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しおりを挟むシャワーを浴びて体を拭くと私は普段着ている私服に着替えて髪の毛を乾かした。
最近よく言われるんだ
髪の毛を洗ってリンスをつけてちゃんとドライヤーで乾かすと綺麗になってそれを褒められる
すごく嬉しくてそれから毎日こうやって髪を綺麗にすることを学んだんだ。
今度は…何をして褒めてもらおうかな?
「……ニコ」
自分が呼ばれていることに気づいた彼はこっちを見て私を確認して吸っていたタバコの火を消した。
「おう…汗流してスッキリしたか?
早く仕事場に戻ってこれをポチさんに提出しないとな」
そう言って片手に持ってる私の体力テストの記録をヒラヒラとさせて笑うと私についてこいと言ってきた。
廊下を歩いている途中でも仕事をしている皆は、私達を見つけるとにっこりと笑って挨拶をしてくる。
ニコには敬意を持って
私には優しさで
どうしてここの人達はそこまで優しくできるのだろう
「驚いただろ?
ここにいる奴らのほとんどはああやって優しく接してくる
それに最近入ってきた新入りだから嬉しいんだろうな」
嬉しい?
どうして嬉しいのか理解できない
「ここにいる義獣人は心が強い
それは何故か…
皆、誰かに救われてここにいるんだよ
俺はポチさんに救われた…だからポチさんの傍で情報管理の仕事をやってるんだ
恩返しをするためにな」
皆誰かに救われてここにいる
私もポチに救われた…だからここにいる
それはここにいる別の義獣人も同じということか
そう考えると口元が緩んでしまう
「そっか…皆同じなんだ……。」
「ん?…もしかしてお前笑ってる?」
笑ってて悪いか?
そう言い返すとニコはカラカラと笑って悪くないと言ってくれた。
やっぱり私はこの義獣人隊に正式に入りたい…その気持ちがより一層強くなった気がした。
私は歩く速度をあげてニコの手をとると早く仕事場に戻ろうと言って急かした。
ニコ…私ね、今が1番楽しいよ
こうやって皆で笑って毎日を送れることが楽しいんだと学んでから心がすごく軽くなったんだ。
忘れることの無い研究所での苦痛の毎日…当時は当たり前の日常だったけど今は違うと思えるようになったんだ。
その苦しみも全部を好きになれるくらい今は楽しい気分でいっぱいだよ
そして私はひとつの答えに辿り着いた
私はこの場所が好きなんだ
ここにいる人達が大好きなんだと
そしてまた私は笑った
人の前で堂々と
この先長くない人生でも、希望があるのだと理解して嬉しくなって笑ったのだ。
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