40 / 59
事後の朝
しおりを挟む
いつの間にか眠っていた。
どうやって移動したのか全く記憶にないが、知らぬ間にベッドで寝ていた。すぐ隣にはすうすうと寝息を立てている梨乃ちゃんがいる。
まずいな。時間を調べないと。気が付いたら昼でしたという最悪の結末は回避したい。そんなことを一度でもすれば、昼間の仕事ではあっという間に信用を失う。梨乃ちゃんを起こすのもかわいそうなので、手探りでスマホを探した。
充電の少なくなったスマホを確認すると、狩野から大量の着信履歴とLINEメッセージがあった。スリープモードにしていたせいで鳴らなかったようだ。着信は異常な数だが、詳細は後で見よう。昨夜の梨乃ちゃんが激しかったせいで、まともな思考が難しくなっている。
しかし思い出すだけでも情けなくなる。俺はほとんど下にいるだけのマグロだった。童貞じゃあるまいし、四十路のイケオジとして梨乃ちゃんをリードするはずが、とんだ失態だ。もっとも、肝心の梨乃ちゃんは少しも気にしていないようだったが。
スマホの時刻を見る。朝の5時。早く起き過ぎたか。いや、もう始発は出ているはずだから、一度帰ってシャワーでも浴びた方がいい。
「う、ん……」
ゆっくりと起き上がろうとすると、梨乃ちゃんが目覚めた。
「ごめんよ。起こしちゃって」
「今、何時、ですか……?」
「まだ朝の5時だ。俺は一度帰ってから出社するよ。梨乃ちゃんは寝ていて」
着替えようとすると、梨乃ちゃんが体を起こした。ベッドの上で女の子座りをする。毛布に隠されていた豊満な体があらわになる。夜が明けても、彼女は規格外の爆乳をぶら下げていた。
思わず視線が下へと行きそうになるが、オッサンの対面と理性を働かせてなんとか自重する。
「童夢さん、昨日のことだけど……」
「ん? ああ……」
一人で悶々としていたせいで、梨乃ちゃんの意図を汲み取るのが一瞬遅れた。自己嫌悪に陥りかけていると、梨乃ちゃんが縋るような顔で訊く。
「昨日の、その……したってことは、あたしは童夢さんのオンナってことで、いいんだよね……?」
「……あ、ああ。そうだな」
口から出る曖昧な言葉。梨乃ちゃんはいくらか抱えた不信感を押し殺しながら「良かった」と呟いた。部屋に妙な沈黙が流れる。
「……とりあえず帰るよ。今後については、また後で話そう」
「うん。出て行く前にキスして」
一夜にしてガチデレへと急変した梨乃ちゃん。無言で唇を重ねた。本当に幸せそうだ。
まるで新婚の夫婦だ。このままここにいれば第2戦目が始まる予感がしたので、そそくさと服を着た。ヤっていて遅刻しましたはアホ過ぎる。
「行くよ」
それだけ言うと、俺は返事を待たずに梨乃ちゃんの家を後にした。
ひとまず彼女の家を出て、安堵の溜め息をつく。その後にいくらかの後悔が襲ってくる。
――梨乃ちゃんとヤってしまった。真理ちゃんではなく。これで色々とややこしくなる気がするが、もうどうしようもない。
それに真理ちゃんとの仲はすでに壊滅的だ。あのシンママは他の誰かに譲った方がお互いのためになるだろう。自分にそう言い聞かせた。
これからどうするか。頭は混乱しているが、帰ってシャワーでも浴びれば頭もスッキリしていい考えが浮かんでくるだろう。
梨乃ちゃんの家を出てすぐにシャワーを借りれば良かったことに気付いたが、まあいい。どちらにしても、戻ったらまたベッドで第二戦が始まるに決まっているのだから。
それに他人の家というのは落ち着かない。時間はあるのだから、自分の家でじっくりと汗を流そう。
年も年だから服も一日ごとに変えないと加齢臭が出る。清潔感のないオッサンは職場でただ女子を不快にさせるだけ。ホストは引退したとはいえ、それはあるまじきことだ。
俺は早朝の電車に乗り、自宅へと向かった。
どうやって移動したのか全く記憶にないが、知らぬ間にベッドで寝ていた。すぐ隣にはすうすうと寝息を立てている梨乃ちゃんがいる。
まずいな。時間を調べないと。気が付いたら昼でしたという最悪の結末は回避したい。そんなことを一度でもすれば、昼間の仕事ではあっという間に信用を失う。梨乃ちゃんを起こすのもかわいそうなので、手探りでスマホを探した。
充電の少なくなったスマホを確認すると、狩野から大量の着信履歴とLINEメッセージがあった。スリープモードにしていたせいで鳴らなかったようだ。着信は異常な数だが、詳細は後で見よう。昨夜の梨乃ちゃんが激しかったせいで、まともな思考が難しくなっている。
しかし思い出すだけでも情けなくなる。俺はほとんど下にいるだけのマグロだった。童貞じゃあるまいし、四十路のイケオジとして梨乃ちゃんをリードするはずが、とんだ失態だ。もっとも、肝心の梨乃ちゃんは少しも気にしていないようだったが。
スマホの時刻を見る。朝の5時。早く起き過ぎたか。いや、もう始発は出ているはずだから、一度帰ってシャワーでも浴びた方がいい。
「う、ん……」
ゆっくりと起き上がろうとすると、梨乃ちゃんが目覚めた。
「ごめんよ。起こしちゃって」
「今、何時、ですか……?」
「まだ朝の5時だ。俺は一度帰ってから出社するよ。梨乃ちゃんは寝ていて」
着替えようとすると、梨乃ちゃんが体を起こした。ベッドの上で女の子座りをする。毛布に隠されていた豊満な体があらわになる。夜が明けても、彼女は規格外の爆乳をぶら下げていた。
思わず視線が下へと行きそうになるが、オッサンの対面と理性を働かせてなんとか自重する。
「童夢さん、昨日のことだけど……」
「ん? ああ……」
一人で悶々としていたせいで、梨乃ちゃんの意図を汲み取るのが一瞬遅れた。自己嫌悪に陥りかけていると、梨乃ちゃんが縋るような顔で訊く。
「昨日の、その……したってことは、あたしは童夢さんのオンナってことで、いいんだよね……?」
「……あ、ああ。そうだな」
口から出る曖昧な言葉。梨乃ちゃんはいくらか抱えた不信感を押し殺しながら「良かった」と呟いた。部屋に妙な沈黙が流れる。
「……とりあえず帰るよ。今後については、また後で話そう」
「うん。出て行く前にキスして」
一夜にしてガチデレへと急変した梨乃ちゃん。無言で唇を重ねた。本当に幸せそうだ。
まるで新婚の夫婦だ。このままここにいれば第2戦目が始まる予感がしたので、そそくさと服を着た。ヤっていて遅刻しましたはアホ過ぎる。
「行くよ」
それだけ言うと、俺は返事を待たずに梨乃ちゃんの家を後にした。
ひとまず彼女の家を出て、安堵の溜め息をつく。その後にいくらかの後悔が襲ってくる。
――梨乃ちゃんとヤってしまった。真理ちゃんではなく。これで色々とややこしくなる気がするが、もうどうしようもない。
それに真理ちゃんとの仲はすでに壊滅的だ。あのシンママは他の誰かに譲った方がお互いのためになるだろう。自分にそう言い聞かせた。
これからどうするか。頭は混乱しているが、帰ってシャワーでも浴びれば頭もスッキリしていい考えが浮かんでくるだろう。
梨乃ちゃんの家を出てすぐにシャワーを借りれば良かったことに気付いたが、まあいい。どちらにしても、戻ったらまたベッドで第二戦が始まるに決まっているのだから。
それに他人の家というのは落ち着かない。時間はあるのだから、自分の家でじっくりと汗を流そう。
年も年だから服も一日ごとに変えないと加齢臭が出る。清潔感のないオッサンは職場でただ女子を不快にさせるだけ。ホストは引退したとはいえ、それはあるまじきことだ。
俺は早朝の電車に乗り、自宅へと向かった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる