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6章

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「私、このまま学校いけないんですか?」
 真凜の一言に二人は「どういうことか」と尋ねる。
「校長先生が説明会で私と和田さんを出席停止、警備員のおじさんを辞めさせるって言ってました」
「私たちもハッキリきいてます。他の保護者も聞いてるはずです」
 真凜の母が語気を強めて、娘をフォローする。
 敏夫が言っていた内容と一致している。
「学校を騒がせたことを理由に辞めてくれと。学校の情報を得るにもアプリがログイン出来ないと言っていました。娘が学校に問い合せたのですが・・・・・・」
 真凜はログインできないことを証拠にしてたので、二人にスマホの画面を見せる。
「・・・・・・なんと?」
「担任の佐田さだ先生なんていないと。あんた誰みたいな態度でした」
 そのため真凜は学校の情報をクラスメイトからメッセージアプリで知る状態になっていた。
「電話出たの誰か分かりますか?」
「名前は分からないですが、女性でした」
 学園長と教頭は再び顔を曇らせた。
「・・・・・・事情は分かりました。志村さんも和田さんも悪くない。むしろ尽力してくれたんだ。辞める必要ない。戻れるようにベストを尽くします。もう少しの辛抱だから待って欲しい」
「足の怪我はどうですか? 差し支え無ければ見せて頂けますか?」
 真凜は田丸に蹴られた足を見せる。
 あざのような赤みがかったようなものがあちこちできている。
 まーりんこと真凜がネットに載せてた写真と一緒だ。
「病院に行って処置してもらったのですが、痛いです」
 医者から無理して動かない、足を酷使しないように言われている。ひでーなーと同情された。
「ここ写真撮っていいかな? あと診断書があればコピーを頂きたいんですが」
「はい。分かりました」
 真凜の父が診断書を家庭用プリンターでコピーして、二人に渡す。
 「改めて、皆様にはこのような形になってしまい申し訳ございません。必ず真相解明に向けてベストを尽くしますので、どうぞよろしくお願いいたします」
 学園長と教頭に頭を下げられ、志村家も一緒に頭を下げる。
「あのー、ちょっといいですか?」
「はい」
「田丸先生と校長先生は今どちらに・・・・・・?」
 真凜の母からの質問に困惑する二人。
 二人も今探してる最中だから。
「申し訳ございません、こちらも今探しておりまして・・・・・・何かありますか?」
「未だに田丸先生と校長先生が謝罪に来てないんです。娘に蹴りいれときながら。それに神原さんのお家にも来てないと。元々志村家と神原家は付き合いのあるので・・・・・・」
 うんうんと真凜の母の話に真凜と真凜の父も頷く。
 「あの二人は何のつもりですかね。娘達を。生徒達を。身勝手な理由で人を殺したようなものですよ。それでのうのうと生きられるとはらわたが煮えくり返りますよ。神原さん所はそれ以上です」
 静かに語る真凜の父に二人は何も答えられなかった。
 午前中に神原家に行って、謝罪及びヒアリングをしたら、同じように謝罪はおろかお悔やみの言葉すらないと言っていたのを思い出す学園長。
 神原家は説明会に出席して「残念ですが・・・・・・」と校長が少し話したのを聞いただけだった。
 志村家と神原家が説明会の後、校長に直接話を聞きたい、経緯を説明して欲しい、どういうことかと言いに行った。

 ――先生に逆らったからですよ。自業自得ですよ。今後一切この件を調査するつもりありません。
 ――他の生徒達には箝口令かんこうれいを敷きます。もうあなた達の存在はないものとします。今後一切本校の生徒と関わったり、連絡取るのも禁止します。もししたら、連絡取った生徒に謹慎処分とします。
 ――学校で騒ぎ起こしたからこれくらいの仕打ちは当然でしょう。もう一度言います。自業自得です。自分達の身勝手な行いで人が死ぬことを学べたんじゃないですか。
 校長は鼻で笑いながらこう答えた。

 一方的な校長の発言に志村家と神原家は開いた口が塞がらなかった。
 田丸先生がなぜいないのか出席しないのかと聞いても、もうここの生徒ではない以上、個人情報なので教えないと。
「はぁ・・・・・・そうですか・・・・・・本当に申し訳ない」
「まだ行ってなかったのか、あの二人は・・・・・・」
 学園長は頭を抱える。
 言葉で言い表せないほどの身勝手な行動。
 身勝手はどっちだ。
 しかも鼻で笑ってたとは。
 敏夫が言っていた内容と一致してる。 
  ――あの二人は端から逃げるつもりでいたんだ。
 ――内々で関わった人達を追い出して、ほとぼり冷めた頃に学校に戻って来る算段なんだろう。

「連絡取るなと生徒同士の交友関係に偉そうに口出し出来る立場だとお思いなんでしょう、あの校長は。つくづく傲慢ごうまんな方であることがよく分かりました。あー、私の人選ミスだ・・・・・・」
 学園長は佐久間倫子を校長にさせたことをずっと後悔していた。それは教頭も同じく。
 今まで佐久間家が校長、柴田家が学園長とやってきたが、教員やスタッフは外部の人達で固めてきた。
 しかし、佐久間倫子に代わってから、長年働いてきた人を何かと理由つけてやめさせ、その代わり身内やコネ採用になってきた。
 今までトップだけ身内でやってきたが、そのツケが回ってきたのだと思う。
 これ以外にも反省点や後悔することが山のようにある。
 「が、学園長、落ち着いて下さい。お茶のお代わりご用意しますので。教頭先生も」
 真凜の母がもう一度お茶の用意を始めて二人にだす。
「す、すみません・・・・・・」
 学園長と教頭はお茶をすする。
 氷が入った冷たいほうじ茶が二人を落ち着かせる。
「私たちとしては、真相解明及び志村真凜さん、和田紬わだつむぎさん、警備員の石綿敏夫さん、佐田佳樹よしき先生を必ず本校に戻らせることを約束します。時間がかかってでも、我々はベストを尽くしますので、どうかそれまでお待ち下さい。そして、田丸先生と佐久間校長には謝罪をするようにお伝えします。事態が動く度に報告をします。解決した際には一年生対象に保護者会を開きますので、ご出席よろしくお願いします」
 二人は立ち上がって深々とお辞儀した。
 今日何回目だろうか、この姿。
 学校のエライ人が頭を下げてる姿は初めてで、どうリアクションしたらいいかわからない。
「ではよろしくお願いいたします」
  志村家も頭を下げる。
「あと、校長先生が言ってた連絡禁止の件ですが、気にせず、やりとりして下さい。もし何か言われたら学園長が許可したと言えばいいので…。そんなの律儀に守る人いないでしょう」
 教頭が冗談混じりで笑うので、真凜もつられて笑う。
「はい、分かりました」
 真凛は内心安堵した。
 学園長と教頭は最後に何かありましたらご連絡くださいと二人の電話番号を教えてもらって辞去した。

 信じていいよね? この二人が解決のために尽力してくれるという言葉。
 やっと学校の関係者で味方を得られた。
「真凜、良かったわ。学園長と教頭が動いてくれるって」
 真凜の母が娘の手を握る。
「う、うん」
「なんか話聞いてたら、ここの校長相当ワンマンらしいな。真凛の担任も辞めさせられたみたいだし。関係者全員追い出すつもりなんだろ。余計なことを言わせないために」
 真凛の父は深く息を吸う。
 「あとは静観せいかんするしかないな。それまでゆっくりしよう」
 学園長と教頭の訪問の後、志村家に連絡が来た。
 金曜日に保護者会を開くので、来て頂けないかと。
 真相が全て分かったので説明したい。

 絶対許さない。うやむやで終わらせないで。
 学園長と教頭に託した。
 真凜は「ちーちゃんの件が分かったみたいだから、金曜日に説明会あるって」「学園長と教頭が来た」とクラスのグループチャットに送った。
 マジかとのコメントが続く。
 一体何を話すのかな? 私は来て大丈夫よね?
 学園長から許可もらったんだから。
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