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「よし、やるぞ!」
今日、この世界で成人として認められる15歳になった俺は、一世一代の大決心をした。
「何をですか?」
「いや、何でもないから気にしないで」
「そうですか」
おっと危ない。この計画は誰にもバレてはいけないんだ。気を付けないと。
俺、来崎二郎は3年前、異世界のエリック・ホルシュタインというソレナ帝国という国の貴族の長男に転生した。
俺は転生者らしく、チートじみたステータスを持つ。
そしてホルシュタイン家は侯爵家という王族を除いた貴族の中で二番目に偉い身分である。しかし財力は侯爵家の範疇ではなく、一番上の貴族である公爵家に勝ってしまうほど。
また領土は安定感のある立地で、やろうと思えば自分たちの領地だけで全てを賄う事が可能だし、領民からの支持も非常に厚い。
可愛い妹や美人な婚約者も居るので、正直何もしなくても一生幸せに過ごしていけると思う位に恵まれている。
だがしかし、俺は一つだけ大きな不満があった。
それは15歳なりたてで身長178㎝という恵まれた身長から繰り出される、140㎏オーバーというゴミみたいな体重だ。
顔や身長だけ見ればどこに出しても恥ずかしくない完璧なイケメンなんだが、風貌がマ○コ・デラッ○スまんまなのだ。
別に恵まれた環境にかまけて食いすぎたとか、運動をしなかったというわけではない。
何故こうなったか。それは多分転生直前の事だと思う。
俺、来崎二郎は名前に『二郎』が付く通り二郎系ラーメンの申し子である。
二郎系を愛し、二郎系に愛された男の俺は最低でも週に3日は二郎に通っていた。
転生した日も俺はいつも通り二郎に行き、入り口で食券を買って席についた。
そして俺はやってきた相手に『全マシマシで』、と注文をした。
すると俺は来崎二郎ではなく、エリック・ホルシュタインになっていたというわけだ。
二郎を週3で食べるために健康には気を遣っていたので、病気か何かで死んだわけがないだろという俺の主張は置いておくとして、ここで重要になるのは『全マシマシで』と注文をした相手だ。
恐らくその相手が食券を受け取りに来た店員ではなく神様だったのだと踏んでいる。
それを鵜呑みにした神様は、身体能力、身分、金、環境、ルックス、自由等全てをマシマシにして転生させたのだと思う。
で、その中に体重という項目が含まれていたせいでこのザマだ。
二郎はエネルギー豊富で野菜もしっかりとれる立派な健康食。そんなものを愛していながら不健康な体というのはジロリアンとして失格だ。
というわけで痩せたいと常々考えていた。
しかし異世界の貴族としての生活に慣れることが最優先事項だったため、今まで後回しになっていたのだ。
貴族は学ぶことが多すぎた。けど、もう大丈夫。
というわけで、
「師匠!俺を痩せさせてください!」
俺は師匠の元へ訪れ、懇願した。
「ついにやるんだね、エリックも」
「うん」
その師匠の名前とはリザ。ホルシュタイン領に住む同い年の平民の女性だ。
赤髪ショートで碧眼、身長は推定165㎝。すらっとしたモデル体型の彼女は、元々俺に並ぶレベルの豊満な体の持ち主だった。
しかし2年前からダイエットを敢行して、大体1年前からこの完璧なプロポーションを維持している。
俺はその偉業を称え、師匠と呼び崇めている。
「分かった。デブ仲間のよしみとして、君の計画に参加してあげようじゃないか!」
「ありがとうございます!」
「で、いつまでの予定なの?」
「半年後、成人した貴族が集まるパーティの日までに」
そこからは侯爵家の息子ではなく、1人の貴族として扱われるからだ。
「半年ね。私の時よりも格段にキツいものになるけど大丈夫?」
「大丈夫。問題ないよ」
見た目に反して、誰よりも強い肉体を持っているからな。
「オッケー。じゃあ私が責任を持って痩せさせてあげる」
「はい、お願いします師匠!」
「まずはエリックと一緒にいるために両親を説得しないとね」
それから俺は師匠を連れ、早速両親を説得しに向かった。
「なるほど。将来専属使用人を従える為の予行練習か」
威厳のある顔で考え事をしているのは父さんであり、ホルシュタイン家当主であるイヴァン・ホルシュタイン。身長は俺と同じくらいだが、銀髪と髭が似合うイケおじだ。
「はい。リザも一度メイドをやってみたかったらしいですし、私とは長い付き合いですので、お互いに失敗したとしても問題はありませんから」
「良いじゃないかエリック!自分なりに将来の事を考えて行動したんだな!偉いぞ!」
そんな父さんは俗に言う親バカである。他の貴族と居る時はただのイケおじなのだが、それ以外の時は威厳もへったくれも無い。
「リザもありがとう!是非思うようにやってみるといい。困った時は私や使用人たちに聞いてみるんだよ!」
貴族相手だけではなく領民が居る時にも威厳のある立ち振る舞いをして欲しいものだけど、こういう所が領民に愛されているのだから何も言えない。
「はい!」
「エリックの言う事だからってそんなに安請け合いして……私たちのお金の何割かは領民の懐から出ているんですよ?分かっていますか?」
そんな父さんに対して文句を言うのは母であるイザベラ・ホルシュタインだ。親バカで全てが甘い父さんに代わって厳しく振る舞っているが、父さんと同じく非常に優しい人だ。
「分かっているさ!だから私がその分働いて稼ぐよ!」
「やめてください。それで倒れられたらもっと困ります。というわけでエリック、分かりますね?」
母さんは父さんの頭をひっぱたいた後、俺に向き直って言った。
「はい。私の小遣いから給金を支払えということですよね」
「ええ、それなら何をしようと問題ありません。ただ、友人だからと言って安価で働かせるようなことはあってはなりませんよ」
「分かっています」
「良いんですか?私経験ありませんよ?」
「それはエリックも同じことですからお互い様です」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ二人とも行きなさい。私はこの馬鹿を叱るので」
「「はい」」
あっさりと説得が済んでしまった俺たちは、今後について話すべく俺の部屋に行くことに。
「エリックって両親にあんな丁寧な話し方してたっけ?」
「そんなことはないよ。今回はリザをメイドとして雇うっていう大事な場面だったからね」
いくら家族と言っても、仕事の際はしっかりしようと母が決めたのだ。
「なるほどね」
ちなみに父さんは親バカのあまりすぐにその約束を忘れて母さんに怒られている。今回の説教もそれである。
「おにいちゃん、リザさんと何してるの?」
その道中、妹のマヤ・ホルシュタインとすれ違った。
7個下の8歳で、俺の事を慕ってくれる非常に可愛い妹だ。もし日本で生きていた時にこんな妹がいたら四六時中頭を撫でていたに違いない。
「少しの間、俺の専属使用人になってくれるんだ」
「専属使用人?このリシュリューちゃんじゃなくて?」
「私ではないのですね」
マヤの後ろに立っていたメイドのリシュリューは表情を一切変えずに悲しそうな声を出した。
リシュリューは6歳位の頃からホルシュタイン家で働いている同い年のメイドだ。身長は日本人女性の平均身長より少し高いくらいで、青髪が良く似合うメカクレ少女だ。俺と同じ15歳ながらかなり優秀で、30を超えるメイド達を率いるリーダーを務めている。
どうやら当時の俺が両親に頼んで、孤児院に居たリシュリューを家に連れて来たらしい。
「リザは予行演習に付き合ってくれるだけだよ」
「別に私で良いのではないでしょうか」
「今はホルシュタイン家の使用人でしょ。他の人に迷惑がかかっちゃうよ」
「それもそうですね」
何とかリシュリューは納得してくれたみたいだ。
「リザちゃん!」
「何?」
「リザちゃんはメイドだからね!分かってるよね?おにいちゃんはわたしのおにいちゃんだからね!」
「くれぐれも忘れないでくださいね」
リザに念押しするマヤとリシュリュー。別に俺はマヤ以外の兄にはならんだろ。
「そこはちゃんと分かってるから。ね、リシュリューさん」
「なんのことでしょうか?」
「まあいいや。仕事で分からない事があったら聞いて良い?」
「構いませんよ。使用人の育成も私の業務ですので」
「良かった。すぐお願いするね」
「かしこまりました」
「私も使用人なんだからそこまでかしこまらなくても良いよ?」
「申し訳ありません。これが素ですので」
「そっか。なら仕方ないね。じゃあいこっか、ご主人様?」
「あ、うん」
唐突にご主人様と呼ばれたので動揺してしまった。
「エリック様、分かっていますよね?」
俺がリザに腕を引っ張られ、部屋へ歩き始める前に、リシュリューが俺にそんな耳打ちをしてきた。
「大丈夫だって!」
メイドを襲うだなんて最低な真似はしないよ。
「じゃーねー!」
「じゃあね」
「またね」
マヤは俺たちの方を見ながらぶんぶんと手を振っている。やっぱり可愛いな。
今日、この世界で成人として認められる15歳になった俺は、一世一代の大決心をした。
「何をですか?」
「いや、何でもないから気にしないで」
「そうですか」
おっと危ない。この計画は誰にもバレてはいけないんだ。気を付けないと。
俺、来崎二郎は3年前、異世界のエリック・ホルシュタインというソレナ帝国という国の貴族の長男に転生した。
俺は転生者らしく、チートじみたステータスを持つ。
そしてホルシュタイン家は侯爵家という王族を除いた貴族の中で二番目に偉い身分である。しかし財力は侯爵家の範疇ではなく、一番上の貴族である公爵家に勝ってしまうほど。
また領土は安定感のある立地で、やろうと思えば自分たちの領地だけで全てを賄う事が可能だし、領民からの支持も非常に厚い。
可愛い妹や美人な婚約者も居るので、正直何もしなくても一生幸せに過ごしていけると思う位に恵まれている。
だがしかし、俺は一つだけ大きな不満があった。
それは15歳なりたてで身長178㎝という恵まれた身長から繰り出される、140㎏オーバーというゴミみたいな体重だ。
顔や身長だけ見ればどこに出しても恥ずかしくない完璧なイケメンなんだが、風貌がマ○コ・デラッ○スまんまなのだ。
別に恵まれた環境にかまけて食いすぎたとか、運動をしなかったというわけではない。
何故こうなったか。それは多分転生直前の事だと思う。
俺、来崎二郎は名前に『二郎』が付く通り二郎系ラーメンの申し子である。
二郎系を愛し、二郎系に愛された男の俺は最低でも週に3日は二郎に通っていた。
転生した日も俺はいつも通り二郎に行き、入り口で食券を買って席についた。
そして俺はやってきた相手に『全マシマシで』、と注文をした。
すると俺は来崎二郎ではなく、エリック・ホルシュタインになっていたというわけだ。
二郎を週3で食べるために健康には気を遣っていたので、病気か何かで死んだわけがないだろという俺の主張は置いておくとして、ここで重要になるのは『全マシマシで』と注文をした相手だ。
恐らくその相手が食券を受け取りに来た店員ではなく神様だったのだと踏んでいる。
それを鵜呑みにした神様は、身体能力、身分、金、環境、ルックス、自由等全てをマシマシにして転生させたのだと思う。
で、その中に体重という項目が含まれていたせいでこのザマだ。
二郎はエネルギー豊富で野菜もしっかりとれる立派な健康食。そんなものを愛していながら不健康な体というのはジロリアンとして失格だ。
というわけで痩せたいと常々考えていた。
しかし異世界の貴族としての生活に慣れることが最優先事項だったため、今まで後回しになっていたのだ。
貴族は学ぶことが多すぎた。けど、もう大丈夫。
というわけで、
「師匠!俺を痩せさせてください!」
俺は師匠の元へ訪れ、懇願した。
「ついにやるんだね、エリックも」
「うん」
その師匠の名前とはリザ。ホルシュタイン領に住む同い年の平民の女性だ。
赤髪ショートで碧眼、身長は推定165㎝。すらっとしたモデル体型の彼女は、元々俺に並ぶレベルの豊満な体の持ち主だった。
しかし2年前からダイエットを敢行して、大体1年前からこの完璧なプロポーションを維持している。
俺はその偉業を称え、師匠と呼び崇めている。
「分かった。デブ仲間のよしみとして、君の計画に参加してあげようじゃないか!」
「ありがとうございます!」
「で、いつまでの予定なの?」
「半年後、成人した貴族が集まるパーティの日までに」
そこからは侯爵家の息子ではなく、1人の貴族として扱われるからだ。
「半年ね。私の時よりも格段にキツいものになるけど大丈夫?」
「大丈夫。問題ないよ」
見た目に反して、誰よりも強い肉体を持っているからな。
「オッケー。じゃあ私が責任を持って痩せさせてあげる」
「はい、お願いします師匠!」
「まずはエリックと一緒にいるために両親を説得しないとね」
それから俺は師匠を連れ、早速両親を説得しに向かった。
「なるほど。将来専属使用人を従える為の予行練習か」
威厳のある顔で考え事をしているのは父さんであり、ホルシュタイン家当主であるイヴァン・ホルシュタイン。身長は俺と同じくらいだが、銀髪と髭が似合うイケおじだ。
「はい。リザも一度メイドをやってみたかったらしいですし、私とは長い付き合いですので、お互いに失敗したとしても問題はありませんから」
「良いじゃないかエリック!自分なりに将来の事を考えて行動したんだな!偉いぞ!」
そんな父さんは俗に言う親バカである。他の貴族と居る時はただのイケおじなのだが、それ以外の時は威厳もへったくれも無い。
「リザもありがとう!是非思うようにやってみるといい。困った時は私や使用人たちに聞いてみるんだよ!」
貴族相手だけではなく領民が居る時にも威厳のある立ち振る舞いをして欲しいものだけど、こういう所が領民に愛されているのだから何も言えない。
「はい!」
「エリックの言う事だからってそんなに安請け合いして……私たちのお金の何割かは領民の懐から出ているんですよ?分かっていますか?」
そんな父さんに対して文句を言うのは母であるイザベラ・ホルシュタインだ。親バカで全てが甘い父さんに代わって厳しく振る舞っているが、父さんと同じく非常に優しい人だ。
「分かっているさ!だから私がその分働いて稼ぐよ!」
「やめてください。それで倒れられたらもっと困ります。というわけでエリック、分かりますね?」
母さんは父さんの頭をひっぱたいた後、俺に向き直って言った。
「はい。私の小遣いから給金を支払えということですよね」
「ええ、それなら何をしようと問題ありません。ただ、友人だからと言って安価で働かせるようなことはあってはなりませんよ」
「分かっています」
「良いんですか?私経験ありませんよ?」
「それはエリックも同じことですからお互い様です」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ二人とも行きなさい。私はこの馬鹿を叱るので」
「「はい」」
あっさりと説得が済んでしまった俺たちは、今後について話すべく俺の部屋に行くことに。
「エリックって両親にあんな丁寧な話し方してたっけ?」
「そんなことはないよ。今回はリザをメイドとして雇うっていう大事な場面だったからね」
いくら家族と言っても、仕事の際はしっかりしようと母が決めたのだ。
「なるほどね」
ちなみに父さんは親バカのあまりすぐにその約束を忘れて母さんに怒られている。今回の説教もそれである。
「おにいちゃん、リザさんと何してるの?」
その道中、妹のマヤ・ホルシュタインとすれ違った。
7個下の8歳で、俺の事を慕ってくれる非常に可愛い妹だ。もし日本で生きていた時にこんな妹がいたら四六時中頭を撫でていたに違いない。
「少しの間、俺の専属使用人になってくれるんだ」
「専属使用人?このリシュリューちゃんじゃなくて?」
「私ではないのですね」
マヤの後ろに立っていたメイドのリシュリューは表情を一切変えずに悲しそうな声を出した。
リシュリューは6歳位の頃からホルシュタイン家で働いている同い年のメイドだ。身長は日本人女性の平均身長より少し高いくらいで、青髪が良く似合うメカクレ少女だ。俺と同じ15歳ながらかなり優秀で、30を超えるメイド達を率いるリーダーを務めている。
どうやら当時の俺が両親に頼んで、孤児院に居たリシュリューを家に連れて来たらしい。
「リザは予行演習に付き合ってくれるだけだよ」
「別に私で良いのではないでしょうか」
「今はホルシュタイン家の使用人でしょ。他の人に迷惑がかかっちゃうよ」
「それもそうですね」
何とかリシュリューは納得してくれたみたいだ。
「リザちゃん!」
「何?」
「リザちゃんはメイドだからね!分かってるよね?おにいちゃんはわたしのおにいちゃんだからね!」
「くれぐれも忘れないでくださいね」
リザに念押しするマヤとリシュリュー。別に俺はマヤ以外の兄にはならんだろ。
「そこはちゃんと分かってるから。ね、リシュリューさん」
「なんのことでしょうか?」
「まあいいや。仕事で分からない事があったら聞いて良い?」
「構いませんよ。使用人の育成も私の業務ですので」
「良かった。すぐお願いするね」
「かしこまりました」
「私も使用人なんだからそこまでかしこまらなくても良いよ?」
「申し訳ありません。これが素ですので」
「そっか。なら仕方ないね。じゃあいこっか、ご主人様?」
「あ、うん」
唐突にご主人様と呼ばれたので動揺してしまった。
「エリック様、分かっていますよね?」
俺がリザに腕を引っ張られ、部屋へ歩き始める前に、リシュリューが俺にそんな耳打ちをしてきた。
「大丈夫だって!」
メイドを襲うだなんて最低な真似はしないよ。
「じゃーねー!」
「じゃあね」
「またね」
マヤは俺たちの方を見ながらぶんぶんと手を振っている。やっぱり可愛いな。
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