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5話
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俺を引き留めたのは志田麗華先輩。綺麗な黒髪ロングが良く似合うクールビューティーな女性だ。そして生徒会の副会長を務めており、俺の第三のお姉さんでもある。
「どうせ暇だろう?私に付いてこい」
「え、昼ご飯食べてないんですけど……」
「嫌なら秘密をばらしても良いんだぞ?」
「それだけは止めてください」
この人は俺が本気を隠しているという事実を何故か突き止めており、それを使って脅してくるのだ。
しかもこの人の要件は大抵面倒なものなんだ。
だからお姉さんの呼びかけた相手が近くに居た別の人だったことにして逃げようと思ったのだが、流石に通用するわけが無かった。
「では行くぞ」
そう言って志田先輩は俺の手を掴んで引っ張っていった。
「えっと、俺の手を掴む必要ってあります?」
この状況を色々と見られたら不味いんだけど。
傍から見れば仲良く手を繋いで歩いている男女なんですよこれ。
「もしかしたら逃げ出すかもしれないからな」
「逃げ出しませんから、普通に連れていってください」
本気を出していない事がバレたら確実に面倒な事になるし、最悪の場合学校側とかから東央大学とかの日本最上位の所を受験させられかねないんだ。
だから断れるわけがないじゃないですか。
そもそもお姉さんの頼みは断ってはいけないんですけど。
「いや、このままで良い」
しかし志田先輩は頑として手を離さない。
お願いですから自分の魅力を理解してください。
せめてクラスメイトに見られていないようにと祈りつつ、連行されていった。
「では、これを頼む」
連れてこられたのは案の定生徒会室で、渡されたのは大量の書類。
「これは?」
2学期分の部費の振り分け表だ。まずは確実に必要なものだけを振り分けて計算してくれ。
「それを俺がしても大丈夫なんですか?生徒会じゃないんですよ?」
「何を言う。会計だろうが」
「会計じゃないですけど」
表向きにも、裏向きにも現生徒会に会計は居ないことになっているんですよ。
「文句があるのか?」
「いえ……」
表情だけで圧をかけてこないでください。怖いです。
それから30分程、志田先輩と一切会話をすることなく仕事に打ち込んだ。
ただ志田先輩は俺の仕事ぶりに興味があるようで、チラチラと覗いてきてはいたけど。
「終わりました」
「そうか、毎度のことながらご苦労だった」
「ほんとですよ……」
なんだかんだ30分で終わっているけど、本来この程度で終わらせる量じゃないんですよ。
雑談とかしながら呑気に60分とか90分とかかけて終わらせる量なんですよ。
「昼食はまだだったよな?」
「当然じゃないですか」
そんなもしかしたら食べているかもしれない、見たいなトーンで聞かないでください。どうみても飯を買いに行っていましたよね。
「そうか。ならこれをやる」
そう言って志田先輩が投げ渡してきたのは10秒でチャージできるタイプのゼリー。
「志田先輩……?」
別に嫌では無いし、むしろ美味しいから良いんですけど、ね?
「時間効率が良く、栄養もしっかり取れる完璧な食事だろ?」
ドヤ顔で言わないでください。それ不健康まっしぐらなんで。
「冗談だ。これを食べると良い」
まあ時間的にはこれが一番丁度いいしな、と思って食べようとしたタイミングで志田先輩がそんな事を言って布に包まれた小箱を渡してきた。
「お弁当、ですか?」
明らかに弁当箱のフォルムをしている。ただ志田先輩って料理をするような人だったっけ?
「まあそのようなものだ。食べ終わったら私がそのまま持ち帰るから、出来ればここで食べてくれ」
本当にそうなんだ。神様じゃないですか。お姉さんの手作りお弁当って。
「ありがとうございます」
期待に胸を膨らませて布を開くと、デパートとかで売っているようなプラスチック製の弁当箱が入っていた。
そうそう、こういうのが良いんだよ。重箱とか高級なものではなくて、庶民的な普通の弁当箱が。
こっちの方が姉感はあるし、現実味があって素晴らしいんだ。
さて、中にはどんな素晴らしい食べ物たちがあるのだろうか。
心臓をバクバクと高鳴らせながら、弁当箱の蓋を開ける。
そこに入っていたのは——
「入れ物との差!!!」
キャビア、トリュフ、伊勢海老、カニと高級食品がこれでもかと詰め込まれていた。
一応炒めた肉と白ご飯という弁当に入っていそうな普通の食材もあるんだけど、多分これもどっかの高級品だと思う。艶が凄いし。
「どうだ?美味しそうかい?」
と志田先輩は自信なさげに聞いてくる。
「そりゃあ美味しそうに決まってますよ!」
せめてこんなものを持ってくるのなら食べさせるときまで自信満々に振る舞って欲しい。
「普段料理というものは作らないのでな。とりあえず良いものに頼ることにしてみたんだ。どうやら正解だったみたいだな」
「成功はしていますけど間違いなく正解では無いです。一体いくらかかったんですか」
「分からん。ネットで『キャビア 高級』とか『松坂牛 A5』とか調べて一番上のものを値段を見ずに注文しただけだからな」
「なるほど、馬鹿ですか?」
この弁当を作る金で一年分は弁当を作れると思う。これならさっきのゼリーの方が良かった。
お腹は膨れるけど胃が痛くなるよ。
「馬鹿ではない。月の小遣いの範囲には収めてある」
一年分の弁当代が一月分の小遣いに収まるis何。
「金持ちって怖いです」
「何が怖いんだ。ただ周囲より良いものを持っただけの肉塊だぞ?」
「訂正します。志田先輩が怖いです」
人間を肉塊と表現しないでください。それは金持ちを超えた神様がするタイプの表現です。
「どうせ暇だろう?私に付いてこい」
「え、昼ご飯食べてないんですけど……」
「嫌なら秘密をばらしても良いんだぞ?」
「それだけは止めてください」
この人は俺が本気を隠しているという事実を何故か突き止めており、それを使って脅してくるのだ。
しかもこの人の要件は大抵面倒なものなんだ。
だからお姉さんの呼びかけた相手が近くに居た別の人だったことにして逃げようと思ったのだが、流石に通用するわけが無かった。
「では行くぞ」
そう言って志田先輩は俺の手を掴んで引っ張っていった。
「えっと、俺の手を掴む必要ってあります?」
この状況を色々と見られたら不味いんだけど。
傍から見れば仲良く手を繋いで歩いている男女なんですよこれ。
「もしかしたら逃げ出すかもしれないからな」
「逃げ出しませんから、普通に連れていってください」
本気を出していない事がバレたら確実に面倒な事になるし、最悪の場合学校側とかから東央大学とかの日本最上位の所を受験させられかねないんだ。
だから断れるわけがないじゃないですか。
そもそもお姉さんの頼みは断ってはいけないんですけど。
「いや、このままで良い」
しかし志田先輩は頑として手を離さない。
お願いですから自分の魅力を理解してください。
せめてクラスメイトに見られていないようにと祈りつつ、連行されていった。
「では、これを頼む」
連れてこられたのは案の定生徒会室で、渡されたのは大量の書類。
「これは?」
2学期分の部費の振り分け表だ。まずは確実に必要なものだけを振り分けて計算してくれ。
「それを俺がしても大丈夫なんですか?生徒会じゃないんですよ?」
「何を言う。会計だろうが」
「会計じゃないですけど」
表向きにも、裏向きにも現生徒会に会計は居ないことになっているんですよ。
「文句があるのか?」
「いえ……」
表情だけで圧をかけてこないでください。怖いです。
それから30分程、志田先輩と一切会話をすることなく仕事に打ち込んだ。
ただ志田先輩は俺の仕事ぶりに興味があるようで、チラチラと覗いてきてはいたけど。
「終わりました」
「そうか、毎度のことながらご苦労だった」
「ほんとですよ……」
なんだかんだ30分で終わっているけど、本来この程度で終わらせる量じゃないんですよ。
雑談とかしながら呑気に60分とか90分とかかけて終わらせる量なんですよ。
「昼食はまだだったよな?」
「当然じゃないですか」
そんなもしかしたら食べているかもしれない、見たいなトーンで聞かないでください。どうみても飯を買いに行っていましたよね。
「そうか。ならこれをやる」
そう言って志田先輩が投げ渡してきたのは10秒でチャージできるタイプのゼリー。
「志田先輩……?」
別に嫌では無いし、むしろ美味しいから良いんですけど、ね?
「時間効率が良く、栄養もしっかり取れる完璧な食事だろ?」
ドヤ顔で言わないでください。それ不健康まっしぐらなんで。
「冗談だ。これを食べると良い」
まあ時間的にはこれが一番丁度いいしな、と思って食べようとしたタイミングで志田先輩がそんな事を言って布に包まれた小箱を渡してきた。
「お弁当、ですか?」
明らかに弁当箱のフォルムをしている。ただ志田先輩って料理をするような人だったっけ?
「まあそのようなものだ。食べ終わったら私がそのまま持ち帰るから、出来ればここで食べてくれ」
本当にそうなんだ。神様じゃないですか。お姉さんの手作りお弁当って。
「ありがとうございます」
期待に胸を膨らませて布を開くと、デパートとかで売っているようなプラスチック製の弁当箱が入っていた。
そうそう、こういうのが良いんだよ。重箱とか高級なものではなくて、庶民的な普通の弁当箱が。
こっちの方が姉感はあるし、現実味があって素晴らしいんだ。
さて、中にはどんな素晴らしい食べ物たちがあるのだろうか。
心臓をバクバクと高鳴らせながら、弁当箱の蓋を開ける。
そこに入っていたのは——
「入れ物との差!!!」
キャビア、トリュフ、伊勢海老、カニと高級食品がこれでもかと詰め込まれていた。
一応炒めた肉と白ご飯という弁当に入っていそうな普通の食材もあるんだけど、多分これもどっかの高級品だと思う。艶が凄いし。
「どうだ?美味しそうかい?」
と志田先輩は自信なさげに聞いてくる。
「そりゃあ美味しそうに決まってますよ!」
せめてこんなものを持ってくるのなら食べさせるときまで自信満々に振る舞って欲しい。
「普段料理というものは作らないのでな。とりあえず良いものに頼ることにしてみたんだ。どうやら正解だったみたいだな」
「成功はしていますけど間違いなく正解では無いです。一体いくらかかったんですか」
「分からん。ネットで『キャビア 高級』とか『松坂牛 A5』とか調べて一番上のものを値段を見ずに注文しただけだからな」
「なるほど、馬鹿ですか?」
この弁当を作る金で一年分は弁当を作れると思う。これならさっきのゼリーの方が良かった。
お腹は膨れるけど胃が痛くなるよ。
「馬鹿ではない。月の小遣いの範囲には収めてある」
一年分の弁当代が一月分の小遣いに収まるis何。
「金持ちって怖いです」
「何が怖いんだ。ただ周囲より良いものを持っただけの肉塊だぞ?」
「訂正します。志田先輩が怖いです」
人間を肉塊と表現しないでください。それは金持ちを超えた神様がするタイプの表現です。
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