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羅魅亜ちゃんと作戦会議

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 どうやってレイ君を家に連れ込もうか。

 男性側が考えるような妄想に耽っている。でもいい。そうでもしないと、わたし達が初エッチする頃には50歳ぐらいになっていそうだから。

 どんなデートがいいかな?

 デートの後にお酒を飲んで、「ちょっとウチに寄っていかない?」って流れになるやつ。

 あ――

 わたしの中で、名案が閃く。

 ――カラオケだ!

 考えてみたら、レイ君は元々V系バンドのヴォーカリストだ。「レイ君の歌が聴きたい」ってカラオケに誘う流れはものすごく自然に見える。

 これは名案だと思ったので、木下さんも混ぜてカラオケに誘うことにした。彼女を誘ったのは夜の蝶出身ということでにぎやかしが得意だろうということと、単純に人前で歌う緊張感を緩めてくれる存在に思えたからだ。

 平たく言えば木下羅魅亜嬢を利用しているだけなんだけど、彼女も大人のせいか、わたしのプランを話すと結構乗り気だった。実はすごくいいコなんだと思う。

「うんうん。七海ちゃんもとうとうそういうことをやるお年頃になったか」

「いや、木下さん。そんなに年は変わらないよね?」

「うん、まあ。あたしもあと数年で三十路のババアですけどね」

「……」

「ん? ……あ、七海ちゃんってもう三十届いているんだっけ」

「うん……」

「……」

「……」

「申し訳ございません。前言を撤回いたします」

 木下さんが神妙に謝罪した。いや、そういう気の遣われ方をすると逆にヘコむんですけど。

「でも」

 木下さんの顔に真剣味が増す。

「そうなると、ますます急がないといけないよね」

「急ぐって?」

「急ぐって、そりゃ赤ちゃんに決まってるじゃん」

「えっ……」

 なんとなく分かっていながら触れようとしなかった問題。最近は高齢出産と呼ばれるケースものも増えているけど、それでも産めるなら早い方がいい。

 高齢出産に該当する年齢は一般的に35歳からみたい。なんで知っているのかと訊かれると、過去に高齢出産どんなものかと気になって自分でも調べたからだ。まあ、実際には高齢出産に該当する年齢が思いのほか低くて、ビビってそれ以上の情報を見られなかったんだけど。

うん。ただでさえ二十代が終わるのは早かったんだから、高齢出産と言われる35歳なんて音速で来るんだろう。そう考えると、みるみるテンションが下がっていく。

 木下さんあたりはすぐにお相手を見つけられそうだけど、わたしの場合はレイ君を逃したら本当にゲームセットになりそうな気がする。モテるモテないじゃなくて、恋愛偏差値が低すぎて、短時間で異性との親密度を上げられないからだ。

 ふいにわたしの周囲に「ずもももも」って黒い空気がたちこめる。

 木下さんが「地雷踏んだ」って顔になって、何かを思いつく。

「七海ちゃん。カラオケでは遠野さんをベロベロに酔わせよう」

 冗談ではなく、真剣な目で言っていた。

 作戦はいたって単純。レイ君を食事&カラオケのコースへと呼び出し、二人で酒をしこたま飲ませる。

 テキトーな理由を付けて、ベロベロになったロキ君を家へと呼ぶ。そこで冷静な判断ができなくなったロキ君に迫って、お酒の勢いでことを果たすという作戦だ。

 ……なんか、若い女の子を追いかけ回しているオッサンが考えそうな作戦に見えなくもないけど、現実問題としてわたしに遂行できそうな作戦はこれしかない気がする。

 この前みたいにどこかへデートへ行っても、帰りぎわに「エッチしよう」って誘う勇気は無い。きっとレイ君も同じこと。そうなると、わたし達は両想いなのにずっとプラトニックな恋愛を続けていくことになる。

 まあ、まだ二十代ならいいですよ。でもね、もうわたしには時間が無いの。色んな人に夢や希望を与えている内に、わたしの残された時間は確実に消耗されていったの。その結果が今の惨状なの。分かるかな?

 そう考えるともう遊んでいる場合じゃない。

「週末、わたしは女になるよ」

 木下さんはわたしが処女であることを知らない。だけど、何かを察したのか、真剣な顔で頷いて拳を突き出した。わたしも拳を握り、女子に似合わないグータッチで応えた。

 待っていてね、レイ君。

 二人で「初めて」を迎える瞬間は、すぐに来るから。
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