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2章
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また長々とスクリーンショットで志村真凜の思いが綴られていた。
友人を亡くして、挙句学校に来るなと言われて誰が納得するだろうか。
田丸がやってることは力や恐怖で支配している。
喘息持ちの生徒を無理やり走らせるわ、吸入薬ぶん投げるわ、生徒に蹴り入れるわと無茶苦茶である。
これが引き金で生徒一人死んでいるのである。
校長先生は何も言わず、田丸の事に同調していて、保護者会で「うちは無関係です。むしろ騒ぎ起きて、評判ガタ落ちしそうだから被害者です」とアピールしているだけ。
これでは責任を中学出たての子ども達に押し付けてるだけではないか。
真凜のスクリーンショットの内容はあっという間に拡散されていく。
すずらんは真凜のアカウントをスクリーンショット及び魚拓をして保存する。
――こんな理不尽な仕打ち、黙って見過ごせる訳がない。
「ねえ、すいせん」
隣で画像分析をしていたすいせんに声をかける。
「これ、スクショしたの」
すずらんはすいせんに真凜のアカウントを見せる。
「うわぁー、ひでぇ……嘘でしょ?! あの保護者会で校長が言ってるのガチじゃん。これ、生徒に責任押し付けてるだけじゃん。自分達はどっかいっててさーそりゃ、保護者キレるよ・・・・・・一人の生徒が亡くなってってるのよ?! 確か藤ノ宮女子高校よね? これは制裁が必要ね。あとはそれに準じる証拠」
「とりあえずまず、あの人達に電話させたら? このアカウント拡散されてる最中なら盛り上がるわー。多分この子も色々やられるかもしれないけど、アカウントの節々個人情報特定要素あるからね。もう家だいたい分かった」
すずらんとすいせんは気合いを入れる。
すいせんはある場所に電話をかけた。
「じゃーお願いねー」
「あとはー校長と田丸という人の個人情報ね・・・・・・」
すずらんは検索ワードに、校長と田丸の名前を入れる。
田丸が実名制のSNSをしているのが見つかった。
「すいせん、これ、田丸っぽい」
全世界に公開してるそうだ。
アイコンは腕を組んで偉そうにしている姿。
プロフィールには体育教師であること、歳は四十八歳であること、娘と息子がいることが書かれていた。
直近の更新は新しい場所で体育を教えることになった内容。
家族でバーベキューをした、温泉に行った内容など。
バーベキュー出来る庭がある。
それなりに裕福であることが伺える。
庭の写真には駐車場が写っている。
白のワンボックスカーに自転車。
一つ気になるのが、田丸の投稿に毎回同じ人間がコメントしていることだ。
「このアカウントの人怪しいわ。てか校長よね? 佐久間倫子」
真っ黒な猫がびっくりしたようなアイコン。
"sakuma michiko”のローマ字。
アカウントを見るためにリンク飛ぶが、非公開設定にされている。
「まじか、見れないじゃん!」
すずらんは小さく舌打ちをする。
「待って、申請すればいいのよ。一かバチかで」
非公開設定のアカウントには申請が必要である。
申請しても通る保証はない。
すずらんはダメ元で、”sakuma michiko”のアカウントに申請する。
「ちょっと疲れたからコーヒー飲むー」
すずらんは席を立って、給湯室に向かう。
コーヒーカップ片手に部屋に戻ると、すいせんから「申請承認された」ときた。
申請したのは十一時、承認されたのはその十分後。
仕事してるのか? あの校長。
何か弱みがないかと宝物を探す子どものような目で、画面をスクロールしていく。
湖のコテージとそこで食事したと思われる写真。
湖には男性が遠目で見える距離にいる。
食事の写真は魚介類のカルパッチョ。
『今日は二つ星町の奥にある湖に行きました!』
『ここから見える景色は最高』
別の日にはホテルで豪華なご飯を食べたと言わんばかりに、すき焼き鍋と香の物と味噌汁が並んだもの。
向かいに写っている男性は紺色の作務衣だった。
部屋の窓からわずかに電車が見える。
いずれも田丸が『今日はありがとう。楽しかった』とコメントしている。
返してないようだ。
「これさ、特定できそう? 監督の家でバーベキューしたのと、校長が行ったレストランとホテル」
「任せて! このホテルの場所は電車が見えるね。電車の特定でわかるかも。そこはみみずくにお願いしよう」
「なんか呼びました?」
奥から男性が出てきた。
マッシュルームヘアでべっ甲柄のスクエアメガネ。
まん丸とした顔つきはどこか幼さを残している。
紺色の半袖シャツと白の半ズボン。なのに柄物のサンダル。
「会社にサンダルってまずいよー。いくらここが服装自由とはいえ。まさか、マッチングアプリで出会った女の子とデートでこの格好で行ってないよね?!」
すいせんが呆れたように言う。
「えっ、これで行きましたけど?」
あっけらかんというみみずくに、すずらんとすいせんは肩を落とした。
なんというか、女性ウケよくない格好なんだと思う。
半ズボンの男性嫌がる女性は少なくない。
「みみずくよ、この格好は女の子ウケしないよ。で、結果は?」
「『用事が出来たので』って言われました。これ、遠回しに断られてますよね・・・・・・プロフィールの写真と同じ格好の方がすぐわかると思って」
すいせんは「そういうとこだよ!」という。
とはいえ、食事に行けるまでになったのだから、大きな進歩である。
最初はやりとりが一回、二回で終わってたのだから。
そこですいせんが女性とのやりとりについて指南した。
服装や言葉遣い、写真の写り方など。
そしてようやく食事のお誘いになったのがつい最近だった。
「・・・・・・あれ、このレストラン、”まんてん”ってとこじゃないですか? 二つ星町の湖の近くにある所」
「知ってるの?」
「この間女の子と食事するのに予約した所です。結局ドタキャンされて、一人で食ったんです」
「それ、いつだっけ?」
「えーっと、四月の十四日かな」
すずらんは心強い味方をみつけガッツポーズをする。
これはラッキーだ。
「みみずく以外に人いた?」
「・・・・・・えーっと、確か男性と女性が向かい合って座ってました・・・・・・もしかして、藤ノ宮の案件に絡んでます?!」
みみずくの目が爛々と輝きだした。
友人を亡くして、挙句学校に来るなと言われて誰が納得するだろうか。
田丸がやってることは力や恐怖で支配している。
喘息持ちの生徒を無理やり走らせるわ、吸入薬ぶん投げるわ、生徒に蹴り入れるわと無茶苦茶である。
これが引き金で生徒一人死んでいるのである。
校長先生は何も言わず、田丸の事に同調していて、保護者会で「うちは無関係です。むしろ騒ぎ起きて、評判ガタ落ちしそうだから被害者です」とアピールしているだけ。
これでは責任を中学出たての子ども達に押し付けてるだけではないか。
真凜のスクリーンショットの内容はあっという間に拡散されていく。
すずらんは真凜のアカウントをスクリーンショット及び魚拓をして保存する。
――こんな理不尽な仕打ち、黙って見過ごせる訳がない。
「ねえ、すいせん」
隣で画像分析をしていたすいせんに声をかける。
「これ、スクショしたの」
すずらんはすいせんに真凜のアカウントを見せる。
「うわぁー、ひでぇ……嘘でしょ?! あの保護者会で校長が言ってるのガチじゃん。これ、生徒に責任押し付けてるだけじゃん。自分達はどっかいっててさーそりゃ、保護者キレるよ・・・・・・一人の生徒が亡くなってってるのよ?! 確か藤ノ宮女子高校よね? これは制裁が必要ね。あとはそれに準じる証拠」
「とりあえずまず、あの人達に電話させたら? このアカウント拡散されてる最中なら盛り上がるわー。多分この子も色々やられるかもしれないけど、アカウントの節々個人情報特定要素あるからね。もう家だいたい分かった」
すずらんとすいせんは気合いを入れる。
すいせんはある場所に電話をかけた。
「じゃーお願いねー」
「あとはー校長と田丸という人の個人情報ね・・・・・・」
すずらんは検索ワードに、校長と田丸の名前を入れる。
田丸が実名制のSNSをしているのが見つかった。
「すいせん、これ、田丸っぽい」
全世界に公開してるそうだ。
アイコンは腕を組んで偉そうにしている姿。
プロフィールには体育教師であること、歳は四十八歳であること、娘と息子がいることが書かれていた。
直近の更新は新しい場所で体育を教えることになった内容。
家族でバーベキューをした、温泉に行った内容など。
バーベキュー出来る庭がある。
それなりに裕福であることが伺える。
庭の写真には駐車場が写っている。
白のワンボックスカーに自転車。
一つ気になるのが、田丸の投稿に毎回同じ人間がコメントしていることだ。
「このアカウントの人怪しいわ。てか校長よね? 佐久間倫子」
真っ黒な猫がびっくりしたようなアイコン。
"sakuma michiko”のローマ字。
アカウントを見るためにリンク飛ぶが、非公開設定にされている。
「まじか、見れないじゃん!」
すずらんは小さく舌打ちをする。
「待って、申請すればいいのよ。一かバチかで」
非公開設定のアカウントには申請が必要である。
申請しても通る保証はない。
すずらんはダメ元で、”sakuma michiko”のアカウントに申請する。
「ちょっと疲れたからコーヒー飲むー」
すずらんは席を立って、給湯室に向かう。
コーヒーカップ片手に部屋に戻ると、すいせんから「申請承認された」ときた。
申請したのは十一時、承認されたのはその十分後。
仕事してるのか? あの校長。
何か弱みがないかと宝物を探す子どものような目で、画面をスクロールしていく。
湖のコテージとそこで食事したと思われる写真。
湖には男性が遠目で見える距離にいる。
食事の写真は魚介類のカルパッチョ。
『今日は二つ星町の奥にある湖に行きました!』
『ここから見える景色は最高』
別の日にはホテルで豪華なご飯を食べたと言わんばかりに、すき焼き鍋と香の物と味噌汁が並んだもの。
向かいに写っている男性は紺色の作務衣だった。
部屋の窓からわずかに電車が見える。
いずれも田丸が『今日はありがとう。楽しかった』とコメントしている。
返してないようだ。
「これさ、特定できそう? 監督の家でバーベキューしたのと、校長が行ったレストランとホテル」
「任せて! このホテルの場所は電車が見えるね。電車の特定でわかるかも。そこはみみずくにお願いしよう」
「なんか呼びました?」
奥から男性が出てきた。
マッシュルームヘアでべっ甲柄のスクエアメガネ。
まん丸とした顔つきはどこか幼さを残している。
紺色の半袖シャツと白の半ズボン。なのに柄物のサンダル。
「会社にサンダルってまずいよー。いくらここが服装自由とはいえ。まさか、マッチングアプリで出会った女の子とデートでこの格好で行ってないよね?!」
すいせんが呆れたように言う。
「えっ、これで行きましたけど?」
あっけらかんというみみずくに、すずらんとすいせんは肩を落とした。
なんというか、女性ウケよくない格好なんだと思う。
半ズボンの男性嫌がる女性は少なくない。
「みみずくよ、この格好は女の子ウケしないよ。で、結果は?」
「『用事が出来たので』って言われました。これ、遠回しに断られてますよね・・・・・・プロフィールの写真と同じ格好の方がすぐわかると思って」
すいせんは「そういうとこだよ!」という。
とはいえ、食事に行けるまでになったのだから、大きな進歩である。
最初はやりとりが一回、二回で終わってたのだから。
そこですいせんが女性とのやりとりについて指南した。
服装や言葉遣い、写真の写り方など。
そしてようやく食事のお誘いになったのがつい最近だった。
「・・・・・・あれ、このレストラン、”まんてん”ってとこじゃないですか? 二つ星町の湖の近くにある所」
「知ってるの?」
「この間女の子と食事するのに予約した所です。結局ドタキャンされて、一人で食ったんです」
「それ、いつだっけ?」
「えーっと、四月の十四日かな」
すずらんは心強い味方をみつけガッツポーズをする。
これはラッキーだ。
「みみずく以外に人いた?」
「・・・・・・えーっと、確か男性と女性が向かい合って座ってました・・・・・・もしかして、藤ノ宮の案件に絡んでます?!」
みみずくの目が爛々と輝きだした。
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