上 下
19 / 101
3章 中年は街を手伝わない

第19話 いよいよ魔法を使ってみようって話

しおりを挟む

お気に入り設定ありがとうございます。
誤字訂正、ご意見ご感想などもお待ちしております。
作者の励みになります。
これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

-------------------------------------------------------------

リースとダンジョンに行った後、
リースとリーアの自宅兼冒険者ギルドに戻って来た。

「お疲れ様~ゆっくり休んでね~」と帰っていくリースを見送って、這う這うの体で家まで帰って爆睡した。



翌朝、

体中が痛い、筋肉痛というわけでもなく骨が筋肉がひたすら痛い。
というわけで夕方くらいまでは家で寝ていた。

さすがにお腹が減ったので夕方には一旦家を出てご飯だけ食べて、家に戻ってきた。

昨日もらったギルドカードをマジマジと眺めながら、問い逢えずMPがかなり増えた感じがして、ちょっと嬉しかった。

また魔力切れでぶっ倒れても、まぁ明日の朝まで気絶していればいいだけなので、実際に魔法をやってみることにした。

というか早く使いたくてウズウズしていた。ってのが本音なんだけどね。

土の鉢を抱えながらを手に取り、土魔法を行ってみた。

鉢の中の土がウネウネと立ち上がり、魔力のこもったその塊が、一本の棒のような形になったところで、石になった。

『おぉおぉおぉ』

と一人部屋で叫んでしまい、その出来上がった石の棒を手に取ってみた。
かすかに魔力が残っている感覚が分かる。
太さ5センチ、長さ30センチほどの石の棒をしげしげと眺めながら、生まれて初めて魔法が使えたこの奇妙な感覚に感動していた。

ひとしきり感動した後でもう一度ギルドカードを見ると、MPが20ほど減っていた。『なるほど』と勝手に何かに納得し、もう一つの雷魔法も使ってみたいと、その石の棒に向けて意識してみた。

バチッっという感覚とともに石の棒が爆ぜ、その瞬間また意識を失った。

起きたら朝だった。

しかし、手には何となく雷が手を流れた感覚が残っており、
魔法が実際に発動した感覚が確かに手のひらに残っていた。

『魔法が使えた。』

そのことだけでなんだか自分がやっとこの世界の住人になれたような、『異世界に来たんだ』という実感というものを感じた。

この3年、なんだか生活することに一生懸命で、だけどもなんだか夢の世界にいるような感覚で、朝になって目が覚めると、そこは昔居た会社通いの中年に戻るような、そんな不安というか焦燥感といったものがどこかしらで引っかかっている自分がいた。

『帰りたくない』といえばウソになる。
ユリママやツヨシに会いたくないかというと会いたい気もする。

言葉を覚え、この村の住人達と仲良くなり、『本当にコミュ障なのか?』と思えるほど、色々なことができるようになった。

新しい自分というか、どこかあこがれていた積極的な自分に何となく近づいているような喜びがあったから。

しかし、手に残るこの痺れた感覚が、『ここは夢じゃない。』
そう教えてくれているようだった。

特にチート的な能力があるわけでもなく、体力的には全盛期よりも明らかに衰えてきている自分が、何となく全盛期以上に「できる!」と感じている。

そんな感慨にふけっていた。

------ぐぅぅぅ~--------

お腹から音が鳴って、ふと夢心地から抜け出した。

とりあえず体の痛みは引いている。
若干手に痺れもあるが、時間とともに和らいできている。

<とりあえず朝ご飯を食べよう!>

と思い立ち、ベットの横の石の破片を跨いで、外に出かける準備をした。




朝ご飯を外で済ませた後、
とりあえず魔法が使えたことをニテとリースに報告しようとまずはリースのいる冒険者ギルドに向かった。

朝ご飯を食べながら、『で、今日は何しよう?』と思った時、特に今すぐやりたいことというか、やらなきゃいけないことはなかった。

最近では、不動産業というか家賃収入で食べるのに困ることはほぼない。
だから、採取や狩りに出かける必然性というものは特にない。

カリテウリテたちは今日も頑張って、
いろいろな建物を建築しているのだろうが、特に私が行かなきゃいけないってこともない。

ぼんやりそんなことを考えていたのだが、一つだけ気になったことがあった。

<2発かぁ~>

昨日、というか正確には一昨日、半ば死にそうになりながら、頑張った結果、魔法2発で気絶というところまでは来ることができた。
しかも、土魔法に関しては、植木鉢程度の土を整形しただけ。

なんかもっとこう、好きにバンバン魔法が打てるようになると勝手に想像していた自分がちょっと滑稽に思えた。

しかし、リースとの修行を今すぐ行う気にはなれない。
何となく怖い。また全身激痛状態になることを体が本能的に拒否している。

まぁしかし、実際に魔法が使えるようになったのは事実なので、リースにお礼の一言でもいっておかなければという気持ちはある。

あと、魔力切れで倒れたこと、魔力が増えれば魔法が打てるかも、というヒントをくれたニテには本当に感謝している。

というわけで、とりあえず、リースとニテにお礼を言いに行くという行動予定になった。

家から冒険者ギルドに向かっていると、ちょうど冒険者ギルドの前にニテが居た。

心の片隅に、ニテに『もう少し魔法について教えてもらいたい!』という気持ちがあったこともあり、ニテを見かけた瞬間に、声をかけていた。

「ニテさん、おはようございます。やっと魔法が使えるようになりました。」

笑顔でお礼を言いながら、ギルドカードを右手に持ちながら、ニテさんに挨拶をした。

「シュウさん、おはようございます。ん?シュウさんも冒険者になられたの?」

少し『まぁこんなところで会うなんて。』とびっくりした感じにニテさんに
ギルドカードのMP欄を見てもらうと深々とお礼を述べた。

しかし、ニテさんは『いえいえ』と恐縮しながらも、かなり驚いているようだ。

「レベル20?何かありましたの?」

ニテさんは私のMPが増えたことより、
たった3日ほどで17年分もレベルが上がっていることにびっくりしているようだった。

私は、リースさんに同行してもらい、ダンジョンでパワーレベリングをしたことを伝えると、急にニテさんが怒り出した。そのまま、出てきたばかりの冒険者ギルドに私ともども入っていくのであった。
しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレが超科学のチート人工知能の超美女とともに文芸復興を目指す物語。

あっちゅまん
ファンタジー
黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。 だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。 ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたオレはなんと蘇生されてしまったのだ。 オレを目覚めさせた超絶ボディの超科学の人工頭脳の超美女と、オレの飼っていた粘菌が超進化したメイドと、同じく飼っていたペットの超進化したフクロウの紳士と、コレクションのフィギュアが生命を宿した双子の女子高生アンドロイドとともに、魔力がないのに元の世界の科学力を使って、マンガ・アニメを蘇らせ、この世界でも流行させるために頑張る話。 そして、そのついでに、街をどんどん発展させて建国して、いつのまにか世界にめちゃくちゃ影響力のある存在になっていく物語です。 【黙示録戦争後に残された世界観及び設定集】も別にアップしています。 よければ参考にしてください。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...