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3章 中年は街を手伝わない
第19話 いよいよ魔法を使ってみようって話
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これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
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リースとダンジョンに行った後、
リースとリーアの自宅兼冒険者ギルドに戻って来た。
「お疲れ様~ゆっくり休んでね~」と帰っていくリースを見送って、這う這うの体で家まで帰って爆睡した。
◆
翌朝、
体中が痛い、筋肉痛というわけでもなく骨が筋肉がひたすら痛い。
というわけで夕方くらいまでは家で寝ていた。
さすがにお腹が減ったので夕方には一旦家を出てご飯だけ食べて、家に戻ってきた。
昨日もらったギルドカードをマジマジと眺めながら、問い逢えずMPがかなり増えた感じがして、ちょっと嬉しかった。
また魔力切れでぶっ倒れても、まぁ明日の朝まで気絶していればいいだけなので、実際に魔法をやってみることにした。
というか早く使いたくてウズウズしていた。ってのが本音なんだけどね。
土の鉢を抱えながらを手に取り、土魔法を行ってみた。
鉢の中の土がウネウネと立ち上がり、魔力のこもったその塊が、一本の棒のような形になったところで、石になった。
『おぉおぉおぉ』
と一人部屋で叫んでしまい、その出来上がった石の棒を手に取ってみた。
かすかに魔力が残っている感覚が分かる。
太さ5センチ、長さ30センチほどの石の棒をしげしげと眺めながら、生まれて初めて魔法が使えたこの奇妙な感覚に感動していた。
ひとしきり感動した後でもう一度ギルドカードを見ると、MPが20ほど減っていた。『なるほど』と勝手に何かに納得し、もう一つの雷魔法も使ってみたいと、その石の棒に向けて意識してみた。
バチッっという感覚とともに石の棒が爆ぜ、その瞬間また意識を失った。
起きたら朝だった。
しかし、手には何となく雷が手を流れた感覚が残っており、
魔法が実際に発動した感覚が確かに手のひらに残っていた。
『魔法が使えた。』
そのことだけでなんだか自分がやっとこの世界の住人になれたような、『異世界に来たんだ』という実感というものを感じた。
この3年、なんだか生活することに一生懸命で、だけどもなんだか夢の世界にいるような感覚で、朝になって目が覚めると、そこは昔居た会社通いの中年に戻るような、そんな不安というか焦燥感といったものがどこかしらで引っかかっている自分がいた。
『帰りたくない』といえばウソになる。
ユリママやツヨシに会いたくないかというと会いたい気もする。
言葉を覚え、この村の住人達と仲良くなり、『本当にコミュ障なのか?』と思えるほど、色々なことができるようになった。
新しい自分というか、どこかあこがれていた積極的な自分に何となく近づいているような喜びがあったから。
しかし、手に残るこの痺れた感覚が、『ここは夢じゃない。』
そう教えてくれているようだった。
特にチート的な能力があるわけでもなく、体力的には全盛期よりも明らかに衰えてきている自分が、何となく全盛期以上に「できる!」と感じている。
そんな感慨にふけっていた。
------ぐぅぅぅ~--------
お腹から音が鳴って、ふと夢心地から抜け出した。
とりあえず体の痛みは引いている。
若干手に痺れもあるが、時間とともに和らいできている。
<とりあえず朝ご飯を食べよう!>
と思い立ち、ベットの横の石の破片を跨いで、外に出かける準備をした。
◆
朝ご飯を外で済ませた後、
とりあえず魔法が使えたことをニテとリースに報告しようとまずはリースのいる冒険者ギルドに向かった。
朝ご飯を食べながら、『で、今日は何しよう?』と思った時、特に今すぐやりたいことというか、やらなきゃいけないことはなかった。
最近では、不動産業というか家賃収入で食べるのに困ることはほぼない。
だから、採取や狩りに出かける必然性というものは特にない。
カリテウリテたちは今日も頑張って、
いろいろな建物を建築しているのだろうが、特に私が行かなきゃいけないってこともない。
ぼんやりそんなことを考えていたのだが、一つだけ気になったことがあった。
<2発かぁ~>
昨日、というか正確には一昨日、半ば死にそうになりながら、頑張った結果、魔法2発で気絶というところまでは来ることができた。
しかも、土魔法に関しては、植木鉢程度の土を整形しただけ。
なんかもっとこう、好きにバンバン魔法が打てるようになると勝手に想像していた自分がちょっと滑稽に思えた。
しかし、リースとの修行を今すぐ行う気にはなれない。
何となく怖い。また全身激痛状態になることを体が本能的に拒否している。
まぁしかし、実際に魔法が使えるようになったのは事実なので、リースにお礼の一言でもいっておかなければという気持ちはある。
あと、魔力切れで倒れたこと、魔力が増えれば魔法が打てるかも、というヒントをくれたニテには本当に感謝している。
というわけで、とりあえず、リースとニテにお礼を言いに行くという行動予定になった。
家から冒険者ギルドに向かっていると、ちょうど冒険者ギルドの前にニテが居た。
心の片隅に、ニテに『もう少し魔法について教えてもらいたい!』という気持ちがあったこともあり、ニテを見かけた瞬間に、声をかけていた。
「ニテさん、おはようございます。やっと魔法が使えるようになりました。」
笑顔でお礼を言いながら、ギルドカードを右手に持ちながら、ニテさんに挨拶をした。
「シュウさん、おはようございます。ん?シュウさんも冒険者になられたの?」
少し『まぁこんなところで会うなんて。』とびっくりした感じにニテさんに
ギルドカードのMP欄を見てもらうと深々とお礼を述べた。
しかし、ニテさんは『いえいえ』と恐縮しながらも、かなり驚いているようだ。
「レベル20?何かありましたの?」
ニテさんは私のMPが増えたことより、
たった3日ほどで17年分もレベルが上がっていることにびっくりしているようだった。
私は、リースさんに同行してもらい、ダンジョンでパワーレベリングをしたことを伝えると、急にニテさんが怒り出した。そのまま、出てきたばかりの冒険者ギルドに私ともども入っていくのであった。
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