22 / 53
22話
しおりを挟む
すると、次葉は焦った顔で椅子から立ち上がった。
「力づくで見せてもらうのは申し訳ないからな。こういう手段を取らせてもらった」
私が立ち上げたのはリモートデスクトップというソフト。ネットワーク経由で自身の持つ他のパソコンを操作できる優れモノだ。
普段は外出先で自身の仕事の進捗を見せるときに使っているのだが、今回は覗き見に使用させてもらった。
「さて、別に何を描こうが次葉の自由ではあるのだが、せめて正直に話すか自分の家で見えないようにやってくれ」
描かれていたのは身長が高く美人なアルラウネがやたらと肌色面積の大きな恰好をした少年を包み込んで色んな意味で捕食しようとしている絵だった。
顔に関しては次葉の画風もあるだろうからあえて触れることは無いが、体格差はどう考えても私たちだし、包み込んでいる構図は先ほど無言で私を抱きしめてきた時のものに酷似している。
私は人の趣味嗜好に口を出すような無粋なことはしない。多種多様な趣味嗜好があるからこそ、世界には素晴らしい人間が数多く居るのだから。
だが、これはゾーニングという別の問題である。
R-18絵の元ネタになった人にその作品を見せるな。
今回は私が見に行ったこちらも悪いが、もう少し考えてくれ。せめて私の家で描くな。自分の家で描け。
「思いついたものは早く描いてしまわないと旬が過ぎるって優斗君が言ってたでしょ」
「そんなに賞味期限は早くない。数時間程度なら何も問題ない」
じゃなきゃ外で思いついたネタは全て旬を過ぎているということになるだろうが。
「……はーい」
「それでいい」
「で、正直に言ってくれれば問題ないんだよね?というわけで参考資料になってもらえるかな?」
「……」
というわけで私は次葉の気が済むまで絵の参考資料にさせられた。
後日、その絵は一般公開ではなく『メルヘンソード』の有料会員限定コンテンツで公表されたらしいのだが、大きな反響を呼び、その絵目的で有料会員になろうとする人が大量に表れたというのはまた別のお話。
その翌日、私は大学の研究室に訪れた。
最近は色々とあって来れていなかったため、久々の研究室だ。
といっても最近まで教授が意見交換会でしばらく大学に居なかったので他のメンバーも割と久々らしいのだが。
「お疲れ様です」
「おおっ!お疲れ!!」
「久しぶり!!」
「全員居るのめずらしいですね」
2限の開始時刻に来たので、半分居たら奇跡だと思っていたのだが今日は6人中5人がそろっていた。
残りの一人はそもそも来ることが稀なので実質全員が揃っているという状態だ。
「いやあああああ、相変わらず可愛いねえ可愛いねえ」
私が研究室の扉を閉めた途端、ものすごい勢いで近づいてきて私の頭をなで始めたのは4年生の野崎若菜先輩。
一応彼氏が居るらしいのでここまで激しいスキンシップは色々と問題ではないかと思うのだが、彼氏曰く私に対しての行為は大丈夫とのこと。
そんなお墨付きをもらってしまっている上、二個上の先輩なので無下にすることも出来ず、毎回なされるがままとなっている。
「はい、今日のプレゼント」
現在進行形でなでられ続けている私に対し、子供が食べていそうな棒のついた飴を渡してきたのは3年生の林原夏美先輩。
「私をいくつだと思っているんだ」
「そりゃあ見た目通りの年齢だよ。だから渡しているんじゃん」
「誰が19歳にこのタイプの飴を渡すんだ」
飴を常備していると噂の大阪のおばちゃんもこの手の飴は渡してこないぞ。
「飛び級で大学生になった優秀な12歳じゃなかったっけ?」
「日本に飛び級制度は無い。そして私の事を誰がどう見ても12歳はないだろ」
低身長だからって若く見える限度にも限界があるだろ。頑張っても高校1年生が関の山だろ。別に私は男の娘というわけじゃないんだから。
「ち、違うの!?本当に19歳!?」
「毎回毎回わざとらしい演技をするのはやめろ」
心底驚いたような表情をする林原先輩だが、この人は私に出会う度に同じくだりをやってくる。
「優斗、後で男だけの真剣な話をするぞ」
そんな話をしている私の肩を強い力で握りしめているのが同じく3年の加藤啓介先輩だ。
「考えすぎだ。わざわざ話し合う必要はないと思うが?」
「必要だ。私にとっては死活問題なんだ」
「分かった。後でゆっくり話を聞く」
「よし。今日の夜だ」
「力づくで見せてもらうのは申し訳ないからな。こういう手段を取らせてもらった」
私が立ち上げたのはリモートデスクトップというソフト。ネットワーク経由で自身の持つ他のパソコンを操作できる優れモノだ。
普段は外出先で自身の仕事の進捗を見せるときに使っているのだが、今回は覗き見に使用させてもらった。
「さて、別に何を描こうが次葉の自由ではあるのだが、せめて正直に話すか自分の家で見えないようにやってくれ」
描かれていたのは身長が高く美人なアルラウネがやたらと肌色面積の大きな恰好をした少年を包み込んで色んな意味で捕食しようとしている絵だった。
顔に関しては次葉の画風もあるだろうからあえて触れることは無いが、体格差はどう考えても私たちだし、包み込んでいる構図は先ほど無言で私を抱きしめてきた時のものに酷似している。
私は人の趣味嗜好に口を出すような無粋なことはしない。多種多様な趣味嗜好があるからこそ、世界には素晴らしい人間が数多く居るのだから。
だが、これはゾーニングという別の問題である。
R-18絵の元ネタになった人にその作品を見せるな。
今回は私が見に行ったこちらも悪いが、もう少し考えてくれ。せめて私の家で描くな。自分の家で描け。
「思いついたものは早く描いてしまわないと旬が過ぎるって優斗君が言ってたでしょ」
「そんなに賞味期限は早くない。数時間程度なら何も問題ない」
じゃなきゃ外で思いついたネタは全て旬を過ぎているということになるだろうが。
「……はーい」
「それでいい」
「で、正直に言ってくれれば問題ないんだよね?というわけで参考資料になってもらえるかな?」
「……」
というわけで私は次葉の気が済むまで絵の参考資料にさせられた。
後日、その絵は一般公開ではなく『メルヘンソード』の有料会員限定コンテンツで公表されたらしいのだが、大きな反響を呼び、その絵目的で有料会員になろうとする人が大量に表れたというのはまた別のお話。
その翌日、私は大学の研究室に訪れた。
最近は色々とあって来れていなかったため、久々の研究室だ。
といっても最近まで教授が意見交換会でしばらく大学に居なかったので他のメンバーも割と久々らしいのだが。
「お疲れ様です」
「おおっ!お疲れ!!」
「久しぶり!!」
「全員居るのめずらしいですね」
2限の開始時刻に来たので、半分居たら奇跡だと思っていたのだが今日は6人中5人がそろっていた。
残りの一人はそもそも来ることが稀なので実質全員が揃っているという状態だ。
「いやあああああ、相変わらず可愛いねえ可愛いねえ」
私が研究室の扉を閉めた途端、ものすごい勢いで近づいてきて私の頭をなで始めたのは4年生の野崎若菜先輩。
一応彼氏が居るらしいのでここまで激しいスキンシップは色々と問題ではないかと思うのだが、彼氏曰く私に対しての行為は大丈夫とのこと。
そんなお墨付きをもらってしまっている上、二個上の先輩なので無下にすることも出来ず、毎回なされるがままとなっている。
「はい、今日のプレゼント」
現在進行形でなでられ続けている私に対し、子供が食べていそうな棒のついた飴を渡してきたのは3年生の林原夏美先輩。
「私をいくつだと思っているんだ」
「そりゃあ見た目通りの年齢だよ。だから渡しているんじゃん」
「誰が19歳にこのタイプの飴を渡すんだ」
飴を常備していると噂の大阪のおばちゃんもこの手の飴は渡してこないぞ。
「飛び級で大学生になった優秀な12歳じゃなかったっけ?」
「日本に飛び級制度は無い。そして私の事を誰がどう見ても12歳はないだろ」
低身長だからって若く見える限度にも限界があるだろ。頑張っても高校1年生が関の山だろ。別に私は男の娘というわけじゃないんだから。
「ち、違うの!?本当に19歳!?」
「毎回毎回わざとらしい演技をするのはやめろ」
心底驚いたような表情をする林原先輩だが、この人は私に出会う度に同じくだりをやってくる。
「優斗、後で男だけの真剣な話をするぞ」
そんな話をしている私の肩を強い力で握りしめているのが同じく3年の加藤啓介先輩だ。
「考えすぎだ。わざわざ話し合う必要はないと思うが?」
「必要だ。私にとっては死活問題なんだ」
「分かった。後でゆっくり話を聞く」
「よし。今日の夜だ」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
女子小学五年生に告白された高校一年生の俺
think
恋愛
主人公とヒロイン、二人の視点から書いています。
幼稚園から大学まである私立一貫校に通う高校一年の犬飼優人。
司優里という小学五年生の女の子に出会う。
彼女は体調不良だった。
同じ学園の学生と分かったので背負い学園の保健室まで連れていく。
そうしたことで彼女に好かれてしまい
告白をうけてしまう。
友達からということで二人の両親にも認めてもらう。
最初は妹の様に想っていた。
しかし彼女のまっすぐな好意をうけ段々と気持ちが変わっていく自分に気づいていく。
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる