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8章

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「お天道様が見てたのよ。だから今回チャンスがきたのよ。ほんとお疲れ様」
 大屋はレモンティーを口につける。
 「――もし今、田丸一家があなたのもとへ謝りに来たらどうする?」
 唐突とうとつな大屋の質問に亜津紗は考えあぐねる。
 罵倒する? やり返す? 
 今頃謝りに来ても妹は返ってこない。心労がたたった両親もだ。
 これから何かと過去のことを引き合いにされて後ろ指さされて生きていくだろう。それは本人だけでなく、家族もそうだ。
 家族はバッシングの嵐になっても、同情する余裕なんてない。の血縁である事実は変わらない。なにかと引き合いにされるのも避けられないだろう。
 一度のやらかしは入れ墨のように消えない。
 本人及び家族は今後どうするかはその人次第だ。
「……多分罵倒ばとうするにもできないと思います」
 嫌味飛ばしたいけど、実際はできないと思う。
 もう二度と私の人生に関わらないでくれ、目の前から消えてくれと言うのが精一杯だ。
 謝罪しても所詮は自己満足にすぎない。
 自己満足の塊の謝罪を受けるぐらいなら、目の前から消えてもらった方がいい。
 その代わり、因果応報をじっくり味わって生きて欲しい。それがこの世でのつぐないだと思う。
 過去の行いは入れ墨のように消えない。
 今後何かと引き合いにされても文句の言える立場ではない。

「そうよね。来てもらってもこまるわね」
「所詮は自己満足に過ぎませんから。どうせ心に響きませんし」
 亜津紗はふふと笑いながら頼んだミルクティーを口つける。
「あなたやっぱり笑った姿が素敵よ。もう少し感情出しなさいよ。もったいないわ。美人だし」
「ええ、わかりました」
「じゃぁ、休み明け仕事よろしくねー。あと、お代はいいから。じゃねっ!」
 大屋は敬礼けいれいをしてカフェを後にした。
 思わずノリの軽さに亜津紗は笑みをこぼす。
 この人仕事に容赦ないけど、喋り方やノリは軽い。
 でもなんだか憎めない。
 自分のコーヒー代ぐらいせめて払いたかったが、注文の際に大屋が一緒に払ってくれた。
 自分から誘ったからここは払わせてと。

 これから、駅前のマッサージ屋に行ってリフレッシュしよう。
 目や肩や首が痛いから。
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