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26話

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「確認したみたいだな。どうする?」

『滅茶苦茶受けたいです!大チャンスじゃないですか!!』

「じゃあ決まりだ。私の方からOKだと連絡しておこう」

『はい、お願いします!!!』

 もしかしたら案件が大きすぎて尻込みするかもしれないと思ったが、杞憂だったみたいだ。

 それもそうか。一番最初に私に声を掛けてきた配信者だものな。この程度でビビるわけがないか。

「分かった。じゃあ通話を切るぞ」

『はい、また明日!!』

 私はあまりにも嬉しそうなサキの様子を微笑ましく聞きながら通話を切った。


 その夜にサキの個人配信が行われたのだが、異常なまでにテンションが高すぎて事情を知らないファン達が困惑し、色んな考察が繰り広げられていた。




 それから3日後、私たちは案件先の会社にやってきていた。

「サキ、どうしてスーツなんだ?」

「当然じゃないですか!あの超有名ゲーム会社PSIGAMESさんからの案件なんですよ!?!?」

「だが私服で構わないと言われているだろ?」

「それでもやっぱりちゃんとしないといけないじゃないですか!」

「別に気にしないとは思うんだがな」

 PSIGAMESは規模の割には割と緩めの会社で、基本的にどんな服を着ても許される傾向にある。

 社長が真夏の新作ゲーム発表会にてタンクトップに短パンという元気な小学生スタイルで登壇しているくらいだからな。

 噂によると毎日コスプレをして出社している社員もいるんだとか。そんなのが許される会社で外部の人間が私服で来て怒るわけがない。

「気分の問題ですよ。ほら、いきましょう!」

「そうだな」

 妙に張り切っているサキに連れられ、ビルの中に入った。




「こちらでお待ちください」

 受付の人に要件を説明すると、応接室らしき場所まで案内された。

「応接室は意外と普通なんですね。もっとゲーム会社らしい個性的な部屋を予想していました」

「取引先は基本的に普通の会社だからだろうな。ちなみに普通だと言っているが、今サキが座っている椅子は30万くらいするぞ」

「え!?!?」

 サキは深々と座っていた椅子から飛びあがり、即座に距離を取っていた。

「ゲーム会社に居る人間は家でも椅子に座り続けている奴が多いからな。せめて良い椅子を買って負担を減らそうという考えなんだろうな」

 ゲームを作ろうがしようが椅子に座らないといけないからな。

「でも30万って……」

「別に椅子で30万だったら異常に高いってわけでは無いだろう。サキが配信で使っている椅子も10万はするだろう?」

「しないですよ。5万もいかないくらいですよ」

「それは安いな。今後長時間配信をすることを考えるのなら絶対に高いものの方が良いぞ」

「そうなんですかね……」

「ああ。お金がないというのなら余っている椅子を送るが」

「5万以上の椅子が余る……?」

「ああ。誰かが来ても共に作業が出来るように机と椅子を5セット用意したのだが、今のところ最大で3人しか来たことが無くてな」

「5セットってことは椅子だけで25万以上……?」

「机も合わせて大体200万だったか」

「にひゃく……?超大金持ちじゃないですか……」

「私は天才だからな」

「ってことは自分で……」

「ああ。だが気にするな。将来的にはサキも私と同じくらい稼げるようになる」

「そうなんですかね……」

「勿論。そして今日がその一歩だ」

「頑張ります……」


「お待たせしました」

 それから数分後、スーツではなく執事が着るような燕尾服を身に纏った高身長の男性が部屋に入ってきた。

「よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします」

「優斗さん、サキさん本日はご足労いただきありがとうございます。私は東郷悟と申します。本日はよろしくお願いします」

「はい!」

「では早速本題に入らせていただきますね」

 個人って気には何故燕尾服なのか聞いてみたかったのだが、サキが緊張のせいか全く気づく様子が無かったのでスルーすることになった。
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