18 / 36
5章
2
しおりを挟む
話し合いの会場は藤ノ宮女子高校の校長室だった。
倫子はいつも座っている大きな机がある席に座ろうとしたが、椅子がなくなっていた。
机の上にあるネームプレートがなくなっていた。
先週まで書類の山とノートパソコンがあったのに。
私物の筆記用具もなくなっている。
「ちょっと! 何で私の椅子がないの?! ネームプレートも!」
甲高い声で顕信に聞く倫子。
「今日はここに座ってもらうから」
顕信に言われた所は校長室の中にある応接間兼打ち合わせスペース。
クッション性のある黒の布張りの椅子。
俊治と倫子は並んで座る。
「何であんた達一緒に並んでるのよ! あんたは私の隣でしょ!」
「それはあなたに魅力がないからじゃない?」
顕信は俊治と倫子が隣り合って座る時点でないなと呟く。
俊治はいつものようにふてぶてしく椅子に座っていた。
早く帰らせろよといわんばかりに貧乏ゆすりをはじめる。
「これはどういうことかな?」
顕信が"証拠"を机の上に差し出す。
妙に距離が近いこと、レストランのガラスが反射して二人がソファーのような席で並んで座ってた。
二人がベッドで共寝したこと、男女の仲を示唆するような内容をメッセージアプリでやってること、ホテルに向かっている姿など……。
顕信が個人的に調査専門会社に頼んだものである。
「あと、これね・・・・・・」
ラブホテルに入ろうとする姿、俊治と倫子のメッセージアプリでのやりとり。
『今日は激しかった』
『もーちょいやりたりない。今度は短いスカート履いてきて』
『保護者向けの説明会なんとかいったわ。警備員に擦り付けておいた』
『保護者はどうだ?』
『騒いでたけど、無視した。あとは志村真凜と和田紬とあいつらの担任と保健室のあの女をクビにさせたら、大丈夫よ』
『これからそっち向かうから』
「お、俺たちには関係ない!」
「そうよ! 合成よ!」
俊治と倫子はそれぞれの配偶者の目からそらす。
「ねぇ、暑いんだけど・・・・・・」
「生徒たちの様子は?」
「今そういう話じゃないだろ? お前らいつから関係を持った?」
凄むように聞く顕信。
「ねえ、家に帰らせて」
「お前に話すことはない」
「じゃぁこれはどうかな?」
学園長は手元からスマホを取り出して音声アプリを開いた。
『・・・・・・あの人亡くなったわ。これからどうする?』
『喘息かなんだかしらねーけど、たかが生徒一人亡くなっただけで騒ぎすぎなんだよ。せっかくの飯が不味くなる。なぁ、倫子、保健室の先生探すフリして逃げたのは正解だったな』
『そうね。責任がここにきたら困るから、警備員とあの生徒二人に押し付けましょ。適当に理由つけて、学校に来れない形にすればいいのよ。あの警備員学園長派だから追い払うのに丁度良かったわ』
『だいたい、志村だっけ? ガキの癖に俺に刃向かうなんておかしいんじゃねーの。学校で騒ぎ過ぎなんだよ。今どきの奴は根性ねーなー。俺、くたばった奴の両親に怒られたくないんだけど』
「こ、こんなの、嘘よ!! わ、私、言ってない!」
「合成よね?」
「てめぇー、なんのつもりだ!!」
俊治は机をドンドン叩く。
「田丸先生、学園長の前です。言葉を慎みなさい」
「うるせー、このもやしの癖に!! お前らが消えれば、この学校支配できるのに!」
「こんな老害学園長なんか誰も望んでないわ。これからは佐久間倫子の時代なのよ。とっととご隠居されたらどうです? 私は若い人にこの学校に携わってもらいたいだけです」
倫子は強く言い切ってる割にはひどく狼狽していた。
顕信、学園長、そして加奈子から色々と証拠を見せられる。
よろず屋ななつ星が送ったもの、掲示板に書かれたもの、そして二人のSNSのアカウントなどなど・・・・・・。
しかし二人は未だに不倫及び神原千夏の件を求める気がない。
「お前らこんなに紙クズ見せて俺に勝ったつもりか?」
「ええ、これほど沢山出てきてますから。あなた随分と人の人生を潰してきたみたいですねー。面の皮が厚いというか・・・・・・」
顕信はよろずやななつ星が送った書類を見せる。
――田丸健史は中学の時、癇癪を起こし同級生を
突き落とし死亡させた。
倫子はいつも座っている大きな机がある席に座ろうとしたが、椅子がなくなっていた。
机の上にあるネームプレートがなくなっていた。
先週まで書類の山とノートパソコンがあったのに。
私物の筆記用具もなくなっている。
「ちょっと! 何で私の椅子がないの?! ネームプレートも!」
甲高い声で顕信に聞く倫子。
「今日はここに座ってもらうから」
顕信に言われた所は校長室の中にある応接間兼打ち合わせスペース。
クッション性のある黒の布張りの椅子。
俊治と倫子は並んで座る。
「何であんた達一緒に並んでるのよ! あんたは私の隣でしょ!」
「それはあなたに魅力がないからじゃない?」
顕信は俊治と倫子が隣り合って座る時点でないなと呟く。
俊治はいつものようにふてぶてしく椅子に座っていた。
早く帰らせろよといわんばかりに貧乏ゆすりをはじめる。
「これはどういうことかな?」
顕信が"証拠"を机の上に差し出す。
妙に距離が近いこと、レストランのガラスが反射して二人がソファーのような席で並んで座ってた。
二人がベッドで共寝したこと、男女の仲を示唆するような内容をメッセージアプリでやってること、ホテルに向かっている姿など……。
顕信が個人的に調査専門会社に頼んだものである。
「あと、これね・・・・・・」
ラブホテルに入ろうとする姿、俊治と倫子のメッセージアプリでのやりとり。
『今日は激しかった』
『もーちょいやりたりない。今度は短いスカート履いてきて』
『保護者向けの説明会なんとかいったわ。警備員に擦り付けておいた』
『保護者はどうだ?』
『騒いでたけど、無視した。あとは志村真凜と和田紬とあいつらの担任と保健室のあの女をクビにさせたら、大丈夫よ』
『これからそっち向かうから』
「お、俺たちには関係ない!」
「そうよ! 合成よ!」
俊治と倫子はそれぞれの配偶者の目からそらす。
「ねぇ、暑いんだけど・・・・・・」
「生徒たちの様子は?」
「今そういう話じゃないだろ? お前らいつから関係を持った?」
凄むように聞く顕信。
「ねえ、家に帰らせて」
「お前に話すことはない」
「じゃぁこれはどうかな?」
学園長は手元からスマホを取り出して音声アプリを開いた。
『・・・・・・あの人亡くなったわ。これからどうする?』
『喘息かなんだかしらねーけど、たかが生徒一人亡くなっただけで騒ぎすぎなんだよ。せっかくの飯が不味くなる。なぁ、倫子、保健室の先生探すフリして逃げたのは正解だったな』
『そうね。責任がここにきたら困るから、警備員とあの生徒二人に押し付けましょ。適当に理由つけて、学校に来れない形にすればいいのよ。あの警備員学園長派だから追い払うのに丁度良かったわ』
『だいたい、志村だっけ? ガキの癖に俺に刃向かうなんておかしいんじゃねーの。学校で騒ぎ過ぎなんだよ。今どきの奴は根性ねーなー。俺、くたばった奴の両親に怒られたくないんだけど』
「こ、こんなの、嘘よ!! わ、私、言ってない!」
「合成よね?」
「てめぇー、なんのつもりだ!!」
俊治は机をドンドン叩く。
「田丸先生、学園長の前です。言葉を慎みなさい」
「うるせー、このもやしの癖に!! お前らが消えれば、この学校支配できるのに!」
「こんな老害学園長なんか誰も望んでないわ。これからは佐久間倫子の時代なのよ。とっととご隠居されたらどうです? 私は若い人にこの学校に携わってもらいたいだけです」
倫子は強く言い切ってる割にはひどく狼狽していた。
顕信、学園長、そして加奈子から色々と証拠を見せられる。
よろず屋ななつ星が送ったもの、掲示板に書かれたもの、そして二人のSNSのアカウントなどなど・・・・・・。
しかし二人は未だに不倫及び神原千夏の件を求める気がない。
「お前らこんなに紙クズ見せて俺に勝ったつもりか?」
「ええ、これほど沢山出てきてますから。あなた随分と人の人生を潰してきたみたいですねー。面の皮が厚いというか・・・・・・」
顕信はよろずやななつ星が送った書類を見せる。
――田丸健史は中学の時、癇癪を起こし同級生を
突き落とし死亡させた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
結婚式の日取りに変更はありません。
ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。
私の専属侍女、リース。
2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。
色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。
2023/03/13 番外編追加
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)
青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。
ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。
さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。
青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる