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28話
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「じゃあ取ってくるね。渚くんは部屋で待ってて」
「は、はい」
俺は大人しく部屋に戻り、ゆかりさんを待っていることにした。
「お待たせ、渚くん。……何で正座してるの?好きに座って良いよ?」
「そうですね」
お姉さんが食事を持ってきてくれるという神イベントを前にしたせいで、思わず畏まってしまっていた。心構えとしては素晴らしいのだが、弟としてこの行動は間違い以外の何者でもない。
「じゃあこれ使っても良いかな?」
「構いませんよ」
ゆかりさんが近くに置いてあった座布団を指差したので、当然許した。
しまった。ゆかりさんが来るんだから先に用意しておかないとじゃないか。馬鹿なのか俺は。緊張する前にすることがあるだろうが。
「今日頼んだのはこれだよ」
そう言って袋から取り出し、机に置いたのはピザと寿司だった。しかもそれぞれ二人前。
「この二つですか?」
どちらも出前で頼む王道の品だけどさ。同時に頼むのは王道では無いんですよね。寧ろ邪道に足を踏み入れてしまう奴なんですよ。
「うん。だって二つとも美味しそうじゃない?」
「確かにそうですけど」
寿司もピザも同時に食えるってのは最高だよ。どっちも美味いんだから幸福の2乗でやばいことは分かるよ。
「なら今日くらいは良くないかな?いつもは健康に気を使った食事をしているわけだし」
「……そうですね」
ゆかりさんの悪い笑顔に絆されつつ、内心猛反省していた。
そりゃあそうだよ。お姉さんとは言ってもゆかりさんは女子大学生なんだ。たまにはジャンクフードを食べたいし、バカ食いもしたいよ。
そんな感情を健康に生きて欲しいという俺のエゴで抑えつけてしまっていたんだ……
完全に弟として失格だよ俺は。
今後は合間合間にそういう食事を挟んだりしないと。
「じゃあ早速食べよっか」
「ですね」
そんな反省はゆかりさんが帰ってからいくらでも出来るので、今は目の前の食事などを楽しもう。
「「いただきます」」
「美味しいですね」
ピザも寿司も1年ぶりくらいに食べたが、やっぱり美味しい。
特にお寿司。こんなに美味かっただろうか。
どのネタも十分に脂がのっているのに脂っこさが無いし、寧ろさっぱりしている。
やばい、明日の食事が刺身定食になってしまう。ここら辺は魚が高いっていうのに。
「だね。奮発した甲斐があったよ」
「もしかして……?」
「うん。ピザの方はそういうお店を知らないから普通のだけど、お寿司は回転寿司のじゃなくて回らない所の特上寿司だよ」
「……え?」
「だって疲れた時は良い物食べたいでしょ?」
「えっと、高校生にとっては回転寿司の時点で良い物なんですけど」
寿司、ピザ、焼き肉等は最低グレードでも高校生なら良い飯なんだ。
「そうなんだ。あそこまで美味しいご飯を毎日作れるから舌が肥えてるかなって思っていたんだけど」
「別にそんなことは無いですね」
使っているのはあくまで普通の食材だから言っても作れる料理のレベルには限度がありましてね。
食戟やってる人レベルの料理技術を投入すればどうにかなるんだろうけど、そこまでの時間を掛ける余裕はいくら姉命の俺にも無いです。
頼まれたら当然やるけれども。
「そうなんだ。まあ、折角の機会だし良いじゃん」
「そんな軽い話ですか……?」
「うん。この間給料日だったから懐も温かいしね」
「給料日、ですか?」
「言ってなかったっけ?私家庭教師やってるんだよ」
「え……?」
家庭教師……だと……?
この美人で巨乳でおっとり系のお姉さんが家庭教師?
誰だよそんな神環境で勉強を教わっている奴は……?ゆかりさんは忙しいんだぞ!!!!
「時間の問題で週に2回、しかも2時間ずつしかやってないんだけどね」
週4時間か。ってことはつまり月で16時間か。
「それだけだったら今日の食費だけで半分くらい無くなりませんか?」
家庭教師の相場通りだと1時間2000円で、月に3万2千円。
そして今日頼んだ出前は安めに見積もっても累計で1万5千円に行かないくらい。
もしそれ以上に安くなったとしても結構な割合が吹っ飛ぶのは間違いなしである。
「いや、別にそんなことないよ。月に8万円位貰っているし」
「8万……ですか?」
家庭教師ってそんなに稼げるっけ?
「うん。東央医学部生だからってことで時給5千円位貰っているんだよ」
「何ですかそれ」
家庭教師馬鹿稼げるじゃないですか。普通にその時給でフルタイム働いたら月80万貰えるんですが。
「世間の難関大志望者って受験のために結構お金を掛けているらしいから、この程度の支出なら当然なんだって」
「受験って怖いですね」
「ね~」
うん、ゆかりさんもその受験を乗り越えてきたんですよ。
多分意識してなかったから知らないんだろうけど。
「は、はい」
俺は大人しく部屋に戻り、ゆかりさんを待っていることにした。
「お待たせ、渚くん。……何で正座してるの?好きに座って良いよ?」
「そうですね」
お姉さんが食事を持ってきてくれるという神イベントを前にしたせいで、思わず畏まってしまっていた。心構えとしては素晴らしいのだが、弟としてこの行動は間違い以外の何者でもない。
「じゃあこれ使っても良いかな?」
「構いませんよ」
ゆかりさんが近くに置いてあった座布団を指差したので、当然許した。
しまった。ゆかりさんが来るんだから先に用意しておかないとじゃないか。馬鹿なのか俺は。緊張する前にすることがあるだろうが。
「今日頼んだのはこれだよ」
そう言って袋から取り出し、机に置いたのはピザと寿司だった。しかもそれぞれ二人前。
「この二つですか?」
どちらも出前で頼む王道の品だけどさ。同時に頼むのは王道では無いんですよね。寧ろ邪道に足を踏み入れてしまう奴なんですよ。
「うん。だって二つとも美味しそうじゃない?」
「確かにそうですけど」
寿司もピザも同時に食えるってのは最高だよ。どっちも美味いんだから幸福の2乗でやばいことは分かるよ。
「なら今日くらいは良くないかな?いつもは健康に気を使った食事をしているわけだし」
「……そうですね」
ゆかりさんの悪い笑顔に絆されつつ、内心猛反省していた。
そりゃあそうだよ。お姉さんとは言ってもゆかりさんは女子大学生なんだ。たまにはジャンクフードを食べたいし、バカ食いもしたいよ。
そんな感情を健康に生きて欲しいという俺のエゴで抑えつけてしまっていたんだ……
完全に弟として失格だよ俺は。
今後は合間合間にそういう食事を挟んだりしないと。
「じゃあ早速食べよっか」
「ですね」
そんな反省はゆかりさんが帰ってからいくらでも出来るので、今は目の前の食事などを楽しもう。
「「いただきます」」
「美味しいですね」
ピザも寿司も1年ぶりくらいに食べたが、やっぱり美味しい。
特にお寿司。こんなに美味かっただろうか。
どのネタも十分に脂がのっているのに脂っこさが無いし、寧ろさっぱりしている。
やばい、明日の食事が刺身定食になってしまう。ここら辺は魚が高いっていうのに。
「だね。奮発した甲斐があったよ」
「もしかして……?」
「うん。ピザの方はそういうお店を知らないから普通のだけど、お寿司は回転寿司のじゃなくて回らない所の特上寿司だよ」
「……え?」
「だって疲れた時は良い物食べたいでしょ?」
「えっと、高校生にとっては回転寿司の時点で良い物なんですけど」
寿司、ピザ、焼き肉等は最低グレードでも高校生なら良い飯なんだ。
「そうなんだ。あそこまで美味しいご飯を毎日作れるから舌が肥えてるかなって思っていたんだけど」
「別にそんなことは無いですね」
使っているのはあくまで普通の食材だから言っても作れる料理のレベルには限度がありましてね。
食戟やってる人レベルの料理技術を投入すればどうにかなるんだろうけど、そこまでの時間を掛ける余裕はいくら姉命の俺にも無いです。
頼まれたら当然やるけれども。
「そうなんだ。まあ、折角の機会だし良いじゃん」
「そんな軽い話ですか……?」
「うん。この間給料日だったから懐も温かいしね」
「給料日、ですか?」
「言ってなかったっけ?私家庭教師やってるんだよ」
「え……?」
家庭教師……だと……?
この美人で巨乳でおっとり系のお姉さんが家庭教師?
誰だよそんな神環境で勉強を教わっている奴は……?ゆかりさんは忙しいんだぞ!!!!
「時間の問題で週に2回、しかも2時間ずつしかやってないんだけどね」
週4時間か。ってことはつまり月で16時間か。
「それだけだったら今日の食費だけで半分くらい無くなりませんか?」
家庭教師の相場通りだと1時間2000円で、月に3万2千円。
そして今日頼んだ出前は安めに見積もっても累計で1万5千円に行かないくらい。
もしそれ以上に安くなったとしても結構な割合が吹っ飛ぶのは間違いなしである。
「いや、別にそんなことないよ。月に8万円位貰っているし」
「8万……ですか?」
家庭教師ってそんなに稼げるっけ?
「うん。東央医学部生だからってことで時給5千円位貰っているんだよ」
「何ですかそれ」
家庭教師馬鹿稼げるじゃないですか。普通にその時給でフルタイム働いたら月80万貰えるんですが。
「世間の難関大志望者って受験のために結構お金を掛けているらしいから、この程度の支出なら当然なんだって」
「受験って怖いですね」
「ね~」
うん、ゆかりさんもその受験を乗り越えてきたんですよ。
多分意識してなかったから知らないんだろうけど。
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