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23話
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やたらと真剣な表情で私と話を求めてきたが、議題はほぼ確実に『私が林原先輩からプレゼントを貰ってずるい』である。
というのも、この加藤先輩という男はずっと林原先輩に片思い中なのだ。どのくらいガチかと言えば、林原先輩と一緒の研究室に入るために入念に情報収集を行った後、本人にバレないように偶然を装って一緒の研究室を選択したくらいだ。
これだけならただのストーカーなのだが、加藤先輩が凄いのは林原先輩と絶対に同じ研究室に入れるようGPAをずっと最大値の4.0に維持し続けているのだ。
3.0以上を維持するのであれば学部にもよるが難しすぎるということはないのだが、最高値の4.0を維持するのは至難の業だ。
というのもどれだけ優秀な生徒だったとしても、最高評点を得られるかどうかは教授の匙加減によるからだ。
答えが明確な数学のような科目であれば確実に最高評点を獲得できるようにすることも可能であろうが、うちは文学部だ。明確な答えの無い記述項目が確実に出てきてしまう。
実際に私も次葉もそれで最高評点を逃した科目はかなりある。
だからこの加藤先輩をただのストーカーとして扱うことは出来ない。
まあ、そこまでやって林原先輩に気持ちは一切届いていないのだが。
私はここまで努力したのなら最後まで頑張って成功して欲しいと思い、陰ながら応援している。
「優斗君優斗君、こっち向いてこっち向いて。加藤先輩も」
「ああ、遠藤か。分かった」
「おう」
そんな応援している先輩に嫉妬を向けられている中、声を掛けてきたのは同級生の遠藤里香。
写真を撮ることが何よりの趣味で、常に何かしらのカメラを持ち歩いている。今日は一眼レフだ。
今回は私たちの写真が撮りたいらしく、振り向くと既にカメラを構えていた。
「はい、チーズ。撮れました!」
「どんな感じだ?」
「どうぞ。良い感じに撮れてますよ」
「そうだな。かなりよく写っているな。ありがとう」
写真を撮ってもらった加藤先輩は満足げな表情で遠藤にお礼を言っていた。
「優斗君も見る?」
「そうだな。一応見ておこう」
別に見なくても私の写真写りは完璧だろうが。
「ちゃんと綺麗に撮れているな。また上手くなったか?」
「うん。この間プロのカメラマンさんに写真の撮り方を教えてもらってね。今回それを取り入れてみたんだ!」
「それは凄い。私にも見せて」
「良いですよ!」
プロの技術を得ていると聞いて興味を持った林原先輩が写真を見るべくこちらに回り込んできた。
「これは良い。ねえ、この写真私にもくれない?」
「良いですか?お二人は」
「私は問題ない」
「お、俺も問題ないぞ!」
加藤先輩は好きな人に自身が写っている写真が欲しいと言われて浮足だっていた。
「別に啓介の分は要らないけど。優斗君の分だけあれば十分」
「どうして優斗なんだ?」
「優斗は可愛いから。啓介は可愛くない。身長を20㎝は小さくして、顔を子供の頃に戻してきて」
「そうか……可愛くないからか……」
可愛くないから要らないと言われた加藤先輩は露骨にがっかりしていた。
確かに加藤先輩は可愛くないよな。身長高い上に体つきはごついし。むしろ漢という感じの見た目だ。
だけど割と繊細なんだからな。そんなド直球に要らないって言われたら寝込むぞこの人。
「お久しぶりです、皆さん。私の用事で長らく授業が出来ていなくてすみません。おや、神崎君も来ていますね。しばらく忙しいから来られないと聞いていましたが、今来ているということは仕事に片が付いたみたいですね」
「おかげさまで。しばらくは何かに追われることは無いと思います」
そんな感じでわいわいしている中入ってきたのは柴田浩文教授。この研究室の教授だ。
白髪とか温厚な見た目や話し方が相まっておじいちゃんにしか見えないが、どうやらまだ48とのこと。
「それは良かった。学業も大切ですけれど、私生活があってこそですからね。皆さんも何か用事があったらすぐに言ってくださいね」
「「「「はい」」」」
うちの文学部の教授陣は大学内でビールを飲んで闊歩したり、初回の授業でコスプレをしてくるような奇人変人が多いことに定評があるのだが、この柴田教授はそんな教授陣とは違い良識をしっかりと持った人だ。
それに加えて生徒に非常に優しく、何かあったら研究室の生徒一人一人に向き合って考えてくれるので研究室の全員から慕われている。
「では早速始めましょうか」
というのも、この加藤先輩という男はずっと林原先輩に片思い中なのだ。どのくらいガチかと言えば、林原先輩と一緒の研究室に入るために入念に情報収集を行った後、本人にバレないように偶然を装って一緒の研究室を選択したくらいだ。
これだけならただのストーカーなのだが、加藤先輩が凄いのは林原先輩と絶対に同じ研究室に入れるようGPAをずっと最大値の4.0に維持し続けているのだ。
3.0以上を維持するのであれば学部にもよるが難しすぎるということはないのだが、最高値の4.0を維持するのは至難の業だ。
というのもどれだけ優秀な生徒だったとしても、最高評点を得られるかどうかは教授の匙加減によるからだ。
答えが明確な数学のような科目であれば確実に最高評点を獲得できるようにすることも可能であろうが、うちは文学部だ。明確な答えの無い記述項目が確実に出てきてしまう。
実際に私も次葉もそれで最高評点を逃した科目はかなりある。
だからこの加藤先輩をただのストーカーとして扱うことは出来ない。
まあ、そこまでやって林原先輩に気持ちは一切届いていないのだが。
私はここまで努力したのなら最後まで頑張って成功して欲しいと思い、陰ながら応援している。
「優斗君優斗君、こっち向いてこっち向いて。加藤先輩も」
「ああ、遠藤か。分かった」
「おう」
そんな応援している先輩に嫉妬を向けられている中、声を掛けてきたのは同級生の遠藤里香。
写真を撮ることが何よりの趣味で、常に何かしらのカメラを持ち歩いている。今日は一眼レフだ。
今回は私たちの写真が撮りたいらしく、振り向くと既にカメラを構えていた。
「はい、チーズ。撮れました!」
「どんな感じだ?」
「どうぞ。良い感じに撮れてますよ」
「そうだな。かなりよく写っているな。ありがとう」
写真を撮ってもらった加藤先輩は満足げな表情で遠藤にお礼を言っていた。
「優斗君も見る?」
「そうだな。一応見ておこう」
別に見なくても私の写真写りは完璧だろうが。
「ちゃんと綺麗に撮れているな。また上手くなったか?」
「うん。この間プロのカメラマンさんに写真の撮り方を教えてもらってね。今回それを取り入れてみたんだ!」
「それは凄い。私にも見せて」
「良いですよ!」
プロの技術を得ていると聞いて興味を持った林原先輩が写真を見るべくこちらに回り込んできた。
「これは良い。ねえ、この写真私にもくれない?」
「良いですか?お二人は」
「私は問題ない」
「お、俺も問題ないぞ!」
加藤先輩は好きな人に自身が写っている写真が欲しいと言われて浮足だっていた。
「別に啓介の分は要らないけど。優斗君の分だけあれば十分」
「どうして優斗なんだ?」
「優斗は可愛いから。啓介は可愛くない。身長を20㎝は小さくして、顔を子供の頃に戻してきて」
「そうか……可愛くないからか……」
可愛くないから要らないと言われた加藤先輩は露骨にがっかりしていた。
確かに加藤先輩は可愛くないよな。身長高い上に体つきはごついし。むしろ漢という感じの見た目だ。
だけど割と繊細なんだからな。そんなド直球に要らないって言われたら寝込むぞこの人。
「お久しぶりです、皆さん。私の用事で長らく授業が出来ていなくてすみません。おや、神崎君も来ていますね。しばらく忙しいから来られないと聞いていましたが、今来ているということは仕事に片が付いたみたいですね」
「おかげさまで。しばらくは何かに追われることは無いと思います」
そんな感じでわいわいしている中入ってきたのは柴田浩文教授。この研究室の教授だ。
白髪とか温厚な見た目や話し方が相まっておじいちゃんにしか見えないが、どうやらまだ48とのこと。
「それは良かった。学業も大切ですけれど、私生活があってこそですからね。皆さんも何か用事があったらすぐに言ってくださいね」
「「「「はい」」」」
うちの文学部の教授陣は大学内でビールを飲んで闊歩したり、初回の授業でコスプレをしてくるような奇人変人が多いことに定評があるのだが、この柴田教授はそんな教授陣とは違い良識をしっかりと持った人だ。
それに加えて生徒に非常に優しく、何かあったら研究室の生徒一人一人に向き合って考えてくれるので研究室の全員から慕われている。
「では早速始めましょうか」
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