているらしいが。
喋り方、態度、仕草、むしろ嫌われる才能があると褒めたくなる。
彼女がまだセリバーテルと繋がってる可能性を捨てきれない。
一度はうちの部下を美人局させようとしていた。たとえそれが誰からの命令だろうと、簡単に信用出来る訳がない。
「彼女はセリバーテルの社長の身内なんですよ?! どこで繋がってるか分からないんですよ。本人が言ったとはいえ、みみずくを騙そうとしてたんですよ? 身の上話も嘘かもしれませんし」
ここまで来るともはやすごいなーと感心するが。
「こういう女性程疑ってかからないと。純粋の皮被った腹黒女かもしれませんよ?!」
「すずらんさん! これ以上彼女を悪く言うのやめてください!」
「あらー、みみずく、彼女に惚れてるの? 恋は盲目っていうからね……部下が仕事と個人的感情をごっちゃになって情けないわ」
すずらんはわざとらしくため息をつきながら、みみずくに嫌味をとばす。
「こんな見た目だけ取り柄しかない人なんて、今はちやほやされますけど、あと数年したら捨てられますよ。何も価値がないんですから」
すずらんは鼻で笑う。
「個人的感情をごっちゃにしてるのはどっちかな? 人の価値を他人であるあなたが値踏みする筋合いなんてない。彼女を見た目だけしか取り柄ないって言うなら、取り柄を増やせばいいのよ」
大屋に強い口調で言われたすずらんは黙り込む。
この人はマジギレしてるんだと悟ったからだ。
普段飄々としてる人が怒ると怖いと言うが、大屋はそのタイプだ。
「わ、私、何でもやります。雑用とか掃除とか……」
おずおずと手を挙げて琉実菜はアピールする。
「えっ? マジで?! やってくれる?」
大屋の目が輝いた。
「雑用出来る人が一人でもいると助かるわー。ねぇ? すいせん」
「そうですね」
みみずくも頷く。
「じゃっ、琉実菜ちゃんにはコーヒーをいれてもらおうかしら。すずらん、コーヒーの入れ方教えてあげて。所長命令よ」
「……はい」
すずらんはしぶしぶ受け入れた。
嫉妬と不信感と信じるべきなのか……深く息を吸う。
「よろしくお願いいたします! すずらんさん」
目を輝かせて頼む琉実菜にすずらんは「わかったから、ついてきて」と琉実菜を給湯室に連れていった。その後、瑠実菜は大屋に呼ばれてどこかへ外出した。
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