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4章

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 妹を見送った三日後、緊急保護者会が開かれ、詳細を聞きに行った。
 三年生の保護者が体育館にパイプ椅子に座って、妹の担任からの説明を受ける。
 警察の言う通り、田丸が妹を突き落としたと。
 事の発端は修学旅行の班決め。
 田丸は妹のグループに入りたいといった。
 そして担任はいつものように、田丸を妹のグループに入れるように言った。まるで当たり前だと言わんばかりに。
 妹は当然断った。夏休みの三者面談で散々田丸と離れたいと言ったのだから。
 担任もその場で同意した。
 グループ決めの時妹のところは男女合わせて六人になっていた。
 なぜわざわざ田丸をグループに入れないといけないのかと妹は抗議した。
 もし入ったら二泊三日、宿泊以外全部田丸と一緒にいなければならない。
 何かしでかしたらまずいので、妹達がつきっきりで見なければいけない。
 そうすると妹のグループは田丸の世話係で修学旅行が終わってしまう。
 かと言って田丸をすすんで引き取るグループはなかった。
 すると田丸は妹を掴み、「しーちゃんと一緒じゃない嫌だ嫌だ!」とキーキー甲高い声で騒ぎ、衝動的に妹を突き落とした。
 突き落とす前に、クラスメイトの力自慢の男子達が数人で止めようとしたが、何せ体格がよく、力がかなりあるので、難しかった。
 止めた人の中には怪我をした人がいた。
 そこから救急車や警察がきて私達家族に連絡が来た。
 経緯を一通り話した後、保護者から質疑応答が始まった。
 病気とわかってて何故何も対策しなかったのか、田丸に専門の人をつける気はなかったのかなど保護者から厳しい質問がぶつけられた。
 妹の担任は再発防止に努めますしか言わず、今後口外するのを禁止としますで締め括られた。
 
 ――再発防止も何も妹はもう返って来ない。

  保護者会の担任の対応が事勿れ主義すぎて乾いた笑いしか出なかった。
  私の両親も呆れていた。
  他の保護者達も後で「ないわーこの担任」と話してたのを聞いて、評判ガタ落ちを確信した。
 その後妹の代は修学旅行はなしで、保護者会からの一週間後、半日だけ山奥に行って飯盒炊爨はんごうすいさんになった。
 妹の友人から聞かされたが、テンションが低く楽しめなかったと。
 妹を突き落とした田丸は何事もなかったかのように参加してた。
 保護者やクラスメイトは参加するのはやめてほしい。せめて参加するなら、見守りの先生をつけて欲しいと訴えてた。
 しかし、担任は見守りの先生なしで参加し、誰かのグループに入りそこでつきっきりにしてもらうと。
 しかも田丸の両親がまた差別だなんだ騒ぎだしたので、しぶしぶ受け入れることに。
 妹の友人のグループに田丸が入った。
 飯盒炊爨の最中に田丸は邪魔をしてばかりで、楽しい所か最悪の思い出だと言っていた。
 田丸が周りから顰蹙ひんしゅくを買ってる状況下でよく参加できたと私は感心した。
 
 私達家族は学校と田丸一家と話し合った。
 それも数年に渡ってだ。
「今回は誠にお気の毒ですが……」
「彼は病気なので仕方ないのです」
「子どもがやったことなので……」
 話し合いしてもこの言葉しか返って来なかった。
 挙句の果てには裁判沙汰になった。
 裁判が終わったのが今から数年前。

 ――被告人を無罪とする。

 裁判所で無罪の単語が出た瞬間、私の足が崩れ落ちた。


   
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