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2章 中年は村で暮らす。

第9話 白って綺麗だよねって話

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これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

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キジュやステインと話した翌日。
私は家の裏で少し背の高い炉を作っていた。

ちょうど昼頃、高さは1mくらいだろう。炉が完成した。

そこに改築の時に分けてもらった黒い石と
森からとってきた白い石をその炉に入れて火をつけた。
とにかく燃やす。ひたすら燃やす。
煙突効果を生かした炉で石炭をひたすら燃やしながら、
白い石をひたすら燃やしていた。

夕方近く、カリテや村の子供たちが取ってきてくれた白い石を
すべて燃やし尽くした。これでただの石英なら何ともないはずだが。。

やはり思った通り、熱で非常にもろくなった白い石は
水をかけるとパチパチと割れ始めた。生石灰の出来上がりである。

生石灰は別名[酸化カルシウム]
一部は水につけて粉々になるのを待つ。水につけておくと翌朝には熱が冷めた。
これで消石灰[水酸化カルシウム]の出来上がりである。

なぜこんなものを作ったかというと、
単純に建築材料にするためである。

いわゆる漆喰(しっくい)などの石灰モルタルを作れば、
より綺麗で強く、長持ちする家になるだろうと思っただけである。
家に余っていた板を使って自分の家の壁に漆喰を塗っていく。
暗くなって見えなくなったので寝て、翌日また壁に漆喰を塗っていく。

3日ほどかけて家の内外に塗り終わると後は乾くのを待つだけである。

「へぇ~きれいですね。家の飾りですか?」

カリテが狩りから戻ってきたところで真っ白に生まれ変わった私の家を見て、
なんだか驚いた顔をしている。

「まぁ飾りっちゃぁ飾りだけどね。こうやって白い石を処理したものを土壁に塗ると綺麗でより長持ちできる。」

「ひび割れが起きないってことですか?」

「ひび割れが起きにくいってくらいかな。そもそも土壁の土にこの白い石の粉を混ぜ込めば壁自体がより固くなるけどね。」

乾いた漆喰の壁を触りながらカリテがすごく不思議そうにそれを見ている。

「僕の家にもそれやりたいです!」

カリテはすごくウキウキした目をしながら私に『教えてくれ!』とばかりに寄ってきた。

残っていた漆喰をカリテに渡し、それでも足らない分のために作り方も教えた。

私の家が白い漆喰の家に代わってから3日後。
カリテの家も真っ白で綺麗な家へと生まれ変わっていた。
室内の壁が白くなったことで、部屋の中が明るくなったとニテも喜んでいた。

「こりゃまた何をやらかしたんだ?聖魔法か?」

その白さにびっくりしたキジュが口を開けて私の家とカリテの家を見ていた。

「これでまた少し、壁が強くなりました。」

私がそういうと、キジュは何かに勘付いたように。

「なるほどこれで外壁を作るわけか。カリテお前やり方はわかったのか?」

「うん。シュウさんから教えてもらった。」

カリテはまた嬉しそうにキジュに答えた。

その翌日からキジュの号令で村中の子供たちが参加して村の外壁工事が始まった。
10歳や11歳の子供たちが次々と白い石と黒い石を競うように運んでくる。
鍛冶のフェダも手伝いドンドン生石灰、消石灰を作り出していく。

外壁に使い土にはあらかじめ消石灰を混ぜ込むことで、
乾いた時にさらに固く強い壁になった。丸太の壁が次々と真っ白な漆喰の壁になっていく。

以前は3mほどの高さであった丸太の壁は、
高さ5m、厚さ1mほどの強固な外壁となっていった。

しっかりと乾いて固まった壁に子供たちは『えいっ』とばかりに
飛び蹴りしたり体当たりしている。
すごく固い壁が楽しくてしょうがないのだ。

以前に家を作っていた土壁は子供3人がかりで飛び蹴りをかませば
穴が開く程度の強度しかなかった。
モルタルを入れた外壁であれば大の大人が全力で飛び蹴りかましてもびくともしない。
なんせ厚さは1mもあるのだから。
これで、この村周辺の魔物くらいでは決して破られない外壁の完成した。

外壁すべてをモルタル壁にするのには4か月ほどかかったが、
出来上がった真っ白で大きな壁をみた村人たちは、
なんだか神聖なものを見るように、
またはお祈りする人も現れるようなそんな雰囲気で非常に喜んでくれた。

もちろん、仕上げの漆喰を塗ってからは、
飛び蹴り入れないように子供達にお願いしておいた。
漆喰自体は実はそれほど強度はないのだが、それを混ぜて固まった土は、
草だけを混ぜて作った土壁よりかなり強度が上がる。
そこらへんはステイン先生に説明したので、
他の村人にはステイン先生から順次説明してもらった。

キジュは出来上がりを非常に満足していたが、
強度を試したいと斧を持ち出してきたので
まぁまぁとなだめながら、斧による強度試験は延期してもらった。

「それよりもお前どうしたんだ?すごく変な恰好してるな」

キジュは純白にそびえる壁の横で奇妙な恰好をしている私を見て。
何とも言えないような感嘆の声を上げていた。

ちょうど壁が完成した日、
私の服装は今まで村でしていた腰巻と獣の皮の上着ではなくなっていた。
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