上 下
52 / 53

52話

しおりを挟む
「そうだよ」

 確かに海での告白というのはシチュエーションとして最高と言えるだろう。告白するならそこだろう。しかし、

「どうして私にそこまでして告白させたがるんだ?メリットなんて一切無いだろう?」

 カメラを持ってきていて告白までの流れを撮影したいのであれば私たちをダシに動画を伸ばしたいのだと考えられる。

 しかし、冴木は録画に使える道具は一切持っていない。

 一応私の告白に関する流れを生配信や動画などで語ることも可能だろうが、それをメリットと考えるには微妙なところだろう。

 となると何が目的でこんなことをしているのだろうか。

「うーん、面白いから?」

「絶対嘘だろ」

 完全に初対面の次葉と一度会ったきりの私の恋路を見て面白いと考えるのはいくら何でも無理があるだろう。

「うん、嘘だね」

「やけにあっさり認めたな」

「バレているって分かり切っている嘘をつき続けることほど虚しいものは無いからね」

「そうか」

「でもバレた所で理由は言えないからね。絶対に」

「……大体わかった」

 その言い方は理由を言っているようなものだろう。まあ良いが。

「とにかく、分かったね?」

「分かったよ」

「そろそろ二人に怪しまれるから戻ろうか」

「……そうだな」

 私たちは花火で遊んでいる次葉とサキの元へと戻った。


「……何をやっているんだ?」

 2人の元へ戻ると、次葉が花火を10本同時に火を付けて遊んでいた。

 単純に10倍の火が出ることになるので普通に危険な行為だ。

 一応安全のためか距離は離しているが、万が一の事を考えると良くない。

「花火が異常にあるから豪勢な使い方をしているんだよ」

 私の疑問に答えたのはサキだった。

 次葉に気を取られていて気づかなかったが、しれっとサキも3本同時に火を付けていた。

「一応危険な行為だからな。配信でやったら炎上する行為だぞ」

 誰かに迷惑をかけているわけではなく、ただ自分にとって危険行為をしているという事実だけで炎上しかねないのが今のご時世である。

 大半は心配をしてくれているファンの善意だろうが、自分に非があって炎上したという事実は今後の活動に支障をきたす恐れがある。

「大丈夫だよ。配信をしているわけではないし。それに、安全には気を遣っているから」

「そうなのか?」

「うん。バケツの数を見てよ」

 そういって周囲を見渡すと、水の入ったバケツが10個に増えていた。

「なるほどな。何かあったとしてもすぐに対処できるようにしているってことか」

「そうだね。なんなら目の前の海に飛び込めば解決するしね」

 それで十分に安全かどうかはともかく、対策を取っているのであれば問題ないか。

「分かった。では私も同時に火を付けて遊ぶか」

 いくらお金があったとしても推奨されない行為をすることは難しいからな。この機会を逃したら次いつできるか分からないから経験しておくことにしよう。

「なら花火の消費も激しいだろうし見てるだけにするよ。3人で楽しんで」

 と早速花火を始めようとしていると冴木はそう言って花火が入っている袋の隣に腰を下ろした。

「別に気にすることないぞ?足りなければ足せばいいし、そもそもこの量は今の遊び方でも過剰だろう。それまでは普通に遊んでいたわけだしな」

「そう、まあでも良いかな。見ている方が楽しそうだし」

「?分かった」

 しかし断られてしまったのでそのまま3人で楽しく花火で遊んだ。

 その時の冴木の様子は本人が宣言していた通り何故か楽しそうだった。



 花火で遊び終えた後、近くの店でしらす丼を食べた後ホテルに戻った。

「じゃあそれぞれの部屋に行くってことで」

「そうだね」

「だな」

 私たちはそれぞれの部屋に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女子小学五年生に告白された高校一年生の俺

think
恋愛
主人公とヒロイン、二人の視点から書いています。 幼稚園から大学まである私立一貫校に通う高校一年の犬飼優人。 司優里という小学五年生の女の子に出会う。 彼女は体調不良だった。 同じ学園の学生と分かったので背負い学園の保健室まで連れていく。 そうしたことで彼女に好かれてしまい 告白をうけてしまう。 友達からということで二人の両親にも認めてもらう。 最初は妹の様に想っていた。 しかし彼女のまっすぐな好意をうけ段々と気持ちが変わっていく自分に気づいていく。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

処理中です...