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6話

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 そして放課後、今日の分の絵を描き終えた私は次葉の家に再び向かった。

「さあさあ、入って入って」

「お邪魔するぞ」

 家の中に入った私はパソコンのある仕事部屋ではなく、その隣にあった部屋に案内された。

「こんな部屋だったか?」

 私の記憶が正しければ、この部屋は元々ビリヤード部屋だったはず。

「配信用に改造したんだ。どうせビリヤードはやらないしね」

「確かにビリヤードはやらないが、わざわざここまでするか?」

 別に次葉が配信をしたいなら仕事部屋で良いし、私も今回以後も配信をするのなら手間等の問題で自宅に設備を用意する。

 だからこの部屋は今日の為だけに用意されたものなのだ。

「そりゃあ優斗君の配信を作業部屋のパソコンで鑑賞したいからだよ」

「馬鹿じゃないのか?そもそも配信するかどうかすら確定していなかった状態で用意しただろ?」

「アレで否定された場合は、個人的に見たいから配信してくださいってお願いするつもりだったよ。それなら確実にOKだろうし」

「それはそうだが」

 次葉にそう頼まれて断る事は無いが……

「ってことでよろしく」

「分かったよ」

 次葉は私を置いて部屋から出ていった。

「とりあえず、配信に必要なものの準備をするか」

 サムネイルとBGMが配信をする上で必須だったか。で、今回の配信的にスライドの準備もしておいた方が良いよな……



「よし、準備完了だ」

 それぞれは大した作業では無かったが、やる事が多かったので準備が終わった頃には配信予定時間の直前になっていた。


 告知は次葉が全てをやってくれるという事だったので、今は気持ちを落ち着けて時を待つのみ。

「まあ、今回のメインはあくまでも絵だからな。自信を持って待ち構えていれば大丈夫だ」

 歌が大好評だったのだから、それ以上に上手い絵で不評を受けることは無いだろう。



「じゃあ、始めるか」

 それから数分が経ち、予定していた時刻になったので配信ボタンを押した。

「やたら人が来ているな……」

 まだ配信ボタンを押しただけで、声すら出していない状況なのに既に1000人を超える視聴者が集まってきていた。

 チャンネルの登録者数やツリッターのフォロワー数を考えると異常な話である。

 チャンネル登録者数1万5千人、ツリッターのフォロワー数2300人の配信者なら300人集まっただけでも超大事だって話を聞いたことがある。

 これは次葉による宣伝の結果なのだろうか。流石は大人気イラストレーターである。

「さっさとマイクとカメラをオンにするか」

 わざわざ集まってきてくれた視聴者を待たせるわけにはいかないからな。



「やあ諸君、私の配信に集ってきてくれてどうもありがとう。私は神崎優斗、大天才イラストレーターだ。よろしく」

 最初の印象は大事なので、挨拶は無難に纏めることにした。

 全てにおいて秀でた天才大学生だというのが正しい自己紹介だが、それだと快く思わない人も居るだろうからな。というわけで専門の絵だけ天才と名乗ることにした。

「ん?どうした?何かおかしい事でもあったか?」

 私としてはかなり無難な挨拶をしたと思ったのだが、コメント欄には違和感を覚えている反応ばかりが流れていた。

「そうか、ここに居る視聴者の大半は私の歌から知ったのか。それもそうだな。このチャンネルのコンテンツは歌一曲のみだったからな」

 ツリッターのフォロワー数の伸び的にも、曲だけ聞いた人が大半を占めるだろう。

「今日話す予定の内容を全て終えたら、そうだな、歌ってみたの裏話について話してみることにする。楽しみにしていてくれ」

「というわけで、今日のトーク内容はタイトルにも書いてある通り、『私の芸術性』についてだ」

「まず、前提として私の絵は素晴らしい。配信をしてみたら良いと提案してくれた次葉や、大人気イラストレーターの『RUTO』さんなどにも引けを取ることは無い。寧ろ勝っているだろう」

 私がそう断言すると、コメント欄は少々荒れていた。

 次葉もRUTOさんも日本トップクラスの人気を誇る超凄腕イラストレーターだからな。実際に私も参考にしている部分も多い。

 普通はそんな相手に勝てる実力があるなんて思うわけが無い。

 しかし、それは私の絵を見ていないからだ。

「まあ、気持ちは分かる。だが、これを見れば分かる人も居るだろう」

 そう言って私はスライドに2枚の絵を貼った。

「これは私が先月描いた絵だ。タイトルは左が『孤独』、右が『出会い』だ」
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