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64話

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この猪の獣人を鑑定で調べてみたが…見た目も役職も盗賊だったとはね


「そろそろ警備隊も来るでしょう

はぁ…ただの観光目的でこの国に来たのにこいつを振るうことになるとは思わなかったわ」


ピクリとも動かなくなった猪を縄で縛り付けてそのそばに立つと私は視線を移した。

小さな少女を抱きしめてもう大丈夫だと優しい声をかけているお姉さん

心打たれてしまいそうだ…というより打たれてる

本当に私って家族愛に涙流しちゃうのよね

あっ…いかん目から塩水が


「ふぅ…無事でよかったわチョコちゃん」

「カナさん…ありがとうございます!

私…ただ市場を歩いてただけなんです

ちゃんと周りに気をつけてぶつからないようにしてたのにあの猪の獣人さんが…!」


なるほど…見た感じ相手が悪い感じだな

幼女を泣かせるなんて大人がやることじゃないな

まあ私見た目幼女なんですけどね

そういえばそろそろこの大人の姿を維持するのも厳しくなってきたな

よくまあ朝から夕方まで保ったよ

それにさっきまで感知魔法と攻撃魔法を使っておきながら…ね


「ちょっと疲れたのでしばらく部屋で寝てます…ということで先に宿に帰らせてもらいます!」

「はっ…?ちょっとカナ!!」


初めて私の名前を呼んでくれたチロルに感激する反面焦りを感じていた私は路地裏の壁を登って屋根伝いに宿をめざして行った。

体力はまだまだ余裕がある…しかし魔力は少しずつ減っているから急がないとな


「半竜化…大ジャーンプ!!」


力の限り羽を動かしてより早く最短距離のルートを頭の中で考えて宿を目指した。

その様子を国民は災厄が訪れたのではないかと驚き恐れたらしい…

それを知ったのは宿に到着してこの国について調べた時である










だるい…体が重たい

宿に帰って来たのと同時に体がだるくて辛くてまっすぐ部屋に戻ってそれ以降外に出てない

とりあえずカカリさんには外で食事をしてきたのでもう寝ますと言って部屋に篭った。

やはり魔力を使いすぎた

そりゃあチョコちゃん捜索のために半径8キロメートル分の影を繋げて脳で情報処理したからな…それも二回

それだけでなく半竜化にも使ったから本来の魔力量の三分の二もの量を一日に消費してしまった。

というか魔力を大量消費するどころか脳に負担をかけすぎた

普段呼吸をするかのように変装コスプレのスキルを使ってるから余計に疲れた。

インベントリから寝具を出して、それをベッドに敷いて素早く布団に潜り込む


寝てから目覚めたのが夜中の二時


まだ頭痛はするけどさっきよりはマシな方だ


「うーん…水でも飲むか」


常に腰にぶら下げてる小さな袋に入ってるマグカップを取り出してその中に水を注ぐ

水魔法を出して飲むのも考えたけどそこまでの元気はない

よってこの水はネットショッピングで購入したものだ。


「はぁ…日本の天然水は美味えなぁ…」

「そうか…お前の故郷は衛生環境がしっかりとしているのだな」









驚かないからな

当たり前のように隣に座ってこちらを見ている黒髪イケメンには決して驚かないからな!


「不法侵入で警備隊に通報するぞ…」

「こっちは心配で来ているのにそれはどうなんだ?

それよりも…だ

やっと再会できたな…カナ」


やっと再会できたって…言うて三日か四日ぶりに再会しただけじゃない

そんなに目をキラキラと輝かせて言うことではないと思うよ

だけど、実際私の心の中ではツキカゲとまた会えたことの喜びが強かった。


「私も再会できて嬉しいよ…」


潤む瞳のせいでほんの少しだけ視界が歪む

小さな手を伸ばして背の高い彼の黒い髪に触れる

相変わらず柔らかい

あんなに硬い竜の鱗を身に纏いながらも、彼の髪の毛はこんなにも柔らかいんだ

私とお揃いの黒い髪…いつまでもこのままでいて欲しいな

あっそうだ…トーマス帝国を出る前に私がしたことについて話しておこう


「あの国を出る前に東のギルドに行ったんだ…。

そしたら驚いた

トルマーさんは私と同じ異世界から来た転生者だったの

それだけでも驚きなのにさらに驚いちゃった…

彼、トーマス・アルバ・エジソンだったよ」


「そうか…


ん?


トーマス・アルバ・エジソン!?」


驚いちゃったよ…

あの威厳のある伝説のドラゴンが目を真ん丸くして驚いちゃったよ

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