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5話

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 それから一週間が経った今、ツリッターのフォロワーが2300人に増加したお陰で絵への反応が目に見えて増えていた。

 それが嬉しくなっていた私は、昨日投稿した絵の反応を大学の食堂で見ていた。

「『ギャップがあって好きです』って、褒めてくれてはいるんだろうけど、そんなにギャップあるか?」

 反応が増えている事自体は嬉しいのだが、絵を純粋に褒められている気がしないのだ。どちらかといえば絵を描いている優斗という人間に好意を向けてくれているだけのような……

「いや、確かにこれは高評価だ。好意を曲解するのは良くない」

 好意的な感情を向けてくれるファンを疑うのは良くない。

 私というものが、クリエイター失格だ。

「何を見ているのかな?」

 なんてことを考えていると、次葉が私と向かい合わせの席に座ってきた。

「ああ、次葉か。昨日投稿した絵の反応を見ていたんだ」

「あれね、相変わらず上手だったよ。今回はこの間の収録をイメージして描いたんだよね?」

「そうだな」

 今回の絵は折角の貴重な体験を絵に残さないのは良くないからな。勝手に題材にさせてもらったのだ。

「クールな曲を歌っているのに心の内は熱く燃え盛っているってのが上手く表現されていて、思わず感動したよ。流石だね」

「相変わらずよく見てくれているな」

「優斗君の最初のファンだから当然だよ。それに、私が知る中でもトップクラスに絵が上手いからね」

 そんな普通なら恥ずかしがりそうなセリフを当然のように言ってくる次葉。

「それは光栄だな、ありがとう」

「で、これはまた別のお話なんだけど、今日の夜は暇だったりするかな?」

「夜なら空いているぞ。何かあるのか?もしかしてまた歌ってみたをやるのか?」

 私としては問題は無いのだが、一動画分の絵を描くのは時間がかかるし、MIXや動画作成を依頼するにも結構なお金がかかるはずだ。
 流石に二度も任せるわけにはいかないから自分の力でやりたいのだが。

「いや、今回は歌ってみたじゃなくて、生放送をやって欲しいなって思って」

「生放送?また突然どうして」

「今、優斗君は歌ってみたのお陰で注目を集めているでしょ」

「そうだな」

「だから、このタイミングで生放送を始めて、優斗君の絵の魅力を本人が解説するのはどうかなって」

「絵の魅力を私が解説?どうしてそんなことを」

 周りが考察するのならともかく、自分で解説をするってどうなんだ。面白い話をした直後にここが面白いんだよって解説するのと同じじゃないか?

「優斗君が未だに見られていない理由って、投稿している絵の芸術性が高すぎるせいだと思うんだよ」

「高ければ高いほど良くないか?」

 もっと芸術性が高まれば、もっと人気になって当然である。

「本来ならね。実際芸術性が高い絵を描いて人気を博しているイラストレーターもいらっしゃるし」

「次葉とかな」

「ありがとう。だけど、優斗君はそれの遥か上を行っているんだ。そうなると、普通の人たちは凄いじゃなくて、どう見れば良いのか分かんないって感想になっちゃうんだよ」

「なるほど」

「だから、優斗君が解説してあげることで皆に理解してもらえばより楽しんで貰えて、絵もより広まっていくんじゃないかなって」

「なるほど、確かに良い案かもしれない。でもそれなら、私が大衆に理解しやすいようにレベルを下げた方が早いんじゃないか?」

 レベルが高すぎることが原因なら、皆のレベルを上げるよりも私のレベルを下げる方が建設的だ。

「それは駄目。大衆受けするようにって理由でレベルを下げた瞬間それは駄作になるから。それに私は今の優斗君の絵が見たいよ」

「すまん、私の考えが悪かった。なら今日配信すれば良いんだな?」

「うん。だから今日の夜、私の家に来てもらえるかな?」

「ああ。分かった」

 昼食を食べ終えた私たちはそれぞれ授業に向かった。
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